君はメキシコで羽ばたく
プロレスのお話。
最近Xで、ラダー論争なるものが起きていた。
詳細はここでは省くが、脚立(ラダー)から飛ぶ危険な技を使う時は、それこそきちんと立てましょう。みんなでしっかり補助しましょう。そしてご安全に激しく参りましょう!という結論で落ち着いたように感じる。
兎にも角にも、プロレスは常に危険と隣り合わせであるが故の論争だった。予知して防げる事故というものは、できうる限り回避してほしいと私も心から願っている。
選手にはいつだって健康で怪我なく、笑顔でいて欲しい……!
そして危険と言えば、選手だけでなく観客も気をつけないといけないことがたくさんある。
プロレス観戦の醍醐味のうちのひとつである場外乱闘やリング外への飛び技は、時に、というより大抵、観客のいる席にも降りかかってくる。
目の前で屈強な男たちがシバき合ってるのを見るとめちゃくちゃ興奮するし、華麗な飛び技がこっちに向かってくる時はカメラのシャッターを押す指が止まらない。しかし、我々はとにかく逃げなければならない。
選手たちが安全に最大限のパフォーマンスを発揮し、プロレスを愛するすべての人にエンタメをお届けするために、ちゃんと逃げなければならない。
しかし、どうしても渦中から逃げられない時もある。ものすごい勢いで選手が来てしまったとき、周りの人が壁になりそれ以上動けないとき、びっくりして腰を抜かしちゃったとき……。
そんな時颯爽と助けてくれるのは、そう、ヤングライオンたちである。
本当に全力で守ってくれる。
もしかして前世で私があなたを助けて、そのお返しで今世で助けてくれているのですか……?と思うくらいには守ってくれる。
腕を広げるその頼もしい背中が輝いて見える。
そしてたまに勢いを殺せずこちらになだれ込んでくるときもある……。
「イテテ…すみません!大丈夫でしたか!?」と爽やかに聞いてきてくれるその顔に浮かんだ汗が眩しい。大丈夫、君の痛みに比べたらなんてことない!それにこんなことになる覚悟がなかったら現地来てないよ!こっちこそ逃げきれなくてごめんね!助けてくれてありがとう!!
そして身を挺して守ってくれるヤングなライオンたちに感謝をし、現地で配信で、ずっと観戦しているうちにその中で一際輝いている選手がいるのを発見した。
嘉藤匠馬選手である。
嘉藤選手はとにかく観客を誘導するのがうまかった。
動いて動いて!と張り上げる声はよく通り、避ける方向やどの辺までの人が動けば良いかが直感的にわかる腕の動き。素早く的確に観客を安全なところに移動させる手腕はまるでオーケストラのコンダクター(指揮者)のようであった。
「確実に危ない」という状況以外にも「念のため」というポジションにも入って、颯爽と観客を守っている姿を何度も見た。
石森太二はもっと無茶をする興行のマッスルブロック、ドラマチックドリーム号を軽々と持ち上げる怪物ボルチンに会場の皆が見惚れ夢中になっているその時、そのドラマチックドリーム号のもしもの落下に備え観客との間にスッと入るSHOMA KATO……。
私にはめちゃくちゃ輝いて見えた。
予知して防げる事故を敏感に察知し即座に動けるその姿、brilliant。
多分視野が広いんだな、気を配れる方向が多いんだな、自分が動くべきタイミングの判断が早いんだなと思った。積極的に家のお手伝いをしテキパキと兄弟の面倒をみる幼少期の嘉藤選手の過去映像が見えた(無い記憶)。
ヤングライオン時代では大きくスポットライトが当たることは少なかったけれど、毎回観客を興奮させる頼もしい戦いを見せてくれた嘉藤選手。
そしてこういったリング外での細かい判断の積み重ねや動きができていた嘉藤選手は、絶対にこれからリングの上でもその視野の広さを発揮する素晴らしい選手になるのだ……と私は腕組み後方理解者ヅラして勝手に思っている。
今は海外修行でメキシコで頑張る嘉藤選手、そのうちとんでもない成長をとげて凱旋してきてくれるはずだと期待している。がんばれ〜〜〜〜!
¡Vamos! ¡Tú puedes hacerlo! ¡Confío en ti!
おわり
