見出し画像

『ITトラブルの異世界冒険記』〜第14章:鉄壁のファイアウォールと、物理的なトンネリング〜

会社や学校のパソコンを守ってくれる頼もしい「ファイアウォール(防火壁)」。外部からの悪い通信をブロックしてくれる強固なセキュリティシステムです。 しかし、どんなにシステム上の守りを固めても、思わぬ「物理的な抜け穴」には勝てない……? 今回はそんなセキュリティの盲点を突くお話です 。



ツルツルになった旧世代ドラゴンを退け、一行は『クラウド山脈』の険しい山道を登っていた。 しかし、中腹あたりまで差し掛かったところで、突如として目の前の山道が「巨大な炎の壁」によって完全に封鎖されていた 。

道端に立てられた看板には、物騒な警告文が書かれている。

『魔王軍・第4境界防壁(ファイアウォール)。未登録のパケット(冒険者)の通過を固く禁ず。不正アクセスは即座に破棄(焼却)される』

🐰もふ:「わあ、すごく燃えてる! キャンプファイヤーみたいだね。ポッポー! 本日の湿度は30%、火の元に注意してください!」

もふの胸元にへばりついている無料装備(鳩時計)が呑気に時報を鳴らす。

🦊アカネ:「あんたのその胸の鳩時計(ブロートウェア)、無駄に状況にマッチしたこと言うのやめてくれない!? こんな壁、私の拳で風圧作って吹き飛ばしてやるわ! オラァッ!!」

アカネが渾身の正拳突きを炎の壁に向かって放つ。 しかし、壁は一瞬揺らいだだけで、逆に「バチッ!」と強力な静電気のような火花を散らし、アカネの拳を容赦なく弾き返した 。


🦊アカネ:「あつっ!! なにこれ、ただの火じゃないわよ! 殴った瞬間、システムに弾かれたみたいな感覚がしたわ!」

🕊シロ:「……解析完了しました。あれは純粋な物理現象の炎ではなく、高度なパケットフィルタリング機能を持った『ファイアウォール(防壁)』です! 我々のIPアドレス(生体認証データ)が魔王軍のブラックリストに登録されているため、いかなる通信(物理攻撃)も遮断・破棄(ドロップ)されてしまいます!」

🐾ニャコ:「ちょっと、どうすんのよ! 山頂に行けないじゃない! 突破口(開いているポート)はないの!?」

シロは背中の物理サーバーを唸らせながら首を振った。

🕊シロ:「すべて塞がれています! 企業向け(エンタープライズ級)の強固な設定です。これを突破するには、通信内容を暗号化して別の経路からこっそり通り抜ける『VPN(仮想プライベートネットワーク)』の技術……いわゆる『トンネリング』を構築するしかありません!」

シロが背中のサーバーからキーボードを引き出し、必死に暗号化トンネルのプログラムを組もうとタイピングを始める。 しかし、排熱ファンの「ブォォォン!」という音が虚しく響くばかりで、魔法のトンネルが構築される気配はない。

🕊シロ:「くっ……! サーバーのスペックが足りません! ファイアウォールの監視機能が強力すぎて、電子的なトンネル(暗号通信)を掘ろうとしてもすぐに見つかって潰されてしまいます!」

🐾ニャコ:「やっぱり利用規約(ルール)でガチガチに守られたセキュリティを正面から破るなんて無理なのよ! 一旦街に引き返して、魔王軍の内部アカウント(パスワード)でも盗み出す計画を立てないと……」

ニャコが撤退の指示を出そうとした、その時である。 背後で「ザクッ、ザクッ」と何かを掘る音が聞こえてきた。


🐰もふ:「よいしょ、よいしょ……。トンネリングって、トンネルを掘ればいいんだよね? これくらいなら、僕にもできるよ!」


もふは、支給品のアイテム袋に入っていた「携帯用スコップ」を取り出し、ファイアウォールのすぐ手前の「地面の土」を猛烈な勢いで掘り進めていた 。

🦊アカネ:「は? ちょっともふ、あんた何やってんの?」

🐰もふ:「だって、シロさんが『トンネルを掘って別の経路から通り抜ける』って言ってたから! 炎の壁は上にしかないから、下から土を掘って潜り抜ければ、ファイアウォールに触れないでしょ?」

もふの言葉に、シロは雷に打たれたような衝撃を受けた。

🕊シロ:「なっ……!? ネットワーク層の防壁を、物理層(地面)を直接掘削することで迂回したというのですか!? まさかこれが、真の『物理的(フィジカル)・プライベート・ネットワーク』……!」

🐾ニャコ:「ただの泥遊びじゃないの!! 泥だらけになるわよ! 私の綺麗な毛並みが!」

🦊アカネ:「でもタイパは最高ね! さすがもふ、行くわよ!」

アカネが真っ先にもふの掘った土のトンネルに飛び込み、ズリズリと這って進んでいく。 ニャコは「あーもう、最悪!」と叫びながら嫌々続き、シロは背中のサーバーが土に引っかからないよう、必死に亀のように這いつくばった 。


数分後。

ファイアウォールの向こう側で、泥まみれになった4人が土の中からポコンと顔を出した。

🐰もふ:「わーい、開通! 火傷しなかったね!」

🕊シロ:「ぜぇ……はぁ……。泥でサーバーの吸気口が……! しかし、信じられません。いかに強固なファイアウォール(論理防壁)であろうと、物理的な抜け穴(スコップによる掘削)には無力だとは……」

🦊アカネ:「泥だらけになったけど、突破は突破ね! これで山頂までノンストップよ!」

『魔王軍・第4境界防壁』は、未だに「誰も通していないぞ」とばかりに威風堂々と燃え盛っていたが、その足元に開いた小さなモグラの穴には全く気付いていなかった。

セキュリティの最大の穴は、いつだって「物理(アナログ)」にあることを、もふはまたしても証明してしまったのだった 。



ファイアウォールとVPN(トンネリング)

「ファイアウォール(防火壁)」とは、パソコンや会社のネットワークを、外部の悪い通信(ウイルスや不正アクセス)から守ってくれる「強面の門番」のようなシステムです。 一方、「VPN(仮想プライベートネットワーク)」は、インターネットという危険な公道に、自分だけの「誰にも見られない秘密の地下通路(トンネル)」を作って、安全にデータをやり取りする技術です。これを「トンネリング」と呼びます 。

 ファイアウォールはサイバー攻撃に対しては強力ですが、「物理的な侵入」には勝てません 。 現実世界でも、「オフィスに入られて、パソコンに直接USBメモリを挿されて情報が盗まれた!」という事件が起きています。セキュリティ対策は、システムだけでなく、ドアの鍵を閉めるなどの「物理的な防犯(アナログ)」もセットで考えることが大切ですね!


【次回予告】
モグラのように壁を抜けた一行の前に現れたのは、数千ものゾンビ・ボットの大群! 異常なアクセス要求(DDoS攻撃)でシロのサーバーが熱暴走し、全滅の危機に!?

次回のトラブル解決もお楽しみに!




いいなと思ったら応援しよう!