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【奇譚拾遺異聞録】#24 二千日祈った男は破滅し、何もしなかった男が栄えた──清水寺が見届けた因果の逆転

人の功徳は、積んだ者のものとは限らない──清水寺に伝わる、奇妙な因果の物語。

 今は昔のこと。
 
 あるところに、とある人に仕える若侍がいた。何もすることがなく、あまりに暇だった彼は、あるとき、清水寺への参詣を思い立った。彼のそばで参詣する人物があり、それを真似たのである。

 清水寺への参詣は千日におよんだ。つまり、千度詣でである。それでも有り余る時間があった若侍は、もう千日、清水寺詣でを続けた。結果、彼は二千度詣でをしたのだった。

 二千日の参詣を終えてまもなく、その若侍は同じ主人に仕える者と双六をして遊んでいた。しかし、負けが続き、手持ちの金銭をすべて失った。莫大な借金を背負った末に支払いを迫られた若侍は、困った挙げ句にこんなことを云い出した。

「申し訳ない。本当に渡せる金銭が私にはないのだ。許してほしい。ただ、私は先日、清水寺に二千日も参詣した。その功徳を、あなたに差し上げよう」

 これを聞いた周囲の者は、「こいつ、騙して切り抜けるつもりだな」と密かに笑いをこらえていた。それを知ってか、知らずか、双六に勝った方の侍はこの申し出を受け入れた。

「それはとても素晴らしいことだ。さっそく渡してもらおう」

 若侍は、パッと表情を明るくした。

「いや、すぐに受け取るのは控えよう。お主は再度、三日の間、清水寺に参詣するがいい。その間に、功徳を私に渡すことを神仏にご報告し、証書を書いてくれ。その証書とともに受け取ろう」

 これを聞いた若侍は「よし、そのようにしよう」と約束して、さっそくその日から清水寺への参詣を再開した。

 かくして三日後、勝った方の侍は、若侍に「さあ、そろそろ準備はよかろう。いっしょに清水寺に参ろうではないか」と云ってきた。若侍は「バカなヤツで助かった……」と内心でほくそ笑みながら、ともに清水寺に向かった。

 若侍は云われた通りに証書を書いた。そうした上で寺の僧を呼び出し、これまでの経緯を事細かに話した。

「……つまり、そういうわけで、二千日お参りしたことをこの侍にお譲りする」

 証書を恭しく受け取った侍は、大層喜び、踊るような足取りで帰って行った。

 それから数日が経った頃、若侍は思いもかけない容疑がかけられ、逮捕され、冷たい牢獄に押し込められた。

 一方、勝った方の侍は、思いもかけない美女と出会い、結婚し、裕福に暮らした。おまけに、朝廷の官職に就くことができて、幸せに暮らしたのだった。

「清水寺に二千度も詣でたのは、目には見えない行ないだ。しかし、誠実な心を持って受け取ったので、仏が彼に功徳に応じた幸せをお与えになったのだろう」

 対照的な二人の侍の行く末を見届けた人々は、そんな風に噂したのだった。

祈りの多寡ではなく、祈りに向き合う心こそが、人の運命を分かつものなのかもしれない。

「清水寺に二千度参詣する者、双六に打ち入るる事」(『宇治拾遺物語』)より
※この物語は、上記出典をもとに筆者が脚色を加えたもの。画像は生成AIによる作画です。

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