動かない時から始まるリハビリ
少しでも動かせれば、上手く動かそうと努力できる。
問題は、「動かせないからリハビリにならない」と思ってしまうことだ。
しかし実際には、動きが出ていなくても、脳の学習は始められる。上手く動かせなくても、動かそうとイメージするだけでも良いし、大切なことだと思う。
1. 動かない理由
麻痺や失調の身体では、筋力が出せないだけではない。手や足という“目的物”を脳が十分に認識できないため、感覚入力が弱まり、身体地図(ボディマップ)が不鮮明になる。
その結果、動かそうとしても信号がうまく届かない。
2. 他動の役割
自分で動かせなくても、他動で関節を動かせば、・筋・腱・関節・皮膚から感覚信号が上がり、「この手はここにある」という情報が脳に入る。これが入力の再構築となるのではと思う。
まず身体を再び「認識させる」ことが基本になるのだ。
3. イメージの意味
他動だけでは受動的入力にとどまるので、動きを目で見て、自分が動かしているとイメージしながら他動で感覚を受けることで、動かすイメージ(運動野)と感覚入力(感覚野)が結びつき、入力と出力のループが疑似的に作られ、次へと繋がる。
4. 他動だけでは足りない理由
神経回路が強化されるためには、イメージした動きと実際の結果のズレ(誤差)があり、小脳がこの誤差を使って回路を修正する。
他動だけでは「意図」が弱い。
だから、イメージと自発的な微弱出力が重要になると思う。
5. 動きが出るまでの流れ
1.動かない
2.他動で感覚入力を作る
3.イメージで意図を作る
4.意図と入力を結びつける
5.微弱な自動が出る
6.誤差学習が始まる
7.回路が再編される
これが脳の可塑性の実際のプロセスなのだと思う。
6. なぜ焦ると固まるのか
焦ると、強い随意努力がかかり、使えている強い回路(代償)が優位
になり、抑制が上手くできず力みが増えてしまう。その結果、小脳の微調整が働きにくくなり、動きが粗くなり、タイミングが崩れる。
使えている回路が固定化されてしまわないために強い努力ではなく、微弱な反復が大切な時期があるのだと思う。
動かないから無意味なのではなく、見ること、イメージすること、他動で入力を作ること、微弱でも自分で出そうとすることが、残された神経回路の中に代替ルートを再編させることが、脳の持つ可塑性であり、動きが出る前から始まるリハビリの本質なのではと思います。
そしてその変化は、ある日突然ではなく、見えないところで静かに積み重なっていく。
私は、この過程を長い年月(11年余り)のリハビリで実感しています。
