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【読書】『コンテナ物語』-AI革命のひとつ前の「偉大な技術革命」の話-

おはようございます。今日は以前読んだ本を紹介します。

マーク・レビンソン氏の『ザ・ボックス(The Box)— 日本語題:コンテナ物語』です。

改訂版が2019年頃に発行され、当時、多くのインフルエンサーが「これは面白い」と絶賛していましたね。


コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

鉄の箱が世界を変えた、ほんの50年前の物語

空港や港に行くと、鉄の箱(コンテナ)が山のように積まれています。NHKの番組で「このコンテナ開けてみました」という情報バラエティが企画されるほど、国際海上コンテナは私たちにとって身近な存在になりました。

この海上コンテナを使った国際複合一貫輸送というやり方が始まったのは、ほんの50年前。その後、どういう経緯で広まっていったのか、そのストーリーには曖昧な部分が多かったそうです。

同じようなアイデアを持った人が多数存在し、一時期は乱立状態にもなったと思われますが、最終的に一つの強力な開発と普及の道筋が出来上がったからこそ、世界の物流がここまで活性化されたと言えるでしょう。

著者のレビンソン氏は、地道な取材を重ね、そのストーリーを一本の物語としてまとめ上げました。

地味だが偉大— 「思い」が主導したボトムアップ革命

この「技術革命」のルートは、非常に生々しい「思い」から始まっています。

「港の作業は大変だ」「人集めが困難だ」「なんとかしなきゃ」— 誰もが思っていた切実な思い、それを「決まったサイズの鉄の箱で荷物を運べるようにすればいいんじゃないかな?」という、一トラック業者のアイデアが、世界経済まで変えてしまうシステムへと昇華していきました。

これは技術主導ではなく、現場の「想い」と「思いつき」から始まった、究極のスーパー・ボトムアップの物語なのです。

物の流れだけではなく、街の風景も変えた

それまで、港の埠頭には荷物を担ぎ、積み下ろしをする人々が溢れていました。彼らは街の活力であったと同時に、治安や安定した生活を送るうえでの課題でもありました。

コンテナ輸送が広まっていき、彼らはどこへ行ったのでしょうか。突然消滅したわけではありません。この数十年のスパンの中で、ゆっくりとそのような職種が消えていったのです。

特定の階層の「立場」が突然なくなって国を内戦状態に導いた明治維新という名の「革命」とは違い、コンテナ革命は穏やかで、時間をかけた変革でした。

無名の革命

人々の暮らしや街の風景を変え、特定の職種もゆっくりと消し去ったその影響力から、コンテナは世界三大発明に次ぐ偉大な発明ではないかとも言われています。

そのインパクトは極めて大きかったにも関わらず、それを成し遂げた特定の「誰か」の名前が残っているわけではない、それも大きな特徴です。私もかつて海上コンテナを扱う仕事に携わっていた経験から、「関わるみんなで成し遂げた革命」だと言いたい気分もあります。

では、AIという名の「革命」とは?

コンテナという「AIのひとつ前の技術革命」を知ると、今、世の中を沸騰させているDXやAIの革命は一体どんなものなのだろうか、と考えさせられます。

OpenAIが当初、世の中を良くするためのNPO(非営利組織)としてスタートしたはずが、今や収益を考えざるを得ない組織になっています。

企業の中に眠る活用されていないナレッジを資源として活用、人口減や複雑化する社会課題の解決のためのAI、という話も聞きます。

とはいうものの、いま現実は「AIを使うこと」が目的化してしまい、書店には健康本やダイエット本、英語学習本と並んでAI関連本が山積されています。

コンテナ革命は、目につかないところで、粛々と、しかも大規模に、世界の裏舞台を支えることで世の中を変えました。

本当に世の中を変える技術革命は、実は技術主導ではなく「舞台裏を支える」地味で大規模な仕組みとともにあるのではないでしょうか。

 答え合わせは20年後?

コンテナの物語が示すように、一つの技術が社会のインフラとして定着し、その開発史が書籍として振り返られる状況になるまでには、約50年という歳月がかかっています。

PCの登場から始まり、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が生まれ、そしてAIが出現した今の流れは、コンテナ普及の歴史と比べると、まだその「全体のストーリーの折り返し点」位にいるのかな?とも思います。

あと10年、あるいは20年経った時、AI革命も「思いが主導したボトムアップの革命」だった、と振り返られていればいいな、とおもっています。


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