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Re:心理的安全基地は、作ろうとしても作れない

最近、スポーツ現場でも――
「心理的安全」という言葉をよく聞きます。

スポーツ指導、子育て、企業研修。

どこへ行っても、


否定するな――

褒めろ――

傾聴しろ――

共感しろ――


そんな話が並びます。

でも、僕は少し違和感があります。




そもそも心理的安全基地とは何か


僕の中での心理的安全基地は、
「何を言っても許される場所」ではありません。

そうではなく、

「本音を出しても、
 自分の存在まで否定されない場所」

です。


痛いと言える――

分からないと言える――

失敗したと言える――

不安だと言える――

そして、
ときには「やりたくない」とさえ言える。


これが、
僕の考える心理的安全基地です。



安全基地と甘やかしは違う


ここは誤解されやすいところです。
心理的安全基地は、甘やかしではありません。


ルールがなくなることでもない――

責任が消えることでもない――

何でも肯定することでもない――


本音を出せることと、
行動の結果を問わないことは別です。

むしろ、

本音が出せるからこそ、
初めて本当の修正ができます。

「大丈夫、大丈夫」と包むだけでは、
人は成長しません。

「本音を言った瞬間に否定される」環境でも、
人は成長できません。

このバランスが、とても難しい。



一朝一夕では身につかない


ここが、たぶん一番大事です。

心理的安全基地は、
セミナーを受けたから作れるものではありません。


本を読んだから――

資格を取ったから――

「今日から傾聴します」と決めたから――


そんなことで、
急に子どもが本音を話し始めることは、
ほとんどありません。

むしろ、

今までやっていなかったことを、
急に始めると子どもは警戒します。



子どもは、変化に敏感


今まで――

・すぐ答えを言っていた人が急に待ち始める
・すぐ指示していた人が、
 急に「どう思う?」と聞き始める
・叱っていた人が急に優しくなり始める

すると、子どもはこう感じます。

「何かあった?」

「なんで急に?」

「探られてる?」

子どもは、大人が思っている以上に、
言葉より“いつもの態度”を見ています。

だから、

心理的安全基地はテクニックではなく、
一貫性なんです。



だから僕は「作ろう」としない


僕は心理的安全基地を
「作ろう」とはしていません。

毎日の関わりの積み重ねの中で、
結果としてそうなっていくものだと思っています。

そして、

その積み重ねの中で、
僕が大切にしていることがあります。



監督には言えないんですけど……


現場にいると、
こんな言葉をよく聞きます。

「監督には言えないんですけど……」

「実は、生理が来なくて……」

「膝が痛いんです。
 でもレギュラー外されたくなくて……」

「チームのことで悩んでて……」

「進路、どうしたらいいですか?」

そして、ときどき――

「好きな人がいるんです。」

……それは知らん。笑


恋愛は専門外です。

冗談で、

「なぜ彼氏候補に僕を選ばない!?」

と言うことはありますが、
だいたいスルーされます。

でも、そのスルーがありがたい。

本音を言えば、
恋愛相談は面倒くさい。笑



知らないことは、知らないと言う


最初によく聞かれます。

「ぺぇさん、バスケ上手いんですか?」

僕は答えます。

「スラムダンク以上は知らん」

そして、

「だからバスケは君たちが教えて。
 代わりに、体の使い方は僕が教える」

すると、不思議なくらい距離が縮まります。


知ったふりをしない。
出来ないことを出来ないと言う。


これも信頼です。



まず結果を出す


僕は理屈から入りません。

まず、身体を変えます。


「軽い」

「跳びやすい」

「走りやすい」


まず体で感じてもらう。

そのあとで説明します。

人は、言葉より体験を信じます。



常識を疑う


例えば――

『ストレッチは怪我予防』

もちろん間違いではありません。

でも、僕はこう伝えます。


『怪我予防は副産物』

『目的はパフォーマンス』


この一言だけで、
子どもの取り組み方は変わります。



答えを否定しない


僕は、

「何が悪かった?」

とはあまり言いません。
まず聞きます。


「次、どうする?」


子どもが答える。


その答えが違っていても、
すぐには否定しません。

その答えが正解になるための、
知識や技術を渡します。


答えは、最初から子どもの中にある。


僕はそう思っています。



コミュ力が高い人ほど、
安全基地になりにくい


少し誤解されるかもしれません――

コミュニケーション能力が高い人を
否定したいわけではありません。

でも、

本音を引き出す力とは、
少し違うと思っています。


会話が上手い人は、
沈黙を埋めるのが得意です。

でも、本音は沈黙の中から出てくることがある。

僕は、すぐに答えません。

すぐに励ましません。

すぐに正解を言いません。

子どもが言葉を探す時間を待ちます。

すると――

最初の「建前」の奥から、
本当の悩みが出てくることがあります。



子ども扱いしない


これも、僕が大切にしていることです。

僕は、選手を必要以上に子ども扱いしません。
もちろん年齢は子どもです。

でも、一人の人間として扱います。


意見を聞く――

選択肢を渡す――

理由を説明する――

「分からないだろう」で終わらせない――


子ども扱いされ続けると、
本人は考えることをやめます。

逆に、

「考えていいんだ」と思えた瞬間から、
自分で動き始めます。



「頑張れ」は言わない


僕は「頑張れ」をあまり使いません。

みんな、もう十分頑張っています。

だから言うのは、


『楽しめ』


楽しめる子は、考えられる。
考えられる子は、伸びます。



一番後ろを歩く


試合の日――

僕はいつも最後尾を歩きます。

前を歩くのは監督。

主役は子どもたち。

僕は、
何かあった時に戻って来られる場所でいたい。

それだけです。



僕が褒めるもの


試合後――

僕は「ナイスシュート」より、


「今日ずっと楽しそうだったね」

「〇〇ちゃん、笑ってる方が強いね」


そんな声をかけることが多いです。

技術だけではなく、その子らしさを見る。

それが、
次も挑戦したいと思える理由になるからです。



最後に


心理的安全基地とは――


優しい人になることではない。

褒める人になることでもない。

コミュニケーションが、
上手い人になることでもない。


この人は、

・知らないことを認める
・出来ないことを隠さない
・すぐに否定しない
・すぐに正解を押しつけない
・子ども扱いしない
・自分の言葉が出てくるまで待ってくれる

そう感じてもらえる、毎日の積み重ねです。


子どもが本音を話すのは、
「安心できるから」ではなく、


「自分のままでいても大丈夫だ」


そう感じられるから。


僕は、心理的安全基地を
「作ろう」とはしていません。

毎日の関わりの積み重ねの中で、

結果として、

そうなっていくものだと思っています。



💬 シリーズ:Re:動作学


Jリーグ・プロスポーツ・高校部活動——

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