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【日本の会社員図鑑 vol.13】原付バイクでカレンダーを配り、ノルマと地元にすり減っていく。〜ある「地方銀行員」のリアルすぎる一生〜

こんにちは。さまざまな業界・職業で働く人々のリアルな人生模様を、少しのエモさとフィクションを交えて描くシリーズ『ニッポンお仕事生態系図鑑』。

テレビ局、CA、コンサルなど華やかな世界をお届けしてきましたが、今回は少し視点を「地方」に移します。

県庁所在地の駅前一等地にそびえ立つ、立派な本店ビル。
その県における「第一地銀(地方銀行)」への入行は、地元就職のヒエラルキーの頂点を意味します。親戚の集まりに行けば「〇〇銀行に入ったの! 優秀ねえ!」と絶賛され、住宅ローンの審査もフリーパス。絶対的な安定と信用を約束された地元の名士です。

しかし、彼らの実態は、スマートな金融マンというイメージとは程遠いものです。
雨の日も風の日も原付バイク(スーパーカブ)で街を走り回り、年末は何百本ものカレンダーを抱えて頭を下げ、「お願い営業」でクレジットカードのノルマを埋める、究極の「ドブ板営業マン」なのです。

縮小する地方経済の中で、地元企業と運命を共にし、泥臭く這いつくばる、ある地方銀行員のエモくてタフな一生を覗いてみましょう。

原付バイクでカレンダーを配り、ノルマと地元にすり減っていく。〜ある「地方銀行員」の一生〜

「〇〇県とともに歩み、〇〇県の未来を創る」
入行式。頭取の誇り高きスピーチを聞きながら、真新しいスーツを着た僕らは「これで自分の人生は一生安泰だ」と確信していた。

地元では誰もが知る絶対的な看板。合コンに行けば無双でき、親戚からは「さすが」と褒めそやされる。
しかし、配属された県内各地の支店で待っていたのは、ドラマのような華麗なM&Aや大規模な融資……ではなく、終わらない「お願い営業」と「原付バイク(カブ)」での外回りだった。

20代:雨の日のカブと、地元の祭りへの強制参加

「新人! 今日中にこのエリアの集金と、キャンペーンのチラシ配ってこい!」

20代の若手行員の相棒は、会社支給の「原付バイク」だ。
夏はヘルメットの中が汗で蒸れ、冬は指先の感覚がなくなるほど凍える。一番最悪なのは雨の日だ。ダサい緑色のカッパを着て、大切なお客様の通帳や現金を濡らさないよう、カバンを命がけで死守しながら街を走り回る。
「メガバンクの同期は、丸の内でタクシーに乗ってるんだろうな……」
信号待ちのどしゃ降りの中、何度そう恨み言を呟いたかわからない。

そして、地方銀行員には「裏の業務」がある。地元の行事だ。
「今週末、〇〇神社の秋祭りだから。若手は全員、神輿(みこし)担ぐぞ」
休日は潰れ、支店長や地元企業の社長たちの前で法被(はっぴ)を着て大声を張り上げる。朝のゴミ拾いや、商店街の草むしりにも駆り出される。
僕らはエリート金融マンではなく、地域社会の「都合のいい若い衆」として消費されていった。

年末になれば、丸めた巨大なカレンダーを何百本も自転車の前カゴに積み、「社長! 来年もよろしくお願いします!」と町工場や商店を駆け回る。これが地銀マンのリアルな冬の風物詩だ。

30代:マイホームと同時に下る「左遷」と、お願い営業

30代になると、法人営業として担当企業を持つようになる。
ここで直面するのが、強烈な「ノルマ地獄」だ。

融資(お金を貸すこと)だけで銀行が儲かる時代はとっくに終わっている。
投資信託、生命保険、そしてクレジットカードの獲得件数。
「社長、今月末までにあと5件、従業員さんにカード作ってもらえませんか……。年会費は初年度無料なんで……」
地元の頑固親父(社長)に土下座すれすれで頭を下げる「お願い営業」。プライドなんてものは、とうの昔にカブのメットインの中に捨てた。

そして、銀行員特有の「転勤」の呪縛。
地銀の場合、全国転勤はないものの「県内全域(および隣県)」を2〜3年周期でたらい回しにされる。
同期の多くが社内結婚をし、金利優遇を使って立派なマイホームを建てる。しかし「家を建てた瞬間に、県内の一番端っこの支店へ飛ばされる」というのは、もはや地銀に伝わる都市伝説ではなく確実なフラグだ。
毎朝、片道1時間半かけて車通勤をしながら、エナジードリンクを流し込む日々が始まる。

40代〜50代:縮小する地方と、片道切符の出向

40代。次長や支店長といった役職がつくと、直面するのは「地方経済のリアルな衰退」だ。
シャッターが閉まっていく商店街。後継者がおらず、黒字なのに廃業していく町工場。
「お金を貸したくても、貸す先がない」。

本部からは「アパートローンやカードローンをもっと推進しろ」と号令が飛ぶ。
無理な融資競争で他行と金利のチキンレースを繰り広げ、少ないパイを血みどろになって奪い合う。「我々は本当に、地元のためになっているのだろうか」。そんな葛藤は、毎月のノルマ達成のプレッシャーの前に押し潰されていく。

50代を目前に控えると、同期の中で「本部に残れる者」と「出向する者」に明確な線引きがされる。
出向先は、長年付き合いのあった地元の取引先(中小企業)の財務担当や、系列のリース会社などだ。
給料は下がり、銀行の看板も外れる。いわゆる「片道切符」。あの入行式で肩を組んだエリートたちは、こうして一人、また一人と静かに銀行を去っていく。

おわりに:僕らが走り回った泥跡が、この街を作っていた

定年退職の日。
最後に出向先の小さな会社で花束を受け取り、僕は車で地元の街をゆっくりと走っていた。

「あ、あのスーパー、まだ繁盛してるな」
「このマンション、俺が若手の時にアパートローンで稟議書を通したやつだ」
「あそこの町工場、社長の息子が無事に跡を継いだのか」

原付バイクで雨の中を走り回り、カレンダーを配り、ノルマのために頭を下げ続けた日々。
僕らはメガバンクのように、世界を股にかける何千億円のディールはできなかった。
ただ、地元の小さな会社の資金繰りを必死に繋ぎ、商店街のお祭りで神輿を担ぎ、この街の「日常」にへばりついて生きてきただけだ。

でも、窓越しに見えるこの街の景色は、僕らが貸し出したお金と、流した汗で確かに形作られていた。
「俺たちの仕事も、案外悪くなかったな」

助手席に置いた最後のカレンダーが、夕日に照らされている。
すり減った革靴と、原付バイクの排気ガスの匂いが染み付いた僕の人生は、この愛する地元と共に歩んだ、最高に泥臭くて誇り高いものだった。


※免責事項
この物語は、業界の「あるある」や風土をベースに構成したフィクションであり、実在の銀行・人物・団体等とは一切関係ありません。縮小する地方経済の中で、地元企業と並走し続ける名もなき銀行員たちへのリスペクトを込めて執筆しました。

年収が高い会社員ほど、意外とお金が残らない。

収入が増えると、家賃、外食、サブスク、旅行、子どもの教育費なども、少しずつ上がっていくからです。しかも、それぞれは「派手な贅沢」というほどではないので、本人にはあまり浪費している感覚がありません。
だからこそ、まずは毎月必ず出ていく生活費を、きちんと回収する仕組みを作ることが大事です。
楽天市場や楽天ふるさと納税を少しでも使う人なら、楽天カードは普段使いの入口としてかなり現実的です。さらに、ふるさと納税や新NISAのクレカ積立まで含めて使う人なら、楽天プレミアムカードを検討する余地もあります。
詳しくはこちらにまとめました。



■ 泥臭いノルマ営業を生き抜く(あるいは脱却する)ための必読書

もしこの記事を読んで「今月のクレカのノルマ、どうしよう…」とため息をついた若手行員の方、あるいは「お願い営業から、真の事業性評価・コンサルティング営業へ進化したい」と考えている方へ。銀行員のリアルな悩みに効く良書を紹介します。

1) 「お願い営業」から脱却し、社長の懐に入る
ただ商品を売るのではなく、地元企業の社長が本当に悩んでいる「経営課題」を引き出し、解決策を提示するための実践的な本。

2) 「財務・事業性評価」のスキルを極める
「担保や保証人」に頼る古い融資から抜け出し、企業の将来性を見極める「事業性評価」のプロになるためのバイブル。

3) 縮小する地方で「自分のキャリア」をどう描くか
地銀再編やフィンテックの台頭など、激動の金融業界で「銀行員というスキル」をどうアップデートし、生き残るかを考えるための補助線です。

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■ あなたの「地元密着の折衝力と財務知識」は、他業界から見れば宝の山

記事の主人公のように、気難しい地元の社長の懐に入り込み、財務諸表を読み解きながら資金繰りを提案し、時には泥臭くカレンダーを配って回る。

地方銀行員の皆さんが毎日当たり前のようにやっている**「圧倒的な対人折衝力(ドブ板営業の根性)」「決算書が読める財務の基礎知識」「コンプライアンスへの厳格さ」。実はこれ、銀行業界の外から見ると喉から手が出るほど欲しい最強のビジネススキル**です。

もしあなたが現役の銀行員で、「このまま一生、投信やクレカのお願い営業を続けるのはしんどい」「マイホームから通えない理不尽な転勤ループから抜け出したい」「本当の意味で、地元企業の経営に寄り添う仕事がしたい」と感じたなら、一度「外の世界」を覗いてみるのも一つの手です。

地銀出身者のその「財務知識×営業力」は、地元優良企業やスタートアップの経理・財務(CFO候補)、SaaS企業のフィールドセールス、M&A仲介や経営コンサルタントなどで非常に高く評価され、引く手あまたの状態です。

すぐに転職する気がなくても、「自分の泥臭い営業経験が、他業界ならどれくらいの年収やポジションで評価されるのか」を知っておくだけで、不思議と今の支店でのノルマへの向き合い方にも心の余裕が生まれます。

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