夕暮れのトイプードルと、私の紫外線パニック
私は自他ともに認める「紫外線絶対許さないマン」です。
これはもうポリシーとかじゃない。
生活様式です。
2月の曇り空?
あれは敵が姿を消しているだけですから。
洗面台には日焼け止めが並んでいますが、あれはコスメじゃない。
防衛軍です。完全に。
友人に「冬なのにそこまで塗る?太陽に何されたの?」と笑われても、私の意思はダイヤモンドより硬い。
いや、むしろダイヤモンドの方が先に折れます。
太陽の光が生命の源であることくらい、もちろん理解しています。
ですが同時に、それは美容界における静かなテロリストでもあります。
一分でも無防備に浴びれば、肌の奥ではシミ予備軍が宴会を始め、
「お疲れさまです!今日も順調に増えてます🫡」と乾杯している気がしてなりません。
そんな被害妄想と紙一重の信念を胸に、私は今日も完全防備で外に出ます。
真冬に日傘を差す人間を見かけたら、それはたぶん私です。
通報はしないでくださいね。
そんなある日の仕事終わり、、。
頭の中に溜まったストレスという名の澱を流すため、私は10kmのランニングに出ました。
5kmを過ぎたあたりで、世界は急に重くなります。
足は鉛、呼吸は借り物、人生の選択すら疑い始めるゾーンです。
そのとき、視界の端に現れたのが、、
一匹のトイプードルでした。
飼い主と並んで、トテトテと。
しかし妙に軽やかに。
明らかに私より余裕がある顔をしています。
夕暮れの光を浴びて、カフェオレ色の毛並みがキラキラと輝いていました。
こちらをくりくりとした目でチラリと見て、尻尾をひと振り。
、、なんだその余裕は。
こっちは人生かけて走っているんだぞ。
必死に呼吸を整える私の横で、その子は「楽しいね♪」とでも言いたげに、ただ光の中を駆けています。
それにしても、「前世で戸籍一緒でしたよね?」と確認したくなるくらいの懐きっぷりで、心のガードは一瞬で崩壊。
くりくりの瞳で見上げられた瞬間、こちらの理性はあっさり白旗を上げました。
あの無垢さは反則です。
抗う術なんて、最初から用意されていませんでした。
、、と同時に、です。
私の中の紫外線警報システムが、本日もけたたましく鳴り響きました。
私は完全防備。
対してあの子は、ほぼノーガード。
あの鼻先。
あの耳。
あの無防備な肌。
「ちょっと待ってください、その状態で紫外線と戦う気ですか?」
走り終えたあとも、その疑問は頭から離れませんでした。
そして私は帰宅後、お風呂にも入らず動物病院で勤める友人に連絡してしまいました。
そこで突きつけられたのは、想像以上に容赦のない現実でした。
皆さまも既にご存知、日本の紫外線量は、ゴールデンウィークを境に一気に跳ね上がります。
5月にはすでにかなり強いレベルです。
つまり、「まだ夏じゃないから大丈夫」という安心は、幻想です。
さらに追い打ちをかける事実。
この透明な矢は、人間だけでなく、あの子たちにも平等に降り注いでいたのです。
空から降る光には、2人の刺客がいます。
一人は、じわじわと内部に侵入してくるUV-A。
気づかないうちに肌の奥へ潜り込み、静かに老化を進めるスパイ型です。
もう一人は、表面で暴れるUV-B。
炎症を起こし、DNAにまでダメージを与える、わりと正面突破タイプの戦闘員です。
犬は毛に守られているから大丈夫?
、、残念ですが、それは人間側の希望的観測です。
鼻、耳、足先、そしてお腹。
守りの薄い場所は、普通に直撃を受けます。
さらに厄介なのが、地面からの反射攻撃。
アスファルト、水面、雪。
光はそこで跳ね返り、下からも容赦なく襲ってきます。
つまり彼らは、上と下、両方向から攻撃を受ける光のサンドイッチ状態にいます。
特に目は、慢性的な刺激によってダメージが蓄積したりすることもあります。
さらに長い目で見ると、白内障のリスクの一因になる可能性も指摘されています。
これはもう、優雅な散歩ではありません。
逃げ場のない光の檻の中です。
でも大丈夫。
あの子たちの未来を守る方法は、ちゃんとあります。
時間を選ぶ。
装備を整える。
環境を整える。
そして何より、人間の常識をそのまま押し付けないことです。
善意で塗った日焼け止めが、動物にとっては毒になることもあります。
それがこの世界のややこしさです。
だからこそ必要なのは、守りたいという気持ちに、ほんの少しの正しい知識を添えること。
あの日、10km先で出会ったあの子は、ただ楽しそうに走っていただけでした。
でも私は、その背中に見えない光のリスクを見てしまいました。
冬に私を笑った友人へ。
太陽は、決して敵じゃない。
でもね、完全な味方でもないのよ。
そしてそれは、人間だけの話ではないの。
紫外線は、たしかに侮れない相手です。
でもだからといって、太陽を完全な悪役に仕立てて、カーテンの奥に幽閉してしまうのは、ちょっともったいない。
あれだけ明るいやつを締め出して生きるには、人生は少し長すぎます。
ほどよく付き合えば、ちゃんとこちらの味方もしてくれます。
適度な日光浴は、骨を丈夫にするビタミンDの生成を助け、さらには幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌まで後押ししてくれる。
太陽は、気まぐれだけど有能な存在です。
扱いさえ間違えなければ、かなり頼れる。
大切なのは、正しく知って、ちょうどいい距離感で付き合うことです。
極端な毛刈りを避ける。
栄養バランスに気を配る。
そして、動物たちの体質に合わせてオーダーメイドの守り方を考える。
その一つひとつは地味ですが、気づけばそれが、5年後、10年後の毛並みや瞳の輝きを支えている。
ほんの少しだけ早起きして、まだ光が牙を隠している時間に外へ出る。
日が沈んだ後、LED首輪やリードで愛犬の存在をアピールし、土や草の匂いを一緒に踏みしめて歩く。
ときどき立ち止まって、風の気配を確かめる。
たぶん、犬や猫にとっては「どこに行くか」よりも
「誰といるか」の方がずっと大事。
大好きな人と一緒にいられるだけで、それだけで、もう十分に幸せ。
だからこそ。
その無垢な存在を、ほんの少しだけ意識して守ってあげてください。
あの子との毎日が、これからも、ちゃんと守られた光の中で続いていきますように🌷
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