野菜界にも、適材適所がありました。
美容のため。健康のため。
あるいは昨夜、ラーメンと唐揚げに魂ごと抱きしめられた自分への、ささやかな贖罪として。
私は今日も、草食動物みたいな顔で、ボウルいっぱいの生野菜を抱えて生きています。
シャキシャキ。ポリポリ。
「私は今、健康になっています」という音だけは、やたら立派です。
でも、、現実は。
食後のお腹は、雪国帰りみたいにひんやりしていました。
胃腸はブラック企業顔負けのフル稼働。
気づけば私は、健康になったはずなのに、なぜかぐったりしていました。
「ビタミンを壊さないためには、生こそ正義」
「加熱したら栄養が破壊されちゃう」
そんな私の生野菜信仰を、ある日根本からぶち壊してきた存在が現れます。
一本の、にんじんです。
カレーにもシチューにも顔を出し、栄養ありますよ感を常に漂わせている、野菜界の学級委員長です。
衝撃だったのは、生食の吸収率問題。
良かれと思ってポリポリかじっていた生にんじん。
そのβ-カロテン吸収率、まさかの約8%。
8%って、、。
ほぼ素通りじゃないか。
頑張って食べたのに、体の中では「お疲れっしたー」と軽く会釈されて通過していた可能性すらあります。
ちなみにβ-カロテンとは、体の中に入ると必要に応じてビタミンAへと変身してくれる、まるで野菜界の変身ヒーローのような栄養素です。
目や肌、粘膜を守りながら、紫外線やストレスによる体のサビつきとも戦ってくれる頼もしさまで兼ね備えています。
そのとっても大切なβ-カロテンですが、、
なんと油で炒めるだけで、吸収率は約70%まで爆上がりしちゃうのです。
突然の覚醒イベント。
加熱で細胞壁が壊れ、油とタッグを組んだ瞬間、人参はようやく本気を出す。
つまり人参は、生で耐える孤高の戦士ではなく、油と組んで真価を発揮する協力型キャラだったのです🤝
今まで必死に皮を剥き、生で食べ、健康になってる気を吸っていた時間はいったい何だったのか。
私は宝箱を開けるどころか、鍵だけ磨いて満足していたのです。
でも、さらに恐ろしいのはここから。
たとえば、冬になると圧倒的エース感を放ちながら食卓に現れる、かぼちゃ先輩。
煮物ももちろん素敵です。
和食のやさしさが全部詰まっています。
でも、、。
栄養を最大限に覚醒させるなら、正解はまさかのバターソテーだったのです。
えっ、そんな背徳感あふれる調理法が正義なんですか?
はい、正義です。
かぼちゃにも豊富なβ-カロテンは、やはり油と組んだ瞬間、本気を出します。
油なし加熱より約2倍、生食と比べると約6倍もの吸収率。
つまり私たちは、「美容のためです♪」と言いながらバターを使う合法的言い訳を、ついに手に入れてしまったのです。
さらに驚くべきは、あの少し硬くて嫌われがちな皮。
実はあそこ、栄養の宝庫エリア。
実の約3倍もの栄養が詰まっていると言われています。
つまり、かぼちゃの皮を捨てる行為。
それは宝石付きの財布だけ捨てて、中身を持って帰るようなもの。
天ぷら、グラタン、バター焼き。
今まで「ちょっとカロリーがな、、」と思っていた料理たちは、実は栄養学的には超優秀だったのです。
なんという免罪符。
そして、ブロッコリー先生。
私は長年、この子に対してせっかちすぎました。
買ってきた瞬間、即カット。即レンチン。
完全にタイムアタック方式。
でも、本当に大切なのは切った後だったのです。
実はブロッコリー、切られたあとに静かに覚醒します。
細胞が壊れることで、ミロシナーゼという酵素が動き出し、美容界でスター扱いされているスルフォラファンを生み出してくれるのです。
つまり、切ってすぐ加熱するのは、ヒーローの変身シーンを飛ばして本編を始めるようなもの。
もったいないですねー。
これからは、切ったあと4〜5分だけ待ってあげてください。
ブロッコリー界の準備時間です。
しかもこのミロシナーゼさん、熱に弱い繊細タイプ。
高温でガンガン攻めると静かに退場します。
理想は75度以下でやさしく蒸すこと。
すると甘みも増し、小さな感動が発生しますよ。
さらに、普段なんとなく捨てられがちな茎。
ビタミンC、食物繊維、ぎっしり。
むしろ本体ですらあります。
千切りにして、オリーブオイルでニンニクと炒め、パスタなんかにして食べるのもおすすめ。
ブロッコリーのビタミンCは鮮度命。
出荷から3日で半減。
野菜界の生鮮ロマンチストです。
冷蔵庫でのんびりさせすぎると、静かに栄養が旅立っていきます。
そして意外な伏兵が、ピーマンくん。
野原しんのすけも大嫌いなあの子、実はかなり優秀です。
ビタミンCって普通は熱に弱いんですが、ピーマンは違う。
肉厚ボディとビタミンPという相棒に守られているので、加熱しても壊れにくい。
つまり炒めても強い。
なんなら油と組むとさらに強い。
特に赤ピーマン。
あれはもう、抗酸化界の赤い彗星です。
β-カロテンたっぷり。
油との相性も抜群。
中華料理で油通しされる理由、ちゃんと科学だったんですね。
さらにトマトちゃん。
あんなにみずみずしい顔をしておきながら、実は加熱待ちタイプです。
火を入れることで細胞壁が壊れ、リコピンやβ-カロテンが吸収されやすくなる。
つまりトマトソースは、単なるオシャレ料理ではなかったのです。
オリーブオイルと組んだ瞬間、地中海の知恵と栄養学が握手しているのです。
とはいえ、全部の野菜を加熱すればいいわけではありません。
玉ねぎの血液サラサラ成分や、キャベツの繊細なビタミンたちは、生や短時間調理の方が得意☝️
ザワークラウトみたいな発酵系もかなり優秀です。
つまり野菜たちは、それぞれ輝けるステージが違う。
ライブハウス向きの子もいれば、ドーム公演向きの子もいるわけです。
今日はなんだか、バターでツヤツヤになったかぼちゃが食べたい。
その気持ち、案外ちゃんと体からのメッセージです。
罪悪感を添えたサラダを無表情で噛み締めるより、「うわ、これ美味しい」って頬がゆるむ食事の方が、よっぽど心に効く気がするんですよね♪
美味しいって、凄いんです。
胃袋だけじゃなく、気持ちまで引っ張ってくれるから。
さて。
今日のキッチンでは、何を作りましょうか。
人参を皮ごと千切りにして、たっぷりの油で炒めましょうか。
卵を落として、ツナも入れて。
今日はちょっと疲れたな、そんな日は温かいものを。
なんだか元気がほしい日は、油と仲良くした野菜たちを。
自分を労わるように食べる時間は、思っている以上に、私たちをちゃんと回復させてくれます。
皆さまの今晩の食卓にも、小さな美味しい幸せが並びますように🌷
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