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励起子と光吸収スペクトル(大学院生輪講:光物性入門 5章 光吸収)

こんにちは!光と物質の量子論研究室(光りろん研) M2の平田です! 今回は小林浩一先生の「光物性入門 5章 光吸収」の内容である光吸収スペクトルにおける励起子の役割について紹介していきます!

今回の記事は

  • 光吸収スペクトルを語る上で励起子という概念が必要な理由

  • 励起子の基本的な知識

  • 光吸収スペクトルにおける励起子の役割

といった内容を含みます。
この記事を読めば、半導体や絶縁体における励起子と光吸収スペクトルの関係について、その背景事情や理論的な取り扱いの概略を知ることができます!!

この記事は、私が3・4月に光りろん研のJournal Clubで紹介したものを元に執筆しています


なぜ励起子を考える必要があるのか

今回扱うのは、半導体や絶縁体といった誘電体材料です!このような材料における光子の吸収では、価電子帯から伝導帯へのバンド間遷移を考えるのが普通です。

図1 バンド間遷移の概念図

図1はバンド間遷移を簡単に説明したものです。バンドギャップ$${E_g}$$以上のエネルギー差があれば遷移が可能です。そのため$${E_g}$$以上のエネルギーを持つ光子の吸収を考えることができます。

しかし、これでは吸収スペクトルの連続部分については説明できても、一部の材料で観測されるバンドギャップより低エネルギーの鋭いピークについては説明できませんでした(図3を参照)。

この問題を解決するために導入されたのが励起子という概念です!

励起子の基本知識

誘電体における励起状態は、電子と正孔(hole)の束縛状態である励起子(exciton)という準粒子で記述されます。
励起子は電気的に中性で、結晶中を自由に運動でき、運動量とエネルギーを持つといった特徴があります。

水素原子との類似

電子系のハミルトニアンを対角化することで、励起子の波動関数が水素原子と同様の形になることが示されます(詳細は光物性入門3章参照)。このため励起子は以下の特徴を持ちます:

  • エネルギー準位に離散・連続部分の両方が存在(水素原子の束縛・散乱状態に対応)

  • 束縛エネルギー:典型的には数$${\mathrm{meV}}$$-数百$${\mathrm{meV}}$$

  • 近似的にボソン統計に従う

エネルギー準位の離散化が、吸収スペクトル(図3)の低エネルギー側に鋭いピークを生み出す原因です!

図2 励起子の分散関係

図2は励起子の波数$${\bm{k}}$$とエネルギー$${E_\mathrm{ex}}$$の関係を表したものです。この図において、$${n=1,2,3,\dots,\infty}$$の放物線が励起子の離散的なエネルギー準位を表しています。また灰色で塗りつぶされた領域が連続的なエネルギー準位を表しています。

光吸収スペクトルにおける励起子の役割

図2より励起子による光の吸収スペクトルを考えることができます。

図3 励起子による光吸収スペクトル

結晶の基底状態(図2の原点)から$${n=1,2,3}$$のエネルギー準位への光遷移が赤色で表されたピークに対応しています。また基底状態から連続的なエネルギー準位への光遷移が青色で表された連続的な吸収スペクトルに対応しています。

このように励起子という概念を導入することで、離散的なピークと連続的なスペクトルを統一的に説明することができます!

量子力学的な選択則による遷移の違い

励起子による光遷移には量子力学的な選択則によっていくつか種類があります。

電気双極子許容・禁止遷移
電気四重極許容遷移
磁気双極子許容遷移など…

これらは考えている軌道の対称性により決まり、遷移強度に影響します。詳しい内容は今回の教科書である光物性入門を見てみてください!

フォノンの果たす役割

量子化された格子振動であるフォノンによって、物質の光学特性に以下のような影響を与えます。

  • フォノンサイドバンド構造: メインのピークの前後にフォノンのエネルギー分だけずれた位置に弱いピーク

  • 温度依存性: 温度上昇で線幅広がり・強度減少

  • 間接遷移:価電子帯最大と伝導帯最小が異なる波数kにある材料で起こる、フォノンの関与が必須な遷移

こちらも詳細は教科書を参照してください!

まとめ

今回は光吸収スペクトルにおける励起子の役割について紹介しました!
励起子という概念の導入により、従来のバンド間遷移では説明困難だったバンドギャップより低エネルギーの鋭いピークを理論的に理解できるようになりました。

個人的な感想になりますが、今回の記事作成を通じて、単に理論を学ぶだけでなく「なぜその概念が必要になったのか」という歴史的・物理的背景を理解することの重要性を改めて実感しました! 研究室のJournal Clubでの発表時点では、このように動機や背景事情などを含めた説明などはできていなかったので、この教訓を今後の発表に活かしていきたいと思います!!

最後までご覧いただきありがとうございました!!

参考文献

  • 小林浩一, 「光物性入門」第2版 (裳華房, 1998)

  • C. Klingshirn, "Semiconductor Optics" Third Edition (Springer, 2007)

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