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【石原慎太郎の言葉に学ぶ】「わかっているのに、できない」——その壁を越えるために

「自分の美学に従って生きなさい」「本音を抑えた人生など意味がない」「他人と比べるのはやめなさい」

このコラムを読んで、あなたも深く頷いたのではないでしょうか。書いてあることは本当にその通りで、間違いなく正しい。でも同時に、心のどこかでこう思いませんでしたか。

「それができたら苦労しないんだよ」と。

私も同じです。何度この手の本を読み、何度「よし、明日から変わるぞ」と決意したことか。でも翌朝目が覚めると、結局いつもの自分に戻ってしまう。そしてまた自分を責める。この繰り返しでした。

今日は、この「わかっているのにできない」という問題に、正面から向き合ってみたいと思います。精神論ではなく、もっと現実的な話を。


できないのは、あなたが弱いからじゃない

まず最初に、はっきり言っておきたいことがあります。あなたができないのは、意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。

人間の脳は、変化を嫌うようにできているのです。

考えてみてください。私たちの祖先は何万年もの間、集団から外されることが死を意味する世界で生きてきました。だから「周りと違うことをする」「批判される」というのは、脳にとっては命の危険なんです。上司の顔色を窺うのも、SNSの反応が気になるのも、世間体を気にするのも、あなたが弱いからじゃない。生き延びるための本能なんです。

それから、習慣の力も侮れません。朝起きて顔を洗い、いつもの道を通って駅に向かい、いつもの席に座る。私たちの行動の40%以上は、無意識の習慣で動いています。これは脳がエネルギーを節約するための賢い仕組みですが、同時に「いつかやろう」を「永遠にやらない」に変えてしまう罠でもあります。

小さく始めることの大切さ

「今日から人生を変える!」という大きな決意は、たいてい三日坊主で終わります。なぜなら、脳は大きな変化を脅威と感じるからです。

だから、本当に変わりたいなら、驚くほど小さく始めることです。

例えば「自分の価値観を大切にする」なんて大きなテーマは、いったん脇に置きましょう。そうではなく、今日一日、たった一回でいいから「本当はこう思う」と声に出してみる。ランチを決めるとき、会議で意見を求められたとき、小さな場面でいいんです。

「いや、僕はラーメンより蕎麦が食べたいな」 「私はこの案には賛成できません」

こんな小さなことでいい。大事なのは、結果じゃなくて「自分の意見を言った」という経験を積むことです。

これを心理学では「スモールウィン(小さな勝利)」と呼びます。小さな成功体験が積み重なると、脳は「あ、変化しても大丈夫なんだ」と学習していきます。

「いつかやる」を「今やる」に変える具体策

「やらなかったことへの後悔が一番重い」。これも本当にその通りです。でも「じゃあ今すぐやろう」と言われても、体が動かないんですよね。

ここで使えるテクニックがあります。それは「20秒ルール」です。

人間は、始めるまでに20秒以上かかることは、やらない確率が格段に上がるそうです。逆に言えば、20秒以内に始められる状態にしておけば、実行する確率が上がるということ。

例えば、「ジムに通う」が続かないなら、運動着を枕元に置いておく。「本を読む」が続かないなら、本をテーブルの上に開いて置いておく。「日記を書く」が続かないなら、ペンとノートをベッドの横に置いておく。

馬鹿らしいくらい単純ですが、効果は絶大です。「よし、やるぞ」という気持ちに頼るのではなく、環境を整えることで、自然と行動できるようにする。これが現実的なアプローチです。

完璧主義を手放す練習

「完璧を求める奴は永遠に動けない」という言葉、胸に刺さりませんでしたか。

私もそうでした。「もっと準備してから」「もっと勉強してから」「タイミングが良くなってから」——こうやって先延ばしにしてきたことが、どれだけあったことか。

でも気づいたんです。完璧主義って、実は傷つくのが怖いだけなんだって。失敗したくない、恥をかきたくない、批判されたくない。その恐怖から逃げるために、「準備不足」という言い訳を用意しているだけなんです。

じゃあどうするか。「60点でいい」と決めるんです。

例えば、このコラムを書くときも、完璧な文章を目指したら一生書き終わりません。でも「伝わればいい」「誰か一人の心に届けばいい」と思えば、書けます。

仕事でもそうです。100点の企画書を一週間かけて作るより、70点の企画書を今日中に出す。そこからフィードバックをもらって改善していく方が、結果的に良いものができます。

「やってみて、ダメだったら直す」。この姿勢が、完璧主義を手放す第一歩です。

他人と比べない練習

SNSを開くたびに、キラキラした投稿が目に飛び込んできます。成功した人、幸せそうな家族、充実した日々。見ているうちに、自分が惨めに思えてくる。

「他人と比べるな」と言われても、目に入ってきてしまうんですよね。

ここで有効なのが、「過去の自分」と比べることです。

一年前の自分と比べて、何か一つでも成長したことはありませんか。半年前より笑える日が増えていませんか。三ヶ月前より少しだけ、自分に正直になれていませんか。

些細なことでいいんです。「朝、ちゃんと起きられるようになった」「苦手な人との会話が少し楽になった」「無理して笑うことが減った」。

こういう小さな変化を、ノートに書き留めておくといいです。月に一度でいいから見返してみる。自分が思っているより、自分は前に進んでいることに気づくはずです。

それから、比較してしまったときは、「人は人、自分は自分」と唱えるのではなく、「あの人はあの人の道を、私は私の道を歩いている」と思うようにしています。誰かが山登りをしていて、あなたが海を泳いでいるとしたら、どちらが正しいとか優れているとか、比べようがないでしょう。人生もそういうものだと思うんです。

立ち止まることを恐れない

コラムの中に「忙しさは麻薬だ」という言葉がありました。これ、本当にそうだと思います。

忙しくしていると、考えなくて済むんです。「本当にこれでいいのか」「自分は何がしたいのか」——そういう問いから目を背けられる。

でも時々、立ち止まる勇気が必要です。

月に一度、いや、三ヶ月に一度でもいい。カフェでも公園でも、一人になれる場所で、自分にこう問いかけてみてください。

「今の生き方、これでいいのか」 「本当にやりたいことをやっているか」 「誰かの期待に応えるために、自分を押し殺していないか」

答えはすぐに出なくていいんです。問いかけることそのものが大切です。この時間を持つだけで、人生の軌道修正ができます。

本音を言う練習

「本音を抑えた人生など死んだも同然だ」——この言葉に、どれだけの人が震えたでしょうか。

でも、長年本音を抑えてきた人にとって、急に本音を言えと言われても無理な話です。

だから、まずは自分に対して本音を言う練習から始めましょう。

「本当は疲れている」 「本当はやりたくない」 「本当は寂しい」

心の中で、あるいはノートに、自分の本音を書き出してみる。誰にも見せなくていい。ただ、自分の本当の気持ちを認めてあげる。

それができるようになったら、次は信頼できる人に小さな本音を伝えてみる。「実は、今日はあまり調子が良くないんだ」とか、「正直、この映画あまり好きじゃなかった」とか。

少しずつ、少しずつです。本音を言うことに慣れていく。そして、本音を言っても世界は崩れないし、むしろ関係が深まることを体験していく。

今日からできる、たった一つのこと

長々と書いてきましたが、最後に一つだけ。今日から始められる、たった一つのことをお伝えします。

それは、「今日の小さな誇り」を見つけることです。

寝る前に、今日一日を振り返って、自分を少しでも誇れることを一つ見つけてください。どんなに小さなことでもいいです。

「嫌な上司に、それでも挨拶した」 「疲れていたけど、子どもの話を聞いた」 「本当は面倒だったけど、友達の相談に乗った」

こんな些細なことでいい。自分を責めるのではなく、少しでも誇れることを見つける。これを毎日続けると、自己肯定感が少しずつ育っていきます。

完璧じゃなくていい、ただ少しずつ

石原慎太郎氏の言葉は、確かに理想です。でも、理想と現実の間には、長い道のりがあります。

大事なのは、一気にそこに到達しようとしないこと。昨日より少しだけ、自分に正直に。昨日より少しだけ、本音を言えるように。昨日より少しだけ、自分の選択を大切に。

この「少しずつ」の積み重ねが、いつか大きな変化になります。

あなたは弱くない。ただ、変わるための方法を知らなかっただけ。この文章が、その小さな一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

完璧じゃなくていい。ただ、今日より少しだけ前に。それだけで、人生は変わり始めます。

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