「聞いてない」が発生する本当の理由
「そんな話、聞いてません。」
仕事をしていれば、一度は耳にしたことがある言葉だろう。
上司は「確かに伝えた」と言う。
部下は「そんな認識はなかった」と言う。
このような場面になると、多くの場合はどちらが悪いのかという話になりがちだ。
しかし実際には、両者とも言っていることは正しく、「聞いてはいるが違う意味で受け取っていた」というケースが少なくない。
言葉そのものではなく、その言葉の解釈に違いがあるわけだ。いくつか例を挙げてみようと思う。
①「なるべく早くお願いします」の落とし穴
例えば、上司がこう言ったとする。
「なるべく早くお願いします。」
さて、皆様はどれくらいのスパンを想像するだろうか。
今日中なのか、明日までなのか、今週中なのか⋯
上司の希望より早いぶんには問題ないが、遅れたときには『急ぎと伝えた』事実をもとにあれやこれや言われるわけだ。明確な期限で握っていないにもかかわらず。
こういう曖昧な指示、確認の不足が『聞いていない』問題につながっていく。
②「お客様目線で考えて」
一見すると分かりやすい指示だ。
しかし上司は、
「多少コストがかかっても使いやすさを優先してほしい」
という意味で言っているかもしれない。
一方で部下は、
「お客様の要望をすべて取り入れるべきだ」
と解釈するかもしれない。
結果として出来上がる成果物はまったく別物になってしまう。
お客様目線で、というのはお客様の要望が明らかで、上司部下ともに解釈の齟齬が発生しない状況以外では解釈が分かれやすい言葉になる。部下として仕事に取り組む場合は、
『〇〇という解釈であっているか』
この部分を上司と握っておいたほうがいい。
③「適当にやっておいて」
個人的に危険だと思うのが、この言葉だ。
上司は、「前例と同じように処理しておいて」くらいの意味で使っていることが多く、当然、分からないことが出たら聞きに来てくれるだろうくらいの感覚だ。
しかし部下は、
「自分の裁量で好きに処理していい」
と受け取ることがある。
そして問題が起きると、
「そんなつもりじゃなかった」
という会話になる。
まとめ
いずれのケースもお互いの頭の中にある前提が違っただけで、決して言っていなくもないし、聞いていなくもない。
なぜこうしたズレが起きるのだろうか。
それは、人が言葉をそのまま受け取るのではなく、自分の経験や知識を通して解釈するからだ。
同じ言葉を聞いても、人によって思い浮かべるものは違う。
だから「言った」という事実だけでは、伝わったことにはならない。
コミュニケーションの難しさはここにある。
確認すべきは「聞いたか」ではない。
指示を出した側は、「わかりましたか?」と聞きがちだが、この質問に対して「わかりません」と答える人は少ない。
本当に確認したいのであれば、
【どう理解したか】
を聞く方がいい。
相手がどのように受け取ったのかを確認することで、初めて認識のズレに気付ける。
「聞いてない」が発生する本当の理由は、聞いていないからではない。同じ言葉を違う意味で理解していたからだ。
言ったことと、伝わったことは違う。
コミュニケーションとは、言葉を発することではなく、相手がどう理解したかまで確認する、もしくは解釈の余地をできるだけ減らす。こういったことの積み重ねで成立するのである。
