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[11] ある発展途上国が“貧困に追い込まれていく”まで

以下は架空の国「ソレナ共和国」の物語ですが、 実際にアフリカ・アジア・中南米で起きたことをモデルにしています。


■ 第1章:自給自足で暮らしていた国

ソレナ共和国は、人口3,000万人の農業国。

  • トウモロコシ

  • 野菜

  • 家畜

ほとんどの食料を自分たちで作り、 輸入に頼らず暮らしていた。

貧しいけれど、飢えることはなかった。


■ 第2章:グローバル企業がやってきた

ある日、巨大な食品企業が政府にこう言う。

「あなたの国は農業が弱い。 私たちが最新技術で農業を近代化してあげましょう。」

政府は喜んで受け入れた。

しかしその裏で、

  • 外国企業が土地を買い占め、

  • 大規模農園を作り、

  • 現地農家は土地を失い、

  • 低賃金の労働者に変わった。

利益はすべて外国企業へ。

国にはほとんど残らない。


■ 第3章:WTOのルールが国を縛る

次にWTOがこう言う。

「関税を下げて、外国の農産物をもっと輸入しなさい。 自由貿易こそ発展の道です。」

政府は従った。

すると、

  • アメリカやEUの安い農産物が大量に流入

  • 補助金のない現地農家は競争に負ける

  • 農業が崩壊

  • 食料自給率が急落

国は食料を輸入しなければ生きられなくなった。


■ 第4章:世界の価格が上がり、国民が飢える

ある年、世界的な干ばつで食料価格が急騰した。

ソレナ共和国は輸入に依存していたため、

  • 食料価格が3倍

  • 国民が買えない

  • 飢餓が発生

かつて自給自足だった国が、 “世界の価格”に振り回されるようになった。


■ 第5章:IMFがやってくる

食料輸入で外貨が不足し、国は借金を抱えた。

そこにIMFが現れる。

「お金を貸してあげます。 ただし条件があります。」

その条件とは、

  • 公務員削減

  • 医療・教育の削減

  • 補助金廃止

  • 公共料金値上げ

  • 国営企業の民営化

  • 外資の自由化

  • 社会保障削減

  • 関税引き下げ(=WTOと同じ方向)

  • 付加価値税(VAT/消費税)の導入

つまり、緊縮によって国民生活を削る“構造調整”
(日本には「構造改革」という似た言葉があります。手法は違いますが、どちらも「市場を万能視し、国家の役割を縮小する」という思想(新自由主義)で設計され、どちらも国を衰退させた点で、一致しています。)

結果、

  • 病院は閉鎖

  • 学校に行けない子どもが増え

  • 電気代が払えない家庭が増え

  • 国民の生活はさらに悪化

経済は縮み、税収も減り、 借金は返せず、またIMFへ。

悪循環が始まった。


■ 第6章:国は“貧困の罠”に落ちる

こうしてソレナ共和国は、

  • 自給力を失い、

  • 外資に依存し、

  • 借金に縛られ、

  • 国民生活が悪化し、

  • 経済が縮小し、

  • さらに借金が増える

という“貧困の構造”に落ちていった。

これは努力不足ではない。 国際ルールとグローバル企業の構造が作り出した結果だった。


■ 第7章:では、どうすればよかったのか?

ソレナ共和国が守るべきだったのは、

  • 食料の自給力

  • エネルギーの自給力

  • 外貨建て借金を避けること

  • グローバル企業に条件をつけること

    • 現地雇用

    • 税金の徴収

    • 技術移転(核心技術を要求しなければ、グローバル企業は来てくれる)

  • 地域の国々と協力すること

つまり、

「自国の供給能力」を守ることこそ、最大の安全保障だった。


■ 第8章:そして今、世界は変わり始めている

IMFやWTOの影響力は弱まりつつある。

  • BRICSの台頭

  • グローバルサウスの自立

  • 自給自足の重要性の再認識

  • サプライチェーンの分断

  • 価値観の近い国同士の貿易(フレンドショアリング)

世界は今、

“自国の供給能力を犠牲にしてまで追求する自由貿易”をやめつつある。

こうした世界的な潮流の変化は、ソレナ共和国の物語が示した構造問題が、いま現実世界でも再認識されていることを意味している

(ただし、供給能力を守るという流れは、ブロック化が発生し、もう一つの難しい問題を生む。
独裁国家や共産主義国家は、国内で暴力を正当化するため、外交でも力による現状変更を行い易く、ブロック化によって貿易対象から排除され易い。
しかし、こうした国家を排除すれば紛争リスクが上がり、排除しなければ侵略リスクが上がるというジレンマが生まれる。
この二重のリスクを避けるためには、完全な排除でも完全な依存でもなく、「限定的な相互依存」を維持しつつ、自国の供給能力を強化するしかない。
供給能力とは、戦争を避けるための国家の基盤そのものである。)


■ 結論:貧困は“偶然”ではなく“構造”で作られてきた

いま、発展途上国は国際機関の教科書的な処方箋に従うことをやめつつある。
では、実際にどのような国が、どのような方法でこの構造に抗い始めているのか。
インドはスマートフォンやEVに高関税をかけ、国内生産に巨額の補助金を投入した。
インドネシアはニッケル鉱石の輸出を禁止し、電池産業を国内に囲い込んだ。
ブラジルや南アフリカも、自動車・鉄鋼などの基幹産業を関税と補助金で守っている。

彼らがこうした政策を実行できるのは、IMF以外の資金源(中国・BRICS銀行)が登場し、 WTOの紛争解決制度が停止し、アメリカ自身が補助金と関税を復活させたからだ。 もはや「自由貿易の時代」は終わり、各国は自国の供給能力を守ることを最優先にしている。

日本も例外ではない。 半導体、医薬品、食料、エネルギーといった基幹分野で、 「関税=悪」「補助金=市場の歪み」という古い価値観を捨て、 世界標準の産業政策へと舵を切る必要がある。 供給能力を守ることは、経済安全保障の核心であり、 これを怠れば、いずれ“選択肢のない国”になってしまう。

また、TPPは、自由貿易が正義と信じられていた時代の産物である。
しかし今、世界は供給能力の確保へと大転換している。
関税と補助金は国家の生存戦略であり、TPPはその行使を制限する。
もはやTPPは時代に合わない。解体か、抜本的な再設計が必要である。

日本は、いつ自国の供給能力を守るという当たり前の選択を取り戻すのだろうか。

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