映画『ブゴニア』感想:お前は宇宙人だ。――地下室、監禁、ぐちゃぐちゃ頭。エマ・ストーンの“あの目”に翻弄される、ランティモスの異常な世界。
「目が覚めたら、顔にクリームを塗りたくられていた」
そんな最悪なシチュエーションから始まる映画『ブゴニア』の話をさせてください。
場所はアメリカ映画お決まりの、湿っぽくて不気味な地下室。
目の前には、いつ髪を洗ったんだかわからないようなぐちゃぐちゃ頭の男。
「どうせ身代金目的の監禁でしょ?」という観客の常識は、犯人が放つ「ある一言」で粉々に砕け散ります。
「お前は宇宙人だ。わかっている」
……は?
このぶっ飛んだ展開に、私たちはエマ・ストーンの「大きな瞳」を通して、とんでもない迷宮に引きずり込まれることになるのです。
アメリカ映画の地下室は、いつだって最悪だ
目が覚めたら、顔にクリームをべったり塗りたくられていて、身動きひとつ取れない。
目の前にいるのは、いつ髪を洗ったんだかわからないような、ぐちゃぐちゃ頭の年齢不詳の男(ジェシー・プレモンス)と、ふとっちょの相棒・ケーシー(スタブロス・ハルキアス)の二人組。
想像しただけで見てるこっちが気分悪くなりそうな、最悪のシチュエーションです。アメリカ映画に出てくる地下室って、そろいもそろって本当に救いがない。あんなふうに人を閉じ込める部屋になるのなら、一戸建てに地下室なんて絶対にいらない。
監禁のセオリーをぶち壊す「宇宙人」発言
監禁されたのは、製薬会社のカリスマCEO、ミシェル(エマ・ストーン)。
普通に考えれば、目的はお金に決まっていると本人も思うはずです。しかし、ここからがヨルゴス・ランティモス監督のぶっ飛んでいるところ。物語は予想の斜め上へと跳ね上がります。
誘拐した二人組の兄貴分、テディーがこう言い出します。
「お前は宇宙人だ。わかっている」
……は? おかしいでしょ、この流れ。
韓国のカルト映画『地球を守れ!』をリメイクした本作ですが、さすがはランティモス監督。転んでもただでは起きない、不穏でシュールな空気に塗り替えられています。
エマ・ストーンの「大きな目」に疑わされる
このぶっ飛び発言をテディーが言い出したとき、エマ・ストーンのあの大きな目を見てほしい。
彼女が驚きで見開いたその瞳を見ると、一瞬こっちまで「いやいや、このCEOは本当にエイリアンなんじゃないか?」と疑わされそうになる。
あの目に吸い込まれるような感覚。そういう「観客の常識をグラつかせる」ところが、本当に上手い。
最後に:最悪なのに目が離せない
不気味な地下室、ぐちゃぐちゃ頭の男、そして「宇宙人」というワード。
見るからに気分が良くなりそうにない状況なのに、なぜか目が離せない。エマ・ストーンの瞳の力と、ランティモスの狂ったセンスがぶつかり合う、とんでもない映画体験でした。
