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錯覚【風まかせ文芸部】

──錯覚とは。俗に、思い違いや勘違いの事。

鞦韆ブランコで揺れるハルシア。紅茶茶碗ティーカップを軽く揺らしながら見る。紅茶の肴。可愛らしい姿。決して言葉は掛けない。遊びに夢中なハルシアは僕の声など気付かないだろうし。揺れる髪。陽光に透ける。綺麗な筈の其の様に、一瞬身体が崩れる様な感覚を覚える。目の疲労か。妙な違和感に多少の苛立ち。些細な違和感。其れでいて、不快な痺れを心臓に残す。可愛い、可愛い我が子。今だって、微笑みながら遊んでいる。其れだけ。揺れる鞦韆ブランコの軌道。一度紅茶へ視界を落とす。何故か消えて仕舞う予感。いや、そんな筈。もう一度ハルシアへ見る。変わらず楽しそうに遊ぶ様。唯の錯覚。其れ以上でも、其れ以下でもない。紅茶を飲み干す。茶碗に着いた茶色の染み。茶渋だろうか。ふと、心臓が揺れる感覚。手足が一瞬にして凍える。いやな思い。上手く動かない肺が死を予期させる。走馬灯?白い記憶。

其処で気付く。ハルシアは、果たして本当に長い髪だっただろうか?僕の記憶のハルシアは、僕好みのボブカット。其れに、ハルシアは病弱だったのでは?分からない。嘘の記憶。本当は、現在にしか無いだろう。誰かは知らぬ子?背筋の悪寒。否、屹度、錯覚。
而して、再びハルシアの方へ視線を。先程と変わらない景色。変わらないリズムに同じ微笑み。屹度、過去が偽り。考える事はやめて、僕を呼んでいるであろうハルシアの元へ向かう事にした。

#風まかせ文芸部

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