Photo by
aone_kurumi
三月は別れ【シロクマ文系部】
三月は、別れの季節。ただ、お別れするだけ。
「じゃあね」
桜の花が舞っていた。桜の木に虫がいるのに気付いて、顔を顰めた。
「本当に、いくの?」
もう何度目か解らない、その質問にまた答えた。
「…うん」
少し、言い淀んだ。呼吸の仕方を忘れた。
「離れていても、心は一つだって。だから、大丈夫」
綺麗事を吐いた。汚いと思った。ローファーについた泥を見た。
「うんそっか、そうだよね」
少し伏せた目が柄にもなく綺麗に見えた。納得する為に無理矢理飲み込むみたいな、その喋り方に綻びそうになる顔を抑えた。
「寂しくなるね」
寂しいと言わせる為の言葉だった。嘘は、つかなかった。強くて寒い風が身体を冷やしていった。
「ううん、そんなことないよ。大丈夫」
そんな強がり、求めてなかった。強張った唇が莫迦に見えた。
「また会える?」
初めて、その質問をされた。腹の底が冷えた。まるで、別れてもなんともないみたいな。
「うん。きっと」
もう、二度と―――。
「元気にしてる?」
連絡をした。返事は何時まで経ってもかえって来なかった。
嘘つき。
ごめんなんて、言わないで。
どこにもいかないでって、言えば良かったんじゃないの。
君がいなきゃ、なんてもう一度教えてくれれば、それでよかったのに。
何日も連絡返さないところとか、きっと他の子なら。
すぐ迷子になって遅刻するところとか、私じゃなきゃ。
あんな自慢話だって、みんなきっと大嫌いだよ。
私がいなきゃ、だめだよ。
―――違う?
もう一度だけ、そばにいてって言ってくれたらね、私。いるつもりだったんだよ。
地面に這い蹲る芋虫を見つけて、写真を撮ってみた。
写真を削除した。
