哲学対話書簡 「本当の自分はいるのか②」
うまく言葉にならなくてもいい。
考えがまとまらなくてもいい。
思いつくままにゆるりと、けいこさんと始めた哲学対話書簡です。
気になるテーマがあれば一緒に考えてみませんか。「#哲学対話書簡」で投稿お願いします。
小学生の時、サマーキャンプに2年続けて行った。
人見知りでシャイ、コミュニケーションが苦手な僕はそこに送り込まれた。
場所はカナダだ。
スケジュールは初日に大学の学生寮に一泊。はじめての人と場所に恐れ慄いて、スタッフの寝ているドアを何度も叩いた。
2日目から山に行く。現地の子どももそこに来て一緒にキャンプをする。何日かそこで過ごし、帰国する前の2日間はそこに来ていた子の誰かの家でホームステイという流れだった。
そこで僕はジェームス君と出会う。
意思疎通がどこまで出来ていたか分からないが、やけに気が合った。
言葉でのやり取りが少なかったのが良かったのかもしれない。
ホームステイ先もジェームス君の家に決まり、多分いろいろなところに連れて行ってもらった。
どこに行ったかは覚えてなくて、デザートで出してくれたゼリーがすごく美味しかったのは覚えている。
お土産にジェロというゼリーの素を持たせてもらった。ジェロは今でも世界で一番美味しいゼリーだ。
次の年にもサマーキャンプ。前年と同じく恐れ慄いて学生寮で一泊を過ごす。当然のように夜中にスタッフのドアを叩く。
気が進まないまま山に向かう。
カナダの子がやってくる。
そこにジェームス君がいた。
目が合って、笑い合って、手を振る。
2年目のカナダキャンプが急に最高なものに変わった。
キャンプ最終日にホームステイ先が発表される。
ジェームス君の家じゃなかった。華奢で優しい彼とは似ても似つかない、アイスホッケーをやっているという大きな子の家になった。
ジェームス君が僕の手を掴み、大人のところに向かう。
「この子は僕の家にこなくちゃいけない。どうして彼が違う家に行くのか意味がわからない」
大人はあっさりと彼の要求をのみ、次の日に僕は迎えにきたジェームス君の家の車に乗っていた。
最高な2日間を過ごし、リュックにジェロを入れて帰国した。
ジェームス君に影響を受けた僕は、ほんの少し人と積極的にかかわろうと努力した。初めての人と話すときは、腹に力をこめる技を覚えた。
今は人見知りと言うと笑って否定されるけれど、今も変わらず腹に力をいれている。
本当の僕が人見知りで、人がいっぱいいるところが苦手なのだとしたら、今はそれにあれこれトッピングされている。
大勢の前で笑っていられるし、結婚式で司会もやった。はじめましてだらけの会で、酒に逃げてグデングデンになることもない。
だいぶ盛られて、最早そちらの方が人から見たら本当の僕だ。
モリモリに盛られて見えなくなっている本当の自分というやつに、たぶん誰も気がつかない。
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