【日々のこと⑱ 】 一時間半、離れた街
蝉の声しか聞こえない。
体がボワっとふくらむ。
暑さにもエアコンにも、まだ体が慣れない。
エアコンの効いた電車の中でぼうっとする。
次の駅で二人組が乗り込んできて、キョロキョロしている。
席は中途半端に埋まっていて、並んで座れる場所がない。自分がズレたら二人は座れる。それならズレる。
「ありがとうございます」と言って、二人は座った。電車は駅を二つ過ぎる。もう一度「ありがとうございました」と言って二人は降りていった。
飛行機を降りる時にアナウンスされる。
「現在の気温は37度です」
微熱だ。久しぶりに来たこの街は、僕の体温よりもほんの少し高い。
目的地に向かうバスの中は、エアコンが効いている。助かったと思ったのは数分で、風が直接当たらない席に移動する。

はじめは予定になかった。
たった二日の開催と自分の予定が重なっている。それだけで嬉しくなり、まずそこに向かった。


階段を上がりきったスペースには、写真と言葉と、どの部屋にも人がいた。
ゆっくり回る。
「お昼食べに行ってくるね」
誰かが奥の部屋にいる人に声をかける。三階がしんとなる。
読みたかった人の言葉に触れ、ZINEを手にして階段を降りた。
その言葉を生み出した人は、さっきランチに向かった中にいたらしい。会計の時に教えてもらう。知らずに同じ空間にいることってある。

わたしの輪郭を探して 100文字日記
僕もランチに向かう。
食べる。
次の日も食べる。
毎年きちんと夏バテになる。
食べられるうちに食べないといけない。今はむしろ美味しく食べる。



一時間半かけて、僕の街に帰る。
アナウンスが「ただいまの空港周辺は19度です」と告げた。
機外に出ると思った以上に涼しい。
体がキュッと縮む。
この涼しさがすぐに体に馴染む。
