【感想】「アリババ」「愛の乞食」を終えて
テント公演から数えると約4、5か月にも及ぶ長い航海、無事完走おめでとうございます。そしてお疲れ様でした!
今回テント公演、劇場公演と観させていただいたのでテント特有の没入感や、あの時感じた匂い、感情を記憶の限り書き残しておこうと思う。
・初めての紫テント
アイドルがアングラ演劇へ挑戦することは極めて異例だ。
ましてやあの紫テントで。
肩書きも通用しない0からの挑戦。彼自身も2023年にTHEATER MILANO-Zaで行われた「少女都市からの呼び声」で主演した際、勉強のために観劇したテント公演で衝撃を受けたと語っていた。
あの時から「いつかテントに立ちたい」と強い想いを口にしていた安田くんがついに紫テントへ立つ。夢が叶った瞬間、嬉しさとともに胸の奥の方が、じんわり温かくなった気がした。
テント公演は役者自身が設営、美術、衣装、物販などすべてを行い、1から作り上げる。安田くんも朝早くから設営に参加しているのをトークルーム(※SUPER EIGHTのアプリ)で知り座長としての並々ならぬ想いが伝わってきた。
そして迎えた当日。
新宿花園神社の鳥居をくぐると、まるで異世界に来たように照らされた紫テントがあった。
夜の神社に名だたる面々ののぼりがひしめく。
役者自身が呼び込みを行い士気を高めていた。
その光景でさえ、私にとっては新鮮だった。
幕が開き、雑多とした夜の新宿のノイズ、
時には雨やサイレンの音、土のにおい、人々の熱気、すべてが入り混じって溶け合う。
今自分がいる場所を忘れてしまうほど、すっと物語に入り込んでいた。
一幕は『アリババ』。
【あらすじ】
雨の中、真夜中の高速道路を駆け抜けて行った黒い馬を探していた宿六。そしてその妻の貧子。ふたりのもとに老人が姿を現し、あの馬は赤いはずだと言う。ブランコが馬の嘶きのように音を立てて揺れだしたころ、隅田川に流した遠い記憶が甦ってくる。「朝は海の中、昼は丘、夜は川の中。それはなあに?」
そして休憩を挟み、二幕は『愛の乞食』。
【あらすじ】
生命保険会社に勤める田口は、立ち寄った都内の公衆便所にいた具合の悪そうなミドリのおばさん(実は元海賊の尼蔵)を介抱していた。そこにセーラー服姿の少女・万寿シャゲが帰ってくる。今夜からこの公衆便所は、キャバレエ「豆満江ズマンコウ」になるのだ。そこに支那人のチェ・チェ・チェ・オケラと、刑事の馬田と大谷が現れる。彼らもまた、元海賊なのだった。
男達は万寿シャゲに、かつて海賊として大陸を荒らし回っていた時に出会ったある事件の生き残り、十四番目の朝鮮人の女の面影を見出す。そして突然、彼方より一本杖で床を踏む音──伝説の海賊ジョン・シルバーの歩く音が響く。
「アリババ」は冒頭、宿六と貧子のみの会話で物語が進む。
薄暗くところどころに破れもあるこじんまりとした部屋。貧しい暮らしをしていながらも愛はたっぷりあって、黒い馬の話を興奮気味に話す宿六に対しても包み込むように「それで?」と優しく聞いてあげる貧子。
目を輝かせながら、黒い馬を見たんだ!と駆けずり回ったり、いざという時のためにストックしておいた(?)小道具のう〇こを意気揚々と投げたり、と思ったら子供みたいに泣き出したり…。
感情の起伏が激しい宿六を膝枕して「よしよし」と撫でてあげる貧子の姿は小さい子をなだめる母親のようにもみえた。
その後老人が登場し少しずつズレが生じはじめる。
忘れ去られていた夫婦の秘密。
彷徨い続けた胎児たち。
母性を取り戻す貧子。
黒い馬は赤い馬となってやってくる。
目の前で起こる幻想はやがて宿六の心もかき乱していく。
誰よりも早く駆けていた裸足は赤い鮮血に染まっていった ───
そして「愛の乞食」では、朝日生命の田口とジョン・シルバーの二役をコロコロと演じ分けるのだが、安田くんが別人すぎる。
本人はあまり好んでない表現かもしれないけど、完全に憑依しているように見えた。
ミドリのおばさんの要望に断れず話を聞きながら背中をさすってあげる心優しい青年、朝日生命の田口。
そんな姿とは似ても似つかない伝説の憲兵ジョン・シルバー。
幻想の中で揺れ動く、少女万寿シャゲと目の見えない一本脚の憲兵シルバーの再会は苦しくも儚げで美しかった。
シルバーが曼珠沙華の匂いを頼りに少女を見つめるあの目は脳裏に焼きついて離れない。あの時少女が感じた熱が伝わった気がした。
一方で田口も豆満江へ訪れる人たちにあれよあれよと巻き込まれ、最終的には「俺が海賊だ」と叫び警察官を殺める。それも少女の願いを守るため。
だがその直後、ナイフで公衆便所を叩く少女から大量に吹き出す水を浴びせられ、脚を刺される。
奇しくもあのジョン・シルバーのように脚を負傷した田口。
松葉杖を持たされ、軍服を羽織った瞬間に見えた顔は決意ともまた違う、彼が元々持っていた本質が見えたような気がした。
「登場の仕方、退場の仕方で誰でもシルバーになれる。」
尼蔵の言葉が心の中で反芻した。
なんといっても見どころは、最後のテント崩しだ。
万寿シャゲが再びシルバーの世界へ呼び戻し
中と外の境界線が解き放たれ、トラックに乗せられた船が入ってくる。
船の背景には青黒い夜の色がひろがり外の空気が一気に入り込む。
幻想と現実が混ざり合った瞬間、今まで混沌としていた世界がひらけたような感覚になった。
舞台上と客席の境界線をなくし一体化させる演出は、何もかも取っ払った登場人物の新たな出港を彷彿とさせた。
・劇場(関西弁)公演を観て
両方とも観劇し感じたことは、テントの「アリババ」「愛の乞食」と関西弁「アリババ」「愛の乞食」の軸は別世界(別次元)で進んでいるような感覚だった。
テント公演と劇場公演でガラッと役者が変わるのもあるけれど、やっぱり言葉のニュアンスが大きいのかもしれない。
まず見た目の違いからすると、テントでは金髪だった姿から黒髪に変わった安田くんのビジュアル。濃いメイクもないためかずっと幼く見える。
また、関西弁ならではのテンポとノリの良すぎる空間で笑いの数が増えていた。
あとツッコまずにはいられないのが
貧子がコテコテオカンすぎる…!(褒めてる)
テントでは「それで…?(優しいトーン)」だったのが劇場では「ほんで?????(圧)」なのが面白かった。ギターを弾く宿六の周りを喜びながら飛び回っていたり、う〇こ投げるシーンでは本気で「うちもストックしとこかな」って考えてそうだったし、ずっと手にう〇こを握りしめてる宿六から膝枕してるときに「あげる…」って渡されて「いらんわ!!」って客席に投げたり。
夫婦漫才のような宿六と貧子の関係性が心地よかった。
もともと関西出身の役者さんが勢ぞろいなので、違和感もなく関西弁の世界線も面白いなと自分的にはすんなり物語に溶け込めた気がした。
個人的に比較できて面白かった部分は
【アリババ】
・舞台セット。
・老人のサプライズ訪問の場所。
・衣装も変わったが、特に子宮虫の衣装が宇野亞喜良ワールドへ。
・赤い馬がリアル模型からおもちゃのような木馬に。
【愛の乞食】
・モーニング娘。からCANDY TUNEへ。
・ミドリのおばさんが柄杓で桟敷席に水をかける演出が、劇場では小さな丸いビーズを水に見立ててかける演出に変更。
・海賊たちのコント感マシマシ。
・キャバレーの衣装がチマチョゴリからギラギラアフロな宇野亞喜良ワールドへ。
・映像投影によりダイナミックに。
・最後の出港シーンも舞台の奥行を上手く使い派手に再現。
テントのように限られた空間の中で、中と外の境界線をなくす規格外な演出も、広い空間を駆使してダイナミックさを表現する劇場公演も
どちらもそれぞれの良さがあり素晴らしかった。
・キャストについて
お目当ては安田くんだけど、今回特にテント公演から観劇したこともあって役者の皆さんの人柄に惚れたのもひとつ。
見るたびにキャラクターが恋しくなるくらい、一人一人のお芝居がキラキラしていた。
特にお気に入りなのは二幕でガードマンを演じた二條さん。
オネェキャラなのかわからないんだけど、終始ハイテンションで物語を引っ掻き回してるのが本当に面白くて一瞬で虜になった。BGのくだり最高!
・安田くんについて
芝居をしている安田くんは今まで以上に生き生きと楽しんでいるようにみえて。
初めてのテント公演という重圧にも臆さず、それさえもプラスに変えてしまう強さがあった。
唐十郎作品への敬愛を体現してくれるように皆が一丸となって作品を作り上げていく姿が眩しくて、観劇するこちら側もちゃんと受け止めて言葉にしたいと思った。
見れば見るほど奥が深くて知れば知るほどハマってしまう。
けれど正解はわからない。
自分なりの解釈で読み解いていく海底のような唐十郎の世界で安田くんは生きているのだ。
そんな安田くんが大好きで誇らしかった。
あとLOVEマシーン踊る安田くんと倍倍FIGHT!踊る安田くんが見れて嬉しかったー!!!!!
女性アイドル曲×安田くん=かわいいに決まってる!
関係者各位に頭下げたいくらい感謝しています。
何よりも無事に大千穐楽を迎えられてよかった。
また大海原へ出港するときは一緒に旅させてください。
貴重な時間を過ごさせてくれてありがとう!!



