【2025年7月17日】ロッテ・上田希由翔、雨中に消えた「幻のプロ初本塁打」
千葉ロッテマリーンズの2023年ドラフト1位・上田希由翔が、待望のプロ初ホームラン、と思いきや、NPB史上初、天候理由により取り消しとなる「珍事」が起きた。
上田希由翔、プロ初ホームランのはずが・・・幻に
7月17日、北九州市民球場での福岡ソフトバンクホークス対千葉ロッテマリーンズ戦、ソフトバンク先発は左腕の松本晴、ロッテ先発は木村優人。
試合は度重なる雨による中断をはさみ、2対2で迎えた6回表、ロッテは先頭の愛斗がソフトバンク3番手の川口冬弥から今季初安打を放ち、さらに、無死一塁、続く上田希由翔は、川口が投じた甘く入った133キロのフォークを捉え、ライトスタンドに運ぶ、勝ち越し2ランを放った。
上田希由翔はプロ2年目、一軍公式戦で初の本塁打となった。
勢いに乗ったロッテ打線は安田尚憲のタイムリー安打でさらに加点し、この回途中でスコアは一時6対2まで広がった。
しかし6回表のロッテ攻撃中、2死満塁の場面で雨脚が急激に強まり、試合は再度中断。そのまま天候が回復せず試合終了が宣告された。
北九州市民球場のスコアボードには、ロッテの6回表に「4」の数字が入ったままだったが、場内には「2対2の引き分け」というアナウンスが響き、ホークスファンからは歓声、マリーンズファンからは悲鳴が漏れた。
ロッテの6回表の攻撃はなぜ、取り消し?
公認野球規則7.01(コールドゲーム時の取扱い)
公認野球規則7.01(g)(4)【注】
②ビジティングチームがその回の表でリードを奪う得点を記録したが、表の攻撃が終わらないうち、または裏の攻撃が始まらないうち、あるいは裏の攻撃が始まってもホームチームが同点またはリードを奪い返す得点を記録しないうちにコールドゲームが宣告された場合。
公認野球規則によると、すなわち、正式試合成立後に回途中でコールドゲームとなりホームチーム側が追いつく/逆転する前に終了した場合、両チームが完了した最終均等回の得点で勝敗(および記録)を決定する旨が定められている。
従って、この試合は5回終了までに成立していた「最終均等回」(5回)のスコアが公式とされ、ロッテの6回表の攻撃に入って以降の得点は不成立となり、4得点がすべて取り消し、6回の攻撃は公式記録に残らない。
上田の本塁打も無効。文字どおり“幻のプロ初本塁打”となった。
木村優人は3勝目が消え、プロ初完投、愛斗の今季初安打も無効に
ロッテ先発の木村優人は5回まで2失点。もし6回裏が終了してリードしたままコールドゲーム成立なら今季3勝目のはずだったが、これも幻に。
代わりに、プロ初完投が記録された。
同様に、愛斗の今季初安打、西川史礁の3安打目(猛打賞)、安田尚憲のタイムリー安打もすべて無効となった。
上田本人は「記憶に残ったからいい。マリンで打ち直せれば」
◇上田選手 コメント
「打ったのは、フォークです。がむしゃらにいきました。同点に追いつかれて、流れも良くなかったので何とかしたいと思い、いい形で打つことができて良かったです」
しかし、その後、上田は記念すべきプロ初の一発が「幻のホームラン」となったことについては
「まあでも、記憶に残ったからいいんじゃないですか。マリンで打てたらいいかな」とと明るく振る舞った。
北九州市民球場近くの病院で生まれたと家族から聞かされていたという上田は、「おじいちゃんも見に来てくれてた」と喜んだ。
親に聞いたんですけど、もう(球場の)すぐそこの病院で生まれたらしく。おじいちゃんが見に来てくれてたんで、まあいいところ見せられたので。
一方、川口冬弥は今年6月に支配下登録され、この試合が6度目の登板となったが、プロ初失点、登板そのものが幻になり、防御率0.00が継続された。
「プロ初ホームラン」が無効は3度目、天候理由は史上初
NPB一軍公式戦でプロ初本塁打が取り消されたケースは、1976年4月29日の行沢久隆(日本ハム、走者追い越し)、2017年6月9日のクリス・マレーロ(オリックス、ベース空過)に続く3例目。
ただし、天候が要因のコールドゲームにより、プロ初本塁打が“幻”になったのは上田が史上初。
日本ハム新人・行沢久隆は「プロ初本塁打がグランドスラム」が幻に
1976年4月29日、日本ハムの大卒新人・行沢久隆は後楽園球場の対近鉄バファローズ戦で、日本ハムが3対12と大量ビハインドで迎えた8回裏一死満塁で打席に入り、レフトスタンドに一発を叩き込んだ。
行沢はプロ3打席目にして、プロ入り初本塁打、しかも満塁本塁打を打ったはずが、なんと一、二塁間で一塁走者を追い越してしまい、アウト。
「幻のホームラン」は記録上、「単打」、シングルヒットで3点タイムリー安打となった。しかも、これがもし2死ならスリーアウトチェンジで、無得点で終わっていたところであった。
結局、行沢はルーキーイヤーは本塁打0に終わり、2年目の1977年5月11日、対ロッテオリオンズ戦でプロ初本塁打を放った。
コールドゲームによる「幻のホームラン」は38年ぶり4度目
同様にコールドゲームによる「幻の本塁打」自体も、1949年4月27日の山川喜作(巨人)、1984年7月19日の簑田浩二(阪急ブレーブス)、1987年8月9日のボブ・ホーナー(ヤクルトスワローズ)以来、38年ぶり4度目。
蓑田浩二は「勝ち越しホームラン」が幻に
1984年7月19日、西武球場での西武ライオンズ対阪急ブレーブス戦、同点で迎えた7回表に、蓑田浩二が西武先発の渡辺久信から勝ち越しのホームランを放ったが、直後に降雨コールドゲームとなり、蓑田のシーズン20号本塁打は取り消しとなった。
なお、新人の渡辺久信は敗戦投手を免れた上にプロ初完投が記録された。
ボブ・ホーナーの「同点ホームラン」も幻に
現役メジャーリーガー、ボブ・ホーナーがヤクルトに入団して「ホーナー旋風」を巻き起こした1987年、8月9日に行われた福岡の平和台球場での対阪神タイガース戦でも、幻のホームランが生まれている。
ヤクルトが0対1で迎えた7回表、ホーナーが同点となるシーズン18号ソロ本塁打を放ったが、直後にコールドゲームとなったためホーナーの一発は無効となり、阪神が1対0で勝利。
阪神先発のマット・キーオが6回無失点で完封勝利を挙げ、ヤクルト先発の荒木大輔は敗戦投手となり明暗を分けた。
上田希由翔のプロフィール
上田希由翔は愛知県岡崎市出身、愛知産業大学三河高校、明治大学を経て2023年ドラフト1位でロッテに入団した右投げ左打ちの内野手。
1年目(2024年)は一軍で21試合に出場、打率.259、0本塁打、7打点。今季は開幕一軍入りも4月下旬に登録抹消、ファームで結果を残して再昇格したばかりだった。
