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ゆるいパンツはなぜだめか。

201X年7月最初の金曜日 スワンナプーム空港

20:20

これより速く走るのは絶対無理!と心のなかで叫びながら、私は搭乗ゲートに向かって猛ダッシュしていた。

その4時間前

その日は20:55発の最終便でバンコクからシンガポールに行くことになっていた。いつもならタクシーを使うところだったけど、金曜の夜のラッシュはギャンブルだなと思い、地下鉄からARL(空港鉄道)乗り換えていくことに決めていた。

二件目のアポイントメントが終わったらその足でスワンナプームに向かうため、歩いてすぐのスクンビット駅に行った。

駅に近づくにつれ、人でごった返していた。これまで見たことがないくらい混み合っている。コンサートとか野外イベントでもあるのかな?

そこまで心配もせずに先に進むと混んでいる原因が分かった。駅で一時的に入場制限がされていたのだ。ひょー、そんなこと今しないで欲しい。冷静に考えると、今=金曜の夜、だからこそ、そういう事態になっていたんだけど、自分中心に考えるから仕方がない。

既に私の前には相当数の人々でごった返していて、すぐに再開したとて、10分以内に乗られそうには見えなかった。他に選択肢はあったけど、近くのアソク駅からBTS(高架鉄道)でARLの終点であるパヤタイ駅まで行って、そこから空港に行くことにした。

予定より時間はかかったものの、無事に空港に到着し、朝ホテルから送っていたスーツケースを受け取った。カウンターへ向かう前にスニーカーを取り出して履き替えた。思ったより時間に余裕があってちょっとほっとした。スクンビットではちょっと焦ったけど、移動に余裕を持ってスケジューリングしていたので、時間の余白って本当に大事だと実感した。

でもくつろいではいられない。保安検査に出国審査もある。

セキュリティーでは待ち時間も少なく、問題もなく済んだ。

出国審査に向かうと、これは何かの冗談ですよね?というくらい激混みだった。どうなってるんだ、これ一体?スワンナプームは混む。それは間違いない。でもこの夜はこれまでで、だんとつの混み具合だった。

ひとまず私もくねくねした列に加わった。時計をちらちら見ながら、内心では気が気じゃない。まじで急いでるんです、と訴える人もちらほらいたけど、スタッフは優先システムはないの一点張り。それでも、時間に余裕のある人たちが自分より先にどうぞ、と何人も前へ通してくれた。お礼とお詫びを繰り返しながら、私も前の方へ進ませてもらった。

焦ったけど、親切な方々のおかげもあり、無事出国審査も終わった。搭乗時間開始がせまっていたので、急がないと。

念のためゲート変更になっていないか確認した。

!?!?!?

まじーーーーー!?

なっていた。しっかりと変更に。しかも遠くに。なんで?これ間に合うと??と思いながら、もう走り始めていた。朝から一日をともにしたぎゅうぎゅうに物が詰まったキャリーも預けていたので、持っているものは小さいバッグだけだった。

この空港は結構広い。スニーカーに履き替えていてよかった。

走り出して私は異変を感じていた。やばい。

おぱんつが下がってきている感覚が否めない。まさか嘘だよね?こんな時になんでこんなことになるんだ!!

出張時の常で、その日も例にもれず私はワンピースを着ていた。それは少しずつでも確実に下りてきていて、出張にはワンピースが最強!とそれまで思っていた私は自分をうらんだ。

それから私は搭乗ゲートを目指して猛ダッシュしながら、これ以上下がったらよろしく無い、という位置まで移動してきた敵を定期的にワンピースの上から引っ張り上げながら、ターミナル内をかけぬけた。

なんでまたこんな遠い搭乗口に移動になったんだろう?今日は試練の日かなにかでしたか?

泣けてくる。てか、これなんでこんなにゆるくなってるんだ。気付いてたら処分したのに。

イギリスから東南アジアは遠い。このためだけに移動日を繰り上げてでも確保したかったアポイントメントを、逃すわけにはいかなかった。行ける可能性があるのなら今行く。たとえ、どんなにぱんつが下がってきても。

でも、泣けてくるけど、走らなきゃいけないし、あれは落ちてくるし、引き上げなければいけないしで、自分のこの情けなさ過ぎる状況がおかしすぎて、めちゃくちゃ変な顔をしてダッシュしてたと思う。

ゲートが見えてきた。グラウンドスタッフが手を振ってここだよ〜と教えてくれていた。「私、これ絶対最後の乗客だな」、と必死に振られる手を見ながら確信した。あ〜座席は後方部だから、気まずく歩く距離が長いなと腹をくくった。まさにwalk of shame。2分前までの戦いに比べたら大したことではない、と自分に言い聞かせた。

スタッフに出国審査混んでた?とかなんとか聞かれながら、チケットとパスポートをチェックしてもらって、私は飛行機に向かった。汗だくでメークもどろどろ、はあはあ言いながら、ぼさぼさの髪を手ぐしで気持ち整えて、一度深呼吸した。

乗り口に着くと、CAさんが間に合ってよかったですね、ウェルカムオンボード!と素敵すぎる笑顔で迎えてくれた。そこから自分の席まで、ぎりぎりまで待たせてすみません、と心のなかで繰り返し言いながら歩いた。定刻通りに出発できたのが何よりだった。

一時前にシンガポールに到着し、一泊だけ予約していた空港ホテルの部屋には1:30前には着いていたと思う。

入室後すぐに、これまでありがとう、さようならと例の物を処分したことは言うまでもない。

翌日

数時間の睡眠後、無事に先方に会うことができた。振り返ると、本当にダッシュしたかいがあったと思える訪問だった。もともとは移動・アドミンの日だったので午後は予約を入れていなかった。同じようなことがこれから先起きないよう肝に銘じながら、新しい相棒たちを購入しに行った。出張専用のおぱんつたち。

残りのシンガポール滞在もこの先の出張も、これで準備万端だ。

#海外出張 #なんのはなしですか #エッセイ #バンコク #パンツ


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