熊のニュースで思い出す露出狂
1年毎日投稿〈267/365〉
我が家から山に行くには、電車で何時間もかかる。
都市部に近い便利な場所に住んでいる。
そのため外で熊に出くわすことはまだない。
それなのにニュースで熊の話題を目にすると、やけに見入ってしまう。
そして決まって、10代を思い出す。
中学時代。
その日は川の近くにある花壇の石の部分に、親友と横並びで座っていた。
コンビニで買ったチョコチップメロンパンにかぶりつきながら、リプトンのミルクティーをちびちび吸って、修学旅行の旅行担当者の〇〇さんがイケメンすぎてヤバいとか、ONE OK ROCKはワンオッケーロックじゃなくてワンオクロックと読むらしいよとか、マックフルーリーの新しい味が出たから今度食べにいこうとか、次から次へと話したいことが湧き上がってきて、いつも通り大声で笑い合っていた。
辺りが薄暗くなってきて、街頭が点灯しはじめた頃。
我々の視界に、大きな黒い物体がゆっくり静かに入り込んできた。
気配の察知はしていたけれど、私たちは気にもとめずにマシンガントークに夢中だった。
しかし黒い物体は、確実にこちらに近づいてきてくる。
ついには、女子二人の目の前で停止した。
ようやくただならぬ異変に気付くも、自分達の目に映っているものが一体何なのかがわからず、メロンパンを持ったままフリーズした。
何秒かかっただろうか、それが下半身が露わになったくそじじいだと理解するまでに。
胸に息がつっかかって声がでなくなり、腰が抜けたように動けなくなるというのをはじめて経験した日だった。
幸いといっていいのか分からないけど、こちらが抵抗しなくとも、じじいは身体接触などの危害は加えることなく勝手に去っていったのだった。
この日を境に、友は武闘派になった。
いつでも変質者をぶん殴れるようにと、ビニール傘をもつようになった。
やがて高校生になり、電車の痴漢対策で画鋲をポケットに忍ばせていつでも刺せるようにしていると彼女は言っていた。
朝の満員電車で実行犯の手をぶっ刺して、そいつを電車から引きずり下ろし、脅して金を巻き上げたという話もきいたことがある。
嘘か本当か、実際にみたわけじゃないからわかんないけれど。
強烈な恐怖にさらされると、恐怖から自分を守るためにに、攻撃力を強化して暴君になる場合がある。
独裁国家になりつつある国。
核保有が加速しそうな国。
生活圏内への熊の出没。
最近のこれらのニュースをみる度に、護身用の傘を持ち歩いていたかつての強気な親友を、色んな意味で思い出してしまう。
恐怖そのものを生き物から取り除くことはできないし、望んでもない。
でももう少し、互いのテリトリーを尊重しあって守れたらいいのに。
あの日は、メロンパンを食べる場所と時間を我々が間違えただけ。
踏み入れちゃいけない場所ってあることを、もっと自覚しないと。
共存って、必ずしもみんな仲良く手を取り合おうってことじゃないんだから。
変態には堂々と変態でいられる場所を。
暴れん坊には暴れん坊を全うできる場所を。
人目がつかない場所を必要としているひとのテリトリーに、灯りをともしちゃいけないこともある。
それにしても、熊の本来のテリトリーには、ほんとうのところ、何が起きているんだろう。
おわり!
今日もすべてに感謝です♡
