トロピカる × サービス 編集後記など
こんにちは。miyaryuです。
本記事は2024年6月(←昔すぎ!!!!!!!!!!!)に公開した拙作『トロピカる × サービス』の編集後記、というかオタク語りも小ネタも作り方講座も全部詰め込んだキメラ記事となっております。非常に長くなっておりますので(15000字!!!)、目次から適宜読みたいところに飛んで頂けたらと思います。
あと当作品をまだ視聴していない方は読む前に見てね!!!(見た方もよければもう一回見てね!)
0. まず
当記事の公開が大きく遅れてしまったこと、深くお詫び申し上げます。6月の公開後、私用なり他の制作なり受験なり引っ越しなりで忙しい日々が続き、1年近く経ってやーーーーーーーっとスキマ時間を作れる程度に色々落ち着いてきたので執筆を再開しました。新しいことばかりで大変ですが、なんとか元気にやっています。
ナートロなりM2なり色々で制作意欲だけは溜まりに溜まっているので、今がチャンスだと思い全部吐き出そうと個人作の制作にもいくつか取り組んでいます。何にでも興味を持ってしまう性格上音MADだけに自分のリソースをつぎ込むことがなかなかできず、どうしても制作ペースは遅くなってしまいますが、これからも気長にお付き合いいただければ幸いです。
1. 動機
まずは拙作を作るに至るまでの個人的ないろいろを語ろうと思います。
2024年の3月ごろ〜GWまでの間は今までの人生の中でも一番と言ってもいいほど忙しく、音MADを作っている暇は本当に一切ありませんでした。10行以上のやることリストに24時間追われ続ける日々から解放され、合作作業もひと段落し、久しぶりにフリーになったのが5月中旬。夏からは受験勉強を始めなければならないことを考慮すれば、ここからの数ヶ月が私に唯一残された時間、束の間のフィーバータイムでした。受験と引っ越しを終えた現在の私の状況と奇しくも似通っていますね。
そしてその時ふと思い出したのが、セリフ合わせが埋まらず183化していた「めいあいへるぷゆー?」の音MAD。かなり昔に糸電話(まちカドまぞく)で製作していたもので、折角ならこれを機に完成させてもいいかなと思っていました。しかしその記憶が、少し前に完走したアニメ『トロピカル〜ジュ!プリキュア』の感動と繋がります。明るくコミカルな曲調に、アニメの基礎情報(キャラの紹介やショートストーリーなど)を詰め込みやすい曲構成。相性は抜群です。このペアリングを発想した瞬間、とんでもない勢いで完成品のイメージが頭に雪崩れ込んで来ます。これは作るしかない。以降1週間ほどは、1日中本作のことばっかり考えていました。
少し余談。私が『プリキュア』シリーズを観始めたのは2024年の年始でした。当時の自分の中では超個人的ルネサンスのようなもの、即ち子ども時代に通らなかったコンテンツを再回収していく運動が盛んで、例えばディズニー映画をしっかり観始めたのもこの時期でした。プリキュアもその一環として興味本位で再生してみたのですが、気づいたら抜け出せない場所に引きずり込まれていました。仕方のないことだったんです。
ただ、ニチアサに興味を持った1番直接的なきっかけは実はmiルさんのプリマジMAD、『みるきのちょーちょーほーちょー』でした。確か10選で初めて拝見したのですがあまりに楽しくて大好きになってしまい、そこからその原作や周りのコンテンツに興味を持ち始めたというわけです。現在も『ひみつのアイプリ リング編』は楽しく視聴しております。
本題に戻ります。ここでアニメ『トロピカル〜ジュ!プリキュア』について軽く重く説明しておきます。
主人公は、離島からあおぞら市に引っ越してきた中学1年生の少女、夏海まなつ。引っ越し初日に、海の王国・グランオーシャンの女王候補であった人魚のローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール(以下ローラ)と出会い、ついでに人々のやる気パワーを奪いにきた悪い人たちと彼らの生み出した怪物・ヤラネーダに遭遇します。まなつは「主人公」なので、襲われそうになっていたローラを助けようと勇気を振り絞って怪物に立ち向かいます。すると不思議な光が生まれ、ローラから変身アイテムをもらってなんとキュアサマーに変身!怪物をやっつけてしまいました。ここからふたり(と、愉快な仲間たち)の物語が始まります。いわゆる「日常系」のような、ギャグを中心としたポップでファニーな展開が多く、それでも深遠な人生哲学としっかり向き合ってまなつさんの言動を通してひとつのソリューションを提示する、つまるところいい作品です。先述の私がとても忙しかった期間にちょうど視聴を進めており、大きな心の支えとなってくれました。忙しいならアニメなんか観てるなよ
そして、先ほど笑いを主軸に物語が進むと述べましたが、だからこそたまにちらりと顔を見せる5人の成長、そして人魚であるローラの宿命をめぐる物語の持つメッセージ性は計り知れないものとなっているのです。物語が進展するにつれて、何気ない日常の積み重ねがいつの間にかかけがえのない友情に変換されていることが少しずつ明らかになっていく。そんな中5人に降りかかるのは、まさに『人魚姫』の物語のように切なく、儚く、そしてどこまでも美しい結末。最終話がマジでガチで凄すぎるので観てくれると嬉しいなと私は思っています。私はね。
この辺りから少しネタバレ注意です。この作品の最も大きなキーワードは、「今一番大事なことをやる」というものです。これはまなつの父親(かつて離島でまなつと2人で暮らしていました。まなつは父の元を離れて中学校のあるあおぞら市で母と(のちローラと)ともに暮らすことになったのです)譲りの座右の銘で、過去や未来のことに無闇に囚われずに、「今」何をするべきかを考え、その「大事」を忘れないうちに、「大事」が存在しているうちに、今すぐに行動に移す、というものです。この作品の最初から最後まで密接に関わってきます。過去と未来の狭間に〜♪
これは「後先を考えない」という刹那主義とは違います(違うとディレクターさんが言っていました)。むしろ「後先を前提とした上で」今を考える、というべきでしょうか。つまり「今目の前にある幸せがいつかなくなってしまうものならば、今のうちにそれを最大限味わっておくのが1番お得だよね」ということです。この考えに則れば、どんなに嫌なことだって立派な「経験」に昇華させることができます。このアイデアは、「人間と人魚の寿命の違い」という深刻な問題、およびニヒリズムへの当作品なりのソリューションにもなっています(『まちカドまぞく』とか『小林さんちのメイドラゴン』とかもそういう側面がありましたよね、たしか)。親元を離れて上京してしまった今だからこそ、この言葉の大切さを痛感しています(後悔的な意味ではないです)。
もちろん、まなつも完璧な人間ではありません。当作品の悪役の名前は「あとまわしの魔女」なのですが、まなつだって嫌な宿題は「今一番大事なのは怠けること〜」とかいってあとまわしにします。でも、それも含めて愛すべき「今」としてこの作品は描いており、(もちろん最終的にはしっかり勉強しますが)子ども向け作品が陥りがちな過剰な道徳的主張(説教くささ)を避けながら、視聴者の過去、現在、未来それぞれの時点での利益を等しく念頭に置いて制作されているのがわかります。瞬間的な幸せを追い求めたり、逆に自己犠牲や臥薪嘗胆を奨励したりせずに、真の意味で人が幸せに生きていくことを願って作られた素晴らしい作品だと思います。(とくに最近の)プリキュアがこういう、まずは自分の幸せを一番大切にしてね、その前提でそれがみんなの幸せにも同時につながったら超ハッピーだよね、という(少し綺麗事じみた?)人生論を日曜日の朝に伝えてくれるのは非常に良いことだと思いますし、実際私も少なからず救われています。
ちなみに、「トロピカル」な気候、つまり熱帯に行けば行くほど季節による自然環境の変化が小さくなっていくため、時間という概念は少しずつ弱くなっていくそうです。特に熱帯雨林では昼夜間での明るさの差さえも小さいためにその傾向が顕著で、そこに住んでいる民族の中には過去や未来という時間の流れを全くといっていいほど認識していない(当然それを表す言葉もない)人々もいるそうです。まさに(この作品の主張とは少しズレるにしても)「今を生きる」ことの極致と言えましょうが、ここがまなつというキャラクターのリファレンスになっているのかもしれないですね。知らんけど。
あ、ひとつ補足しておくと、相席食堂のトロプリコラボ回(2021/10/26、U-NEXTで(多分)視聴可能)がめちゃくちゃ面白いのでおすすめです。アニメ未視聴でも全然楽しめます。
2. コンセプト/音声
2-1. コンセプト
長々とすみませんでした。さすがにそろそろ音MADの話をします。つぎは音MADの話〜♪
本作の最も大きなコンセプトは、一言で言うと「布教活動」でした。こういうとても面白い作品があって、この作品にはこんなキャラクターが登場していて、それぞれこんな考えを持っていて、こんな雰囲気が魅力なんだよ!というのをトロプリを全く知らない人向けに楽しませながら説明する。文章にしてみるとなかなか傲慢ですが、要はアニメ全体の空気感、トロプリの魅力を音MADというフォーマットの中でできる限り表現したいということです。ついでに、本作は受験前最後の個人作になるだろう、という想定で制作にかかっていたので、今までの活動の集大成として、今持っているスキルを全部放出するつもりでした。そのため(というかこれは私に新しいものを考える能力が著しく欠けているだけなのですが)、過去作と類似した表現を随所に取り入れています。(←と去年の私は書いているんですがどこを指してそういっているのか全く分かりません。謎です。)
以上のコンセプト、そして他の同曲MADの傾向から、人力ボカロや映像表現などに特に注力した作品にしようと決めました。裏を返せばセリフ合わせのことは全く考えずに見切り発車気味に作り始めてしまったので、後々苦しめられることになるわけです。反省。
2-2. インスト
最初に始めたのはインスト音源の制作です。理由は183のPFを使い回せて一番楽だからです。ということでまずは原曲とセリフ・ボーカルをミュートした音源を貼っておき……たかったのですがPC破損→新調の際にPFが破損してました。号泣。本当ごめんなさい……
実はあんまり作り込んでいません。まあYTPMVじゃないので聴かせたい音だけ作ればそれで良いかな〜〜〜という甘えが生まれていました。実際原曲の音量を上げたら意外と誤魔化せるものですしね。あと終盤(田中秀和すぎコード進行地帯)の耳コピは超大変でした。絶対たくさん間違えてる。
2-3. 人力
次に制作に取り掛かったのは人力ボカロ。この曲はサビの開放感に乗っかって力強い人力を入れると非常に映えますね。
今回はトロピカる部の5人にユニゾンで合唱してもらいました。かかった労力は当然5倍。大変でしたが、ソロで聴くと粗が出ている部分も他の音源が覆い隠してくれるので、非常に聴こえが良くなります。合唱、おすすめです。
ちなみに各キャラのパン振り・ミックス前音源がこちら。こうして聴くといかに合唱とVSTが強力かわかると思います。
私はいつも以下のような流れで作っています。
①REAPER上で音を並べる
②vocalshifterで音の引き伸ばしとピッチ合わせ
③REAPER上で微調整/ミックス
順に説明していきます。
①REAPER上で音を並べる
最初にしてダントツで重要なのがこの工程。ここでいかに妥協せずに良い音素を取り出せるかが運命の分かれ目です。
まず、素材はキャラソン(か、そうでなくても歌声)があればそれを使用することで相当大きなアドバンテージを得ることができます。喋り声よりも歌声の方が発音がはっきりしており、音程のブレも小さいので、素材として使える割合が高く、加工の際の違和感も大幅に減少します。音域が同じだと尚良いです。しかもプロによるMIXとマスタリングが入っているので声が通りやすいです。まあ喋り声を引き伸ばして無理やり歌わせるよりも、歌い声を再構成して歌わせる方が良くなるのは自然なことですね。
ちなみにキャラソンなどでハモリが鳴っていてボーカル分離だけでは単音を取り出せない場合は、UVRのkaraokeモードを使うことでメインボーカルのみ分離することができます。失敗することもありますがたいへん重宝します。
素材が用意できたら音素選びです。根性で音源を何度でもループし、欲しい音を探し当てましょう。全編ひらがなで文字起こししてしまうと検索できて便利(らしい)です。私はやったことありませんが。
音素選びの基準はただ1つ。「理想との差がより小さいもの」です。具体的には、
・ピッチの差が小さい
・歌い方のムードが適切
・母音が"同じ"(後ほど説明)
・子音と母音が聴き取れる
このような条件を考えています。順に説明していきます。
・ピッチの差が小さい
vocalshifterは人間の声の自然なピッチ変更に長けていますが、それでもその能力には限界があります。ピッチを大きく移動させてしまうとどうしても、声質が変わってしまったり、母音が潰れてしまったりと、弊害が生まれてしまいます。基本的には±4〜5半音以内に収められるとグッドです。それに加えて前後の音との上下関係(+4と-4で響きは結構変わってくるので、あまり隣り合わない方が良いです、たぶん)も気にすることができるとなお良いですが、結局運ゲーな側面はあると思います。
・歌い方のムードが適切
演出したい雰囲気に合った歌声を選ぶようにしましょう。例えば盛り上げたい箇所で静かで神秘的な声(Bメロとか、落ちサビとか由来のもの)を使ってしまうと調和しません。当然ですが、前後の音と統一することも大切です。難しい場合も多いですが、サビと決めたらサビだけから素材を取る、などした方がいいかもしれません。
・母音が"同じ"
ここでの"同じ"というのは音韻的な意味です。即ち、歌詞上で同じ「あ」であるだけでは不十分ということです。母音は舌の位置や唇の形によってグラデーション的に変化するもので、同じ「ア」を表す音でも状況によって「エ」に寄った音や「オ」に寄った音など様々です。歌などを非常に注意深く聴いてみると、微妙に日常会話とは違う母音の発声をしている所が何箇所か見つかるはずです。ここについてはまあ、聴いてみて違和感があったら修正するくらいのノリで構いませんが、違和感がある時に母音が原因だと気づけるようにはしておくとよいでしょう。ちなみにこれに関しては音声学の基礎的な知識で説明できるんですが、長くなるのでここでは割愛。
代わりにこちらの記事をお読みください。私が言語学を好きになったきっかけでもある、私の中では非常に大きな存在の記事です。勉強になります。
・子音と母音が聴き取れる
ここで大事なのは「正しい」ではなく「聴き取れる」という部分です。「ガ」の音を「カ」で代用する、子音と母音を無理やり結合する、など、多少の妥協は他の音の流れの中に埋もれてくれます。歌詞に厳密に合わせようと試行錯誤するくらいなら前述の音程やムードの方を優先するべきだと私は考えています。結局、信じられるのは自分(または他人)の耳のみです。良く聴こえたらそれが良いし、違和感があれば改善すればいい。それだけです。なお、これについても上記の記事で詳しくわかりやすく解説されています。
以上の4つのことを意識して選び出した音素を、リズムに合わせて並べていきます。その際注意すべきこともいくつか上げていきます。
・母音の欠落
無声子音(s、k、t、pなど)に挟まれたor語尾のi/u音は、発音されない場合があります。たとえば「好きです」って言う時、多分多くの人は実際には「sukidesu」ではなく「skides」と発音していると思います。それです。よくわからない人は喉に手を当てながら発音してみてください。2つの「す」のときには喉が震えていないのがわかると思います。
原曲を注意深く聴いて、どこで母音が欠落している/いないかを正しく分析しないと、変な感じになります。例えば上記の例で「す」の部分にも母音を配置してしまうとなんだかぎこちない音声になってしまうと思います。オリジナルの歌詞の時にも、自分で試しに歌ってみてどこで母音が欠落するのが自然かを確かめるようにしましょう。
・二重母音
ここが音素並べにおけるひとつの鬼門になるでしょう。例えば「ない」(nai)と歌わせたい場合、字面通りにな/い(na/i)と区切ってしまうと不自然な聞こえ方になってしまいます。ここでは「ない」全体を一音節(音節の定義を説明しようとするとこれまた長くなってしまうので割愛。音の区切り方、くらいの理解で十分です)として、aとiを繋げて人力する必要があります。もともと「あい」が繋がった声素材がある場合はそれを使うのが最善です。なければふたつの音素を重ねて無理やり繋げましょう。この時音素のピッチが(ほぼ)同じである必要があるので、なるべくピッチの近い部分から母音をとってきて、最終的にはsoloistかなんかで調整してあげましょう。
他にも、音の伸ばす長さや子音によるタイミングのズレなど、気を配るべき部分はたくさんあります。ただ、要は原曲のボーカルを注意深く聴いてなるべく忠実に再現すればいいだけです。信じるべきは己の耳。その耳を鍛える必要があるのは、そうかも。それに際して音声学の知識はかなり役立つので、勉強してみるのも良いかも。
②vocalshifterで音の引き伸ばしとピッチ合わせ
音を並べ終わったら出力してvocalshifterに読み込ませます。
私は引き伸ばしの工程をここで行っています。REAPERよりも綺麗に音が伸びてくれるので、少々面倒ですが我慢。Timeタブを使って、直後の子音が潰れないように注意しながら、母音成分のみを引き伸ばします。

その後、各音素のピッチを合わせていきます。私はこのような手順を踏んでいました。
i. 各音素のピッチを平行移動させて大まかに合わせる
ii. 隣接する音と繋げる
iii. 違和感のある箇所を調整する
iv. アクセントやニュアンスを付け足す
順に解説していきます。
i. 平行移動で大まかなピッチを合わせる
この時点で平行移動を使っているのは元素材の形をむやみに崩さないようにするためです。たとえばピッチが途中で上に膨らんでいるのを完全に無視して下に膨らむようなピッチに変更した場合、どうしても不自然さ(処理された感)が生まれてしまいます。音程変化の大きい音をシンセ化しようとした時にこの問題に悩まされた経験が皆さんにもおありだと思います。
ちなみに今では最初に原曲のピッチをコピペしてしまってから上記の条件に合うように調整する方が楽で好きなのですが、どちらにせよ平均化でピッチを合わせるようなことはしません。それは人間が歌う時に正確にピッチが合っている方が逆に変だからです。実際、人間の歌をvocalshifterに読み込んでみると音程がぴったり保たれているような音はひとつもないと思います。おおよそ上下に大きくブレていて、でも全体の平均を取ると大体意図していたピッチになる。そのあたり人間の脳は結構ざっくりふわふわとした処理をしていて、ピッチの正確性よりもむしろ、音素内でどのようにピッチを揺らすかが細かいニュアンスの演出として大事になってくるのです。
ii. 隣接する音と繋げる→iii. 違和感のある場所を調整する
もちろん元素材の平行移動(または原曲ピッチのコピペ)そのままではうまくいきません。たとえば隣の音と(原則)滑らかなカーブで繋げたり、ロングトーンにビブラートを加えたり、さすがに音程がズレていると感じる箇所を修正したり。元素材の発音と原曲のピッチと、両方の表情を窺いながら自分が自然で聴きやすいと思うピッチカーブを探していきます。
iv. アクセントやニュアンスを付け足す


まあまあ変わります。大事です。キャラの個性を表現できる場所でもあるので工夫しましょう。ただ「歌のうまさ」を追求するのではなく、このキャラの歌い方にはこういう癖があるんだろうなあと想像力を膨らませられたら素晴らしいです。
③REAPER上で音作り/ミックス
さて、最後にミックスです。ほぼウィニングランです。完成品を楽しみにしながらとりあえず適当にエフェクトを詰め込みます。いや、やっぱり適当じゃダメです。今回はついでにキャラごとにパンを左右に振ってみました。
これをもってついに完成です。母音の管理が杜撰だったことが反省点。でも過去一でいい人力ができたような気がします。完成した時には達成感クライマックス🐢でした。
2-4 セリフ合わせ
最後に(ずっと後回しにしていた)セリフを乗せていきます。素材を全然持ち合わせておらず非常に苦労しました。
・改めて聴くとくるるんをフィーチャーしすぎな気もします。でも好きなので仕方ないですね。

・使用した素材の大部分は1話と最終話のものです。極端すぎる。まあ、まなつとローラの関係性や作品全体の概要を一番分かりやすく提示していたのはこの2話なので......
・ラメールは最後に登場した追加キュアなので自己紹介も最後に置くのが自然ではあるのですが、まなつとローラを隣に並べたい気持ちが勝ちました。ストーリー的な立ち位置もこの2と3のグループに大きく分かれている気がするので。あと最終話を見てからまなつとローラが楽しげに話しているのを見るだけで涙が出てくるようになってしまいました。
・「何言ってるの?ニンゲン。」の部分で音をぶつ切りにするのはお気に入りです。音MADの中でしっかり空間や心情を意識した映画的?な音響の組み立て方ができたのが嬉しい。
・みのりの口上だけ変な音なのは直撮り音源を持ってきたからです。マジでこれしかなくて......苦肉の策でした。
・Bメロではローラの初変身回にフォーカスする案もありましたが、結局素材の都合で今の構成に。どちらにしても、変身してサビに入る構成は固まっていました。
・「なかなかかっこよかったよ、まなつ!」←この終わり方、めちゃくちゃお気に入り。曲の繊細な表情の変化に寄り添うことができたと思います。
2-5 完成!
これにて音声は完成。ここまでで大体12時間(+使い回し元の183に10時間くらい?)くらい作業していたと思います。もう記憶がめちゃくちゃ曖昧ですが。ちなみにレイヤー数はミュートしているものを含めて約80。圧倒的に過去最多です。
3. 映像
大部分は音声と映像をセットで考えながら構成を決めていたので、ここからはそれを形にしていくだけの作業です。それが一番難しいんですけどね。
3-1. 全体
まずは全体として考えたことを列挙してみます。
・制作時間は30時間ぐらい?多分。自分にしては頑張りました。
・カメラワークについて、鮭醤油さんのこちらの記事で述べられていた「映像に対する力の加わり方を意識する」ことを強く意識していました。このことは今でも念頭に置いて作っていますし、当作品も今考えたら正直まだまだ配慮が足りていなかったと言わざるを得ません。トランジションがワンパターンすぎたのが反省点。
・グラデーションをふんだんに使いました。今回はAviutlの4色グラデーションを使用しましたが、正直あまり納得のいくクオリティには達しませんでした(例えば、色相の離れた2色間のグラデーションを作る時にそれらを色立体上の直線で結んでしまうせいで途中で低彩度色を経由し、鮮やかさが失われてしまう問題がありました)。これ以外にも曲線的な形状や複雑なアニメーションなど、より有機的な表現がAviutlの苦手分野と言えるのかもしれません。これを含めて、最近になって少しずつAviutlの限界を感じるようになってきました。もしかしたらデスクトップPC購入後はAEへの乗り換えを視野に入れることになるかもしれません(ソフトのせいにしても何も始まらないのは、そう)。ちなみにイラレとPremiere proは一応最低限触れるようになりました。
・ムードを意識して場面ごとの編集量を調節したかったのですが、あまり上手くいきませんでした。悪い癖すぎる。無駄な編集が作品を壊すことは常時心に留めておきたいです。
・Adobe illustratorを習得したので、今回の映像制作にも少しだけ取り入れています。これ以来少しずつできることを増やしていったのですが、超めんどくさい代わりにできることが大幅に拡がります。絶対AEとかの方が互換性は高いのですが、作品のレベルを高めたいAviutlユーザーの方はとりあえずIllustratorだけ導入してみるのも一つの手かもしれません。
・アニメの公式サイトから素材をいくつか拝借しました。絶対に雰囲気がマッチすることが保証されているのでこの手法はとても有用です。オススメ。
・トランジションがワンパターンすぎたのが少し反省。武器を増やしていきたい。
総評は以上。ここからはパート別に解説していきます。
3-2. イントロ

・ロゴはイラレで作りました。長方形と扇形を組み合わせただけです。やってることは何も難しくないですが結構面倒で、40分ぐらいかかりました。
・上下の枠について、背面の雲と砂浜は公式サイトからお借りしたもの。前面にはトロピカルなモチーフのシルエットを詰め込みました。出来は良いんですが、このシーンに100%調和しているかと言われると正直微妙ですね......想像していたものをそのまま出力できなかった感じがあります

・ここのまなつとさんごは手持ちで動かしているような動きを再現したかったです。これが限界。
・文脈が少し弱く、「それっぽい」映像にとどまってしまっている気がします。そこは反省。


3-3. Aメロ

・自己紹介ゾーンです。2小節ごとに区切って、前半は各キャラの変身シーンの最後、決めポーズの要所要所を切り取り、それぞれの動きに合わせたトランジションを入れることで繋げています。後半は統一したフォーマットを作りました。
・文字色や背景色には各キュアのイメージカラーを3色ずつブレンドしました。グラデーションって難しいね。

・前半のフォントはロゴjrブラック。個人的には無闇に使うと過剰なカジュアルさが出てしまい、映像の雰囲気を支配してしまう気がしてあまり積極的に使いたくはないフォントなのですが、ここではこれが一番調和してくれました。





・キャラクター名の素材は公式サイトから。アンニャントロマンに光沢の加工を入れてますね。少しこのカットと色彩的にズレてる感は否めず、ここも自作した方が良かったかもしれません。
・フォントははロダン。リゾート的な南国の雰囲気とよくマッチしていると思います。修学旅行(toオキナワ)のしおりにもこのフォントを多用した記憶があります。
・空間を意識して、トランジションの際などは各オブジェクトを個別に動かしています(ex. 背面のオブジェクトは動きを控えめにする)。これが面倒なときにカメラ制御が有用なのですが、それに伴う制限(ex. 上のオブジェクトでクリッピングが使えない)もあるので難しい問題です。Aviutlの悪いところ〜〜〜



・このカットの後ろの集中線っぽいものは少し面倒な工程を踏んでいます。まずは芋タルトさんのこちらの記事(https://immortalt.hatenablog.com/entry/2020/11/07/211822)で紹介されているものを用意。それをシーンに置いてモザイク→2値化でドット風に。これをシーンオブジェクトとして2つ(2色分)読み込んでいます。拙作『ドッジボールのサンドキャニオン』にも使用しており、自分の作風を象徴する手法のひとつになっている気がします。なんか言葉にできないけど便利に使えて良いです。多分言葉にできないなら使うべきでない
3-4. Bメロ

・編集量の調整が大変でした。というか失敗しました。
・ここで少し編集のテンションを落として、視聴者が息苦しくなってしまうのを防ぎたかったのですが、結局他のカットとのバランスやリズム感を優先しているうちに画面がまあまあ忙しくなってしまいました。悪い癖!
・テキストモーションができない。こんな簡単なものでももう限界です。多分まだかっこいいモーションがなぜかっこいいのかを全然理解できていないんだと思います。1年経って少しは上手になりましたがまだまだすごい人たちの背中は見えません。やはり、人々の無意識に影響を与えるためにフレーム単位で組み立てられたサブリミナル的な演出を自分が今身につけている論理から再現できる気がしません。うまい映像をコマ送りで分析したりするべきなんでしょうかね。
・カラグレも苦手です。色って一番個人の「センス」、つまり何が良くて何が悪いかを自分で見極める目が必要になってくる気がするのですが、私にはそのセンスがありません。
・今回色調補正に初めてトーンカーブを取り入れました。

ある特定の雰囲気を強く出したいときには有効ですが、慎重に扱わないといわゆる「Aviutlっぽさ」に直結してしまいそうで難しかったです。でも正直これも普通にAviutlっぽい気がするな。そもそもカラグレをAviutlでやろうとすることが間違いだよね
3-5. サビ

・このクジラさんは1枚ずつスクショして切り抜きました。音MADのコツはどんなにメリットが少なくても数十枚の切り抜き作業を厭わないことです。AIが活用できるなら活用しましょう。できなかったら潔く手を動かしましょう。ちなみに私はGIMPではなくこのスマホアプリ(https://apps.apple.com/jp/app/%E8%83%8C%E6%99%AF%E9%80%8F%E6%98%8E%E5%8C%96/id926035241)を使っています。利点は寝っ転がりながら/移動中に直感的な操作でできること、欠点は画像が一定のサイズ(1600四方ぐらい)に圧縮されてしまうことです。
・サビの最初のトランジションはかなり悩みました。音声の開放感を映像で削いでしまうことのないようにしなければいけませんでした。結局あんまりうまくいってない気はする。
・背景は本家の必殺技背景を参考に自作しました。グラデーション→水玉→飛沫→集中線→パーティクル、という構造になっています。死ぬほど処理が重い!
・テキストの後ろの円は泡を意識しました。1個ずつ登場させるためにテキストオブジェクトを使って変なことをしています。めっちゃ工夫した割に効果は薄い。具体的には以下の手順を踏みました。
①テキストで「●」を数十個並べる
②表示速度を200ぐらいに
③個別オブジェクトにチェックを入れて、単色化の「強さ」パラメーター(大体30〜60)と座標(±50ぐらい)をランダム移動、移動間隔を大きな値に(100万とか)
④座標を調整
⑤座標の拡大縮小を100→110ぐらいで直線移動
⑥黒の縁取りをつけてシーンで読み込む→ルミナンスキー
色彩的に背景とあんまり調和していなくて、そこはもう少し凝れたかなと反省。発想はよかった。
・メモリ不足だと出力のときにシーンオブジェクトを正常に読み込んでくれないことがしばしばあるので困ります。複数のシーンを1つに統合すると意外と解決したりします。どうしても厳しい時は仕方ないので多重出力(シーンを動画ファイルに出力して置き換える)or分割出力(パートごとに出力してあとで繋ぎ合わせる)をしましょう(ここで無駄に粘って時間を浪費したことが無限回あります)。

・これはエンディング映像。プリキュアシリーズは何年も前から非常に高クオリティな3D映像をEDに採用しているのですげーなとおもいます。新シリーズ『キミとアイドルプリキュア♪』のED、サビの色彩設計が異次元級にすごいので観てみてほしい。
・ここで回っているのは背景に斜めクリッピングをかけたものです。幅の数値をマイナスにすると中心を切り取ってくれるの最近知りました。便利



・ここのシャボン玉の切り抜きは、円を各シャボン玉の動きに合わせて配置し、クリッピングで切り抜くという力技で実現しています。画面の奥行きをどうしても演出したかったんです。どう考えてもコスパの悪すぎる作業ですが、やりたい表現のためには何でもするのが創作者というものです。というのが半分で、もう半分は代替案を考えたくない脳死状態だったからです。

・この文字は、プリクラとかのあのキラキラしてるペンとか、花火を動かして文字を作るアレとかをイメージしてグローで作りました。かわいくておしゃれでまあまあお気に入りです。
3-6. アウトロ



・ここから続く3つのカットはめちゃくちゃ上手くいきました。『ボルサリーノ × サービス』の同パートを自分なりに発展させたものです。
・足りていないものがあるとしたらコンポジットの能力。皆さんトライトーンとか二値化とかを本当に上手に使って理想的な色空間を作り上げていくので、憧れています。私はそれどころか色調補正さえサボる時があるので......

・周りのオブジェクトは空間上に気合の手作業で全て設置。めちゃくちゃ時間かかりました。ここは正直パッションだけで良い感じに見せてるので言うことないです…




4. おわりに
この記事はこれにて以上となります。こんな稚拙な文章を読んでいただき本当にありがとうございました。少しでも何か皆さんの利益につながったなら嬉しいです。
最後に、SNS上やコメントなどで言及してくださった方や10選等の投票イベントで選んでくださった方に、最大限の感謝を述べさせて頂きたいです。私は自己満足のために音MADを作っているつもりですが、それでも自分の作品が誰かの心に届いているのを見ると「生きててよかった」と思います。
それでは!今日も一日、トロピカろう!!!
