【シロクマ文芸部】その日が来たら~#十二月
十二月最初の土曜日のお昼時、珍しくショウタがうちを訪ねて来た。
「どうしたの?週末にうちに来ていいの?」
「いいんだよ。あいつ、今日から友達とライブに行くから」
ショウタと私は正式な恋人ではない。なぜならショウタには長い付き合いの彼女がいるからだ。ショウタはどう思っているのか知らないけれど、私の心がショウタを求めていて、こんな関係を断ち切れないでいる。
「お昼どうする?どこか食べに出る?」
「あ、俺買ってきたよ」
そう言うと、評判のカレー屋さんのランチの入った袋を差し出した。
大きめのお肉がごろっと入ったカレーはマイルドだけど、最後にピリッとスパイシーさを感じた。
「どう?ここのカレー」
「うん、おいしいよ。そんな辛くないから私でも食べられる」
「でしょ?ユイ、辛い物苦手だからね」
カレーを食べながら、私達の関係もこのカレーみたいだと思った。
「今日は話があるんだ」
胸の中にぴったりとくっついた私の髪をくるくると指に絡めながらショウタが口を開く。肌と肌の温度を確かに感じているのに、私の体がさーっと冷えていくのが分かる。ついにこの日が来たんだろうか。
「俺、結婚するんだ」
「そう。良かったね。式はいつなの?」
「4月だよ」
やっぱりこの日がやって来たのだ。
私の心臓のドキドキをショウタも感じているかもしれない。頭が真っ白になるのをこらえて気力を振り絞った。
「じゃあ、私もうショウタと会わないよ」
私の声は震えていたかもしれない。
「なんで?俺はユイと離れたくないよ」
「何言ってるの?結婚するんでしょ?あなたは彼女を選んだ、それだけの事よ。私、不倫なんてしたくないもの」
ショウタが私にキスをしてきた。舌の感触を味わいながら、このまま何も考えずに身を委ねてしまいたかった。快楽だけを感じていたかった。結婚なんてしないでと言いたかった。ずっとずっと私と会っていて欲しかった。それが例え週に一度だけの逢瀬でも、私がショウタにとって都合のいい存在だったとしても。
だけど。
乳房に手を伸ばしたショウタを押しのけて、私は体を起こした。
「ショウタ、帰って。もうここには来ないで」
「どうしたんだよ。俺、ユイが好きなんだ。ユイがいるから俺……」
「私だってあなたが好きよ。でも、もうどうしようもないじゃない。だから、もう帰って。じゃないと、私しつこく付きまとうわよ」
「ユイ、今までありがとう。式には来てよ」
パタンと玄関ドアが締まる音がする。カギを掛けに行かなくちゃ、と思うけれど体が動かない。何が式には来てよ、だ。ショウタのその言葉に私は軽く絶望する。好きと言いながら、そういう事を言えるのは私はやっぱりその程度の存在でしかなかったのだ。
のろのろと裸のままカギを掛け、また毛布に包まった。素肌にすべすべの毛布の感触が心地いい。去年のボーナスで奮発していい毛布を買って良かったと変な事を思う。
そのまま眠ってしまった私は夢を見た。白いドレスを着てショウタの横で満面の笑顔を浮かべている私の姿がそこにはあった。目が覚めた私の目からは涙が一筋頬を伝った。
その時、くぅとお腹がなって、私は思わず笑ってしまう。こういう時でもお腹は空くのだ。そんな自分が愛おしくて、私はこれからも生きていけるし大丈夫なんだと思えてならなかった。
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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「十二月」です。
愛してなんて口にしたりしない
最後まできっと…
このライブの本間さんのサックスめちゃくちゃカッコよくて鳥肌ものでした。
誰が悪い訳でも
誰のせいでもなくて
いつも若さはきまぐれ
こういう世界観を書いてみたかったりしました。
もう12月ですね。
今年の汚れ今年のうちに。
なんてね。
今いくよくるよさんのCM発見!
懐かしい・・・
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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