【毎週ショートショートnote】いつか巡り逢えたなら〜おじさん箪笥
私はおじさんが独り住む2Kの古いアパートに置かれている箪笥だ。おじさんの奥さんだった人が持参した婚礼箪笥の私は、この部屋には似合わない豪華な見た目をしている。その時の箪笥の仲間は離婚した時に売られてしまい、私だけがおじさんと一緒にこの部屋に移り住んだのだ。
おじさんは今日も仕事から帰ってくると、スーパーの半額のお弁当を食べ、9%の缶チューハイを何本も飲んでいる。部屋は掃除もされず、ゴミもそのままで汚部屋状態だ。それに、お弁当ばかり食べているので栄養が偏っている様にも思う。このままじゃダメだと言いたいけど、私の言葉なんておじさんの耳には届かない。
今ではこんなおじさんだけど、結婚していた頃はオシャレで健康的なやる気に満ちた人だった。離婚してからのおじさんは、オシャレをするのも忘れてどこか人生をあきらめてしまっている様に見える。
おじさんは缶チューハイを飲みながら先日の健康診断の結果を見て、ため息を一つついてポイと乱暴に結果を投げた。私が診断結果を覗き込むと、そこには再検査の文字が見えた。
おじさんが頑なに再検査に行かないまま数か月が過ぎた。
相変わらず汚部屋だけど、おじさんは近頃あまり食事もしなければ、缶チューハイも飲まなくなった。以前よりかなり痩せてしまったおじさんは何だかひどく具合が悪そうだ。
ある日、朝になっても昼になってもおじさんは一向に起きてこなかった。私は起きないおじさんの事が心配でたまらない。翌日の午後、警察とアパートの管理人とおじさんの会社の人がやって来た。警察の人がおじさんに触れると、黙って首を横に振った。
その数日後、おじさんの子供達が清掃会社の人と一緒にやって来た。部屋のゴミがどんどん片されてきれいになっていく。そして、息子さんが私の引き出しを開けた。引き出しの中にはおじさんの名前と子供達それぞれの名前の通帳が入っていて、その中にはかなりまとまった金額が入っていた。
「お父さん、私達にお金を残してくれていたんだね」
「一応、親らしい事をしようと思ったんだろうな」
そして、一番下の引き出しを開けると、そこには奥さんだった人の写真が入っていた。
おじさんは、時々酔っぱらうと引き出しを開けて写真を抱きしめて泣いていた。おじさんは奥さんだった人の名前を呼んでは「俺よりアイツが良かったのかよ。俺のどこがいけなかったんだよ」と泣きじゃくっていたのだ。
「この箪笥、どうする?お母さんの婚礼箪笥だったよね」
娘さんが息子さんに問いかける。
「そうだな。でも、こんな箪笥なんてもう使わないよな」
「そうね。もったいないけど、処分しましょうか」
それを聞いた私は少しホッとした。おじさんは死んでしまったし、私も独りぼっちになってしまったからだ。処分されるのは少し怖いけど、天国でおじさんとまた過ごせるのならそれでいい。しばらく天国で過ごしたら、今度は一緒に人間同士で巡り合うのも悪くないと思う。
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今週の裏お題は「おじさん箪笥」です。
ほんとに久々の参加です!
なんか、ショートショートというよりも掌編小説になっちゃいました。
しかも、文字数も3倍だという笑
けど、「おじさん箪笥」で真っ先に浮かぶのは大川栄策だったりしますww
ザ・ベストテンでのタンス担ぎが未だに忘れられませんっ!!
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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