見出し画像

スプーンの向こうに見えた、ほんとうのやさしさ

姉妹ゲンカから始まった、ある日曜日の朝。
きっかけは、「天国と地獄のスプーン」の話でした。

自分では食べられないスプーンを前に、娘たちは何を感じたのか。
“思いやり”って、どうやって伝わるんだろう。

ケンカと笑いが交錯する、わが家の“なんちゃって授業”の朝。

これは、娘たちと一緒に「やさしさのかたち」を見つけた、ちょっと特別な朝の記録です。


———


「今日のテーマは、スプーンです!」

「ママ、また始まった~!?」
「えーっ、今日はスプーン!?」


日曜の朝。我が家では、娘たちのケンカがチャイム代わり。

そして私が黒板を持たずに始める『なんちゃって道徳授業』の開講です。


◆ 教科書なしの“母親の授業”始まります


「クイズです!」

この一言が出たら、わが家では“なんちゃって道徳授業”のはじまりです。

最初は、ただの“母の自己満足”でした。

「自分で考えて、自分の言葉で答えを出せるようになってほしい」


そんな想いから生まれた“クイズ形式の授業ごっこ”は、今ではわが家の定番に。

ちょっと面倒。でもちょっと面白い。
そんな母の時間割に、娘たちは案外ちゃんと付き合ってくれています。


◆ 初回のテーマは「稲わらリサイクル」


最初の授業は、「地元の稲わら焼き問題」について。


地元では、農作業のあとに出る稲わらやもみ殻を燃やすことが、環境への悪影響として問題になっていました。


「燃やすのって、もったいなくない? 何かに使えないかな?」


そう聞くと、娘たちの創造力は爆発!

「わらで人形! 草履! バッグ!」
「わらの服ってチクチクしそうだけど…売れたら地元が潤うよね!」

小学生とは思えない熱量で、
壮大な「稲わらリサイクル計画」が生まれそうな勢いでした。


◆ 今日も平和に、バトル開戦!


1年前、ある日曜日の朝のこと。
リビングで、恒例の“開戦”が始まりました。

「ママ~!動画見たいのに〇〇がゲームばっかりする〜!」

「は?順番待ってたの、こっちだし!」

小学3年の妹は、口をとがらせソファにドカン。
目は潤んでるのに「泣かないぞ」の顔。

小学6年の姉は「私は悪くないし〜」と、冷静な無視スタンス。

どちらの言い分も正しい。けれど譲れない。


その瞬間、私の中で「道徳教師スイッチ」がON!

――よし、この喧嘩を今日の授業にしよう!


◆  “天国と地獄のスプーン”を出題!


「今日のクイズは “天国と地獄のスプーン”の話です」

娘たちはポカン。
よし、ここからが母の出番!

――

地獄では、豪華な料理がテーブルに並び、人々が囲んで座っています。
でも片手は椅子に縛られ、もう片方の手には、体より長いスプーンが巻き付けられています。

スプーンが長すぎて、自分の口に料理が運べません。
誰も食べられず、みんながイライラしています。

一方の、天国。
状況はまったく同じ。
縛られた手、長いスプーン、同じ料理。
でもみんな笑顔で、食事をたのしんでいます。

――さて、なぜでしょう?


◆ スプーンから始まる珍回答バトル


妹が勢いよく、真っ先に手を挙げました!

「わかった! スプーンを短く持った!」

そんな妹の叫びに、すかさず6年生の姉がツッコミます。

「無理じゃん。縛られてるんだから」

「……あ、そっか」

姉の冷静なツッコミに肩を落とす妹…
でも、そんなのは一瞬だけ!!

「じゃあテーブルからめっちゃ離れてた?」

「いや、届かないでしょ」

妹は、勢いよく何度も手を挙げるけど、姉の攻撃にすぐさま撃沈。

「口で直接食べた! …あ、ラーメンは無理か」

「ドラえもんのスモールライトでスプーン小さくしたらいける!」

「てか、足使えるじゃん?」


…我が家の朝が、突然SFアニメのようになってきました。


◆ ひとことが、空気を変えた


しばらくして、姉がポツリと。

「……協力してたとか?」

お、いい線いってる!

「どうやって?」と聞くと、「うーん」と首をかしげ、沈黙。
惜しい、あと一歩!

そこで私は逆から聞いてみました。

「じゃあ、地獄の人たちはどうして食べられなかったんだと思う?」

ふたりは静かに考え始めました。

そして、最初は自分のことばかりだったけれど、
だんだんと『誰かの気持ち』を想像するようになっていきました。

「みんな、自分のことしか考えてなかったんじゃない?」
「独り占めしようとしてたのかも」

そんな言葉に、長女の顔が少しやわらかくなりました。


「協力しないから、誰も満たされなかったんだ」
「お腹空いてると、イライラするよね」
「イライラすると、人に当たりたくなるよね…」


よしよし、いい感じ。
少しずつ、答えに近づいてきたぞ!

◆ 思いやりのスプーンは、巡り巡って


そして⸻

「わかった! 相手に食べさせてあげたんだ!」

ついに正解!!



天国では、みんながスプーンで“相手にごはんを食べさせて”いたんです。

自分では食べられないなら、誰かの口に運んであげる。

その思いやりが巡って、やがて自分にも戻ってくる…。


◆ 朝ごはんは、食べさせ合いチャレンジ


思いついた私は、すぐに長めの木べらとオタマを台所から調達。

「今日の朝ごはんは、相手に“あーん”してあげる方式で!」

我ながら、小学生に対してなんて無茶振り!!

「赤ちゃんじゃないし!」「オタマは無理〜!」
とブーイングしながらも、やってみると娘たちは大盛り上がり。

「次は私が“あーん”!」「ちょっとこぼれてるよ〜笑」


いつの間にか、食卓には笑いと優しさがあふれていました。
そして“相手の顔を見る時間”が、自然と増えていました。


◆ 喧嘩は続く。でも、伝わっていると信じたい


優しくすると損をする。
そんな場面が多いこの時代。

「思いやりが仇になる」ような場面もあるでしょう。

でも、誰かのために差し出したスプーンが、
いつか自分を救ってくれるかもしれない―

そう思えるだけで、ほんの少し優しくなれる。
少しだけ、生きやすい世の中になれる―

そんなことを思っています。

そして、娘たちにはそんな風に育ってほしいと、私は願っています。

授業のあと、娘たちは笑いながら
ゲームと動画の順番を一緒に決めていました。

ふたりで考えた“新しい遊び”に夢中。

……が、平和は10分しかもたず。

「さっき動画見たじゃん!」
「そっちこそ、ゲーム長すぎ~!」


それでも私は信じています。

彼女たちのなかには、あのスプーンの意味が、
きっと残っていると⸻

喧嘩もするし、すぐ忘れるし、また喧嘩する。
でもきっと、あの日の“思いやり”は、どこかで小さく息をしている。

誰かのために差し出したスプーンは、
やがて自分を救うスプーンになるのかもしれない。

そんなやさしさを、娘たちの中にも育てていきたい。


だから私は、またひとつ、問いを探します。

「さて、明日はどんな問いを投げようかな。」

スプーンのように、そっと手渡す“やさしさ”を探しながら。

いいなと思ったら応援しよう!

miyu いただいたチップは、noteや今後の活動、自己啓発のために使わせていただきます!応援していただけると、とっても嬉しいです!