ミヨ子さん語録「空(から)飲み」

 昭和中期の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)を中心に庶民の暮らしぶりを書いている。

 先日帰省した折りのミヨ子さんにまつわるエピソードを書き始めたところだが、帰省中けっこう忙しかったうえ寝不足気味で、思いの外寒くもあったせいか、東京に戻ってから風邪の症状が出てきた。時節柄新型コロナやインフルエンザも疑われるが、症状は市販の風邪薬で緩和されているからとりあえず様子を見ている。外出は控えているので万一の場合でも誰かにうつすことはないだろう――たぶん。

 さて、市販薬を服用していてミヨ子さんの口癖を思い出した。

 食後服用指定の薬が多い中、いま飲んでいる薬も食後30分以内に服用とある。この手の薬で困るのは、わたしは数年間1日2食に切り替えたため、朝食を摂らなくなったことだ。

 食後指定は胃への影響を考えてのことで、お腹に何もない状態ではまずいということらしい。こういうときミヨ子さんは「空飲みはよくない」と言っていた。親の教えというか親をはじめとする身近だった人の言葉は、いくつになっても、その人の声と口調で思い出すものだと感心しつつ、何か一口食べてから薬を飲んでいる。

 なお「空飲み」は薬の服用以外に、つまみなどの食べ物なしにお酒――鹿児島ではほぼ例外なく焼酎――をのむ場合も指す。寄り合いなどで酒席に出ることの多かった夫の二夫さん(父)には、よく「空飲みしないでくださいね*」と念押ししていた。二夫さんは場の雰囲気に流されて料理をろくに食べないまま焼酎が進むことがあったからだと思う。それを多少はわたしも受け継いでいるが。

 薬だけは「空飲み」しないようにしますね。

*鹿児島弁「空飲みはしやんななぁ」
 

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