アメリカ国連大使「高市首相がホルムズ海峡に自衛隊の支援を約束した」 ―「国際法違反を国際法違反だと言わないことは、日本外交の説得力を強めることにはならない」
アメリカのウォルツ国連大使は22日、CBSのテレビの番組で、高市首相がホルムズ海峡に自衛隊による支援を「約束した」と述べた。高市・トランプ会談後の高市首相の説明は、憲法など日本の法律的制約を理由に自衛隊の派遣はできないとトランプ大統領に伝えたというものだった。もしウォルツ国連大使の言う通りに自衛隊の派遣をトランプ大統領に伝えていたとすれば、国民に虚偽の説明をしていたという印象だ。総選挙直前のNHKの「日曜討論」を欠席したり、自身が政府批判のテレビ番組を批判した総務省文書を「捏造」と言ったりする高市氏のことだから国民に誠実な政治家とは考えにくい。

小泉進次郎防衛相は3月16日の参議院予算委員会で自衛隊派遣は「現時点で考えていない」と述べていたが、24日テレビ番組の収録で「ホルムズ海峡にエネルギーの関係でも大きく依存している日本として、そもそも自分たちの国益という観点から、(他国に)言われるからではなくて、何ができるかを考えなければいけない」と述べるようになった。ホルムズ海峡などペルシア湾地域に自衛隊の派遣を決断したかのような口ぶりだったが、やはり高市首相の訪米が影響しているのではないかと思わざるを得ない。トランプ大統領とネタニヤフ首相が始めた国際法や国連決議を無視した理不尽な戦争に日本が軍事的に参加することを日本の政治家が決断するのは不合理であり、派遣される自衛隊員が気の毒でならない。
政治家のウソが取返しのつかないことになることは歴史が教えるところでもある。アドルフ・ヒトラーは、ドイツの閉塞された時代に、「大衆は小さな嘘より大きな嘘の犠牲になりやすい。とりわけそれが何度も繰り返されたならば」と考え、ドイツを破局に導いた。日本が再び破滅に至らぬためには、政府、政治家の誠実が求められるが、自衛隊のペルシア湾派遣が自衛隊の活動範囲拡大のさらなる一歩となるようなことはあってはならない。

イランの詩人フェルドゥスィーの叙事詩『王書(シャーナーメ)』の中でカイカウス王が息子のために残した教訓には「嘘をつくな、他人にわかるように話せ。人はその舌の下に隠れているのだから」というものがあり、人は誠実な性格やその話し方によってその品位を判断されるという教訓がイランにはある。フェルドゥスィーの教訓に従えば、私には高市氏が品位のある政治家とは思えない。
真実を語って囚われの身となることは
偽りを語って束縛を免れるに勝る!
―サーディー『薔薇園』(第8章 物語81)

3月24日、トランプ大統領は「イランの指導部をすべて殺害したので、今の指導部は全く違う面々だ」と述べ、イランに対する軍事行動の成果を強調し、「これは体制転換だと言える」と主張したが、現在イラン政治を担っているのはイスラム共和国の保守強硬派の面々で、ハメネイ元最高指導者と同じ発想・考えをする人々で、「体制転換」などとはまったく言えない状態だ。
トランプ大統領は「きょうイラン側からプレゼントが届いた。巨額の金に値する大きなプレゼントだ」と述べた。精神を病んでいるとしか思えないトランプ氏の言うことなどいちいち真に受ける必要がないかもしれない。ただ、超大国の大統領の言うことだから一応解釈すれば、イランが石油利権を米国に与えることを約束したとでも言うことか。
そう考えると、映画「新・男はつらいよ」で寅さんが泥棒に金を与えたシーンを思い出した。寅さんとおじちゃん、おばちゃんは、寅さんが競馬で当てた金でハワイ旅行を計画し、柴又の人々から餞別をもらうなどして見送られたが、しかし旅行社に支払われたはずの金は旅行社の社長が持ち逃げしてしまい、結局ハワイ旅行はフイになる。寅さんたちはハワイ行きの飛行機に乗るはずだった羽田空港から柴又に戻り、町の人たちの手前、バツが悪いために家でこっそり暮らしているところに泥棒が家に押し入ってくる。ハワイに行けなかったことを隠したい寅さんは、泥棒を警察につき出すこともせずに、口封じのために金を与えて俺たちがここ(家)にいることは黙っていろと言って泥棒を逃がす。

https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie/4/
イランが泥棒のようなトランプ大統領に石油利権を与えることなど考えられない。おそらくトランプ大統領はイランの現体制を倒して、アメリカがイランの石油利権を手にして、それを米国民に誇るつもりだったのではないかと思う。アメリカは1979年のイラン革命以来、50年近くもイラン石油に絡むことができていない。トランプ大統領の「参戦」の一つの理由はイランの石油利権だったような気がしている。
ドイツのシュタインマイヤー大統領は24日、ベルリンで外交官向けに演説し、米・イスラエルとイランの交戦は「避けることができた不必要な戦争だ」と述べた。トランプ大統領が2015年のイラン核合意から離脱したことがそもそもの誤りだったとトランプ大統領を痛烈に批判した。また、ドイツのメルツ首相が国際法上の評価を避けていることに「国際法違反を国際法違反だと言わないことは、ドイツ外交の説得力を強めることにはならない」とも述べた。
日本外交にはシュタインマイヤー大統領のような気骨はまるで感じられない。つまり説得力がまるでないということだ。自衛隊をペルシアに派遣することは泥棒に協力するようなものだ。茂木外相は日本とイランの単独交渉を否定するが、日本が他のアジア諸国と協調してイランと交渉する姿勢も気配も感じられない。
