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【縁側茶屋】座ると思い出して、立つと忘れる私

「あれ?何をしようとしてたかな?」
そんなふうに、自分がしようとしたことや、今思いついたことを忘れてしまうことってありますよね。

今日は、そんな「忘れてしまうこと」について、お話ししていこうと思います。


あと少しで思い出せそうなのに

ある日、私はリビングで椅子に座っていた時、
何かを思いついて、席を立った。

「…?なんだったかな」

忘れて、座る。
すると、唐突に思い出した。

そうだ、あれだ!
思い出した喜びに、私はすぐさま席を立つ。

「……?なんだったかな」

椅子から離れた瞬間、
私はまた何をするんだったのかを忘れてしまった。

立ったまま、考えても何も思い出せない。

立ったり座ったりする私のことを、
家族が不思議そうに見ているが、
私はそれどころではない。

「もしかして、あなた、私の記憶吸い取ってる?」

私はじっと目の前の椅子を見つめた。
椅子は何も言わず、しれっとした顔で
そこにいるだけだった。

絶対あやしい…。
だって、座ると思い出すのに、立つと忘れるんだから。
きっとこの椅子が記憶を吸収してて、
私が座ると思い出すようにしているに違いない。

昔からそういう発想だった

自分の忘れっぽさを棚にあげて、そんなことを考えていた私。
ふと、思った。

私って昔から、
物が記憶を預かっているって想像するの、好きだったよなぁ。

この一言から、幼い頃の記憶がふっと浮かんだ。

枕に夢を吸い取られる

小さい頃からよく夢を見ていた私。
目が覚めた時は覚えていたのに、
枕から頭を離した途端、内容を忘れてしまう。

小さい私は本当に不思議に思っていた。

「どうして、さっきまで覚えていたのに、
枕から頭を離すと忘れちゃうんだろう?」

毎朝、起きて考える日々が続く。
そして、ある時思いついた。

「そうか、枕が吸い取ってるんだ!」

疑問が一つ解決した私は、
ちょっと嬉しかった。

でも、一つの疑問がふと湧いてきた。

「どうして、夢を返してくれないんだろう?」

枕が夢を吸い取ってるなら、
私が頭をつけたら、返してくれるはずなのに。

頭をそっと枕につけてみる。
でも、夢は返ってこない。
何度、頭をつけても何も戻ってこない。

「なんでかな?」

小さい私は一生懸命考えて、答えを見つけた。

「お日様に照らされたら、無くなっちゃうんだ!」

いや、雨の日はどうなんだろう?
というツッコミは、大人になった私から。

小さい私は、自分の見つけた答えに大満足していた。

少しだけ、そうだったらいいのにな

時は戻って、現在。
あいかわらず、忘れっぽい私。

もう、椅子や枕に記憶を取られているとは考えていない。
当の椅子も枕も、冤罪から解放されてホッとしていることだろう。

とはいえ、もしもそうだったらいいのになとは思う。
私や誰かの記憶が、椅子や枕、家具や家に残っていたら。
それに触れたとき、ふと垣間見えるような世界だったら。

それはそれで、少し幸せかもしれないな。

でもーー

そんな感傷に浸っている私を現実に戻す、
もう一人の私の声が響く。

「壁触った瞬間、『にんじん買わなきゃ』とか聞こえたら、
気持ち悪いじゃん」

…たしかに。
やっぱり、記憶は自分の頭に収めておくのがいいらしい。

忘れないようにと、椅子に座ったまま
思いついたネタを書き残す、ある冬の夕暮れのこと。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

私は忘れないようにと、メモを取るようにしています。
でも、ボールペンを手に取った瞬間忘れることがあって、

「はっ!!まさか、あなたもなの!?」

と思わずペンを睨むことがあります。
机の上で静かにたたずむだけのその姿は、椅子と同じくしれっとしていました。

自分の記憶も、USBみたいに保存できればいいのに。
そんなことを思いつつ、今日もペンを睨みながら返してくれない記憶を追いかけています。

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