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誰にでもできる「浅い英文解釈」で満足していないか?君の解答は"変換"であって"解釈"ではない。2025 京都大学入試・大問1(a)を通して「真の英文解釈力」を身につけよう。

今回は主に大学受験英語の指導者向けの骨太な記事になりますが、もちろん「さらに一歩先へ」を目指す難関大学志望者にとっても有益な内容となっています。

「大学受験英語の指導者に求められるもの」という仰々しいテーマで語っていこうと思います。

実際に私が先日職場の予備校で最難関大学志望者が受講する講座にて話した内容を織り込んだ記事になります。

なお、この記事で扱う2025年度・京都大学入試・第1問の、単語+補足説明を記載したプリントをDLできるよう最後にPDFファイルで置いておきます。(授業で配布したものです。)ご参考ください。

ご購読いただいた方のコメントを抜粋して掲載しておきます
参考書等々で語られることは無いであろう問題を扱っていますので、損はさせません。

英文解釈に対するハードルがすごく上がったような気がします。京大って(本来は)ここまで求めるのですね。

先生の記事はいつも参考にさせていただいてます。どの記事も学校や参考書では得られない本当に役に立つ内容だと思います。先生の授業を受けられる人がうらやましいです。

エルマー様のコメントより

それでは本題に入っていきましょう。


■「英文解釈」の定義

さて、京都大学をはじめとして、大学入試の英語の科目では、下線部和訳問題、いわゆる「英文解釈」がかなりの割合で出題されます。

一般的には「英文解釈」とは、文法知識・単語の知識・そして構造を把握する、自らの持つ「英語力」を活かして英文を日本語に訳すもの、と認識されているかと思います。

英文解釈という言葉それ自身は広義の意味では「英語長文全体の意味の把握」を指すはずですが、ここでは「下線部和訳問題の解答作成」という狭義の意味で使わせてもらいます。

前述のようにかなりの大学で出題される問題形式ですので、英語講師であれば生徒に自分の言葉による説明で理解させられる程度にはしっかりと前述の英語力を身につけていなければなりませんし、そして難関大志望者であればそこまでとは言わずともある程度はそういった英語力を身につけていなければならないでしょう。

そもそも「解釈」という日本語はどういう意味か、確認してみましょう。

1.言葉や文章の意味・内容を解きほぐして明らかにすること。
 また、その説明。
2.事や人の言動などについて、自分なりに考え理解すること

デジタル大辞泉

ということですので、「英文解釈」の定義は「英語で書かれた文章の意味・内容を解きほぐして明らかにすること」、「英語で書かれた筆者の言動などについて、自分なりに考え理解すること」くらいになるでしょう。


■2025年度の京都大学の入試の英語の問題、大問1(a)を読み解く

英文解釈の定義について明らかにしたところで、2025年度の京都大学の入試の英語の問題、大問1(a)の話に移っていきましょう。

2025年度の京都大学の英語は、全体的に例年に比べて難易度が易化したとのもっぱらの評判でした。下線部和訳の問題として、点数を取るだけであれば確かにそうでしょう。実際に大問1(a)の部分まで見てみましょう。

 Users of Sanskrit, Latin, Greek, Hebrew, Arabic, Persian, Mandarin, English, and the like have continually proclaimed their languages holier, more perfect, or more adaptive than the unwritten, unstandardized "dialects" they look down on. But from a linguistic point of view, no language as used by a native speaker is in any way inferior, let alone broken.
 Perceptions of linguistic superiority or inferiority are not based on anything about the languages themselves, but on the power, class, or status of the speakers. Every language signed or spoken natively is a fully equipped system for handling the core communicative demands of daily life, able to coin or borrow words as needed. "Languages differ essentially in what they must convey and not in what they may convey," said the linguist and polyglot Jakobson. In other words: (a) it's possible to say anything in any language, but each language's grammar requires speakers to mark out certain parts of reality and not others, however unconsciously.

京都大学 2025 英語大問1(a)

下線部和訳的には、とくに盛り上がる部分はありませんね。
受験生としても、とりあえず文字通り訳して、それなりの得点を稼いで次へ行ったものと思われます。

模範解答例は以下のような感じです。

どんな言語においても何かを語ることは可能ではあるが、各言語の文法によって、話者はたとえ無意識であるとしても、現実の中にある「ある部分」を目立たせ、そしてほかの部分を目立たせないことを要求されているのである。

ただ、授業をする側の視点になると、そんな簡単な話にはなりません
まずはこの下線部(a)は、直前のin other words: の言い換えですから、直前の文と同じ意味を表していなければならないことに言及すべきです。

それでは直前の文章を訳してみましょう。

「諸々ある言語は、伝えなければならない点において本質的に異なるのであって、それが伝えてもよいことという点が異なっているわけではない。」と、言語学者であり多言語話者であるヤーコブソンは言った。

とりあえず、訳せましたね。前後が同じ内容かどうか確認するために、繋げてみましょう。

「諸々ある言語は、伝えなければならない点において本質的に異なるのであって、それが伝えてもよいことという点が異なっているわけではない。」と、言語学者であり多言語話者であるヤーコブソンは言った。言い換えると、どんな言語においても何かを語ることは可能ではあるが、各言語の文法によって、話者はたとえ無意識であるとしても、現実の中にある「ある部分」を目立たせ、そしてほかの部分を目立たせないことを要求されているのである。

さて。とりあえず日本語としての恰好はつきました。しかし、この一連の文章をこのように訳して、これで終わりでよいのでしょうか。本当に前後が同じ内容であると言えるのでしょうか。

■出来上がった日本語の文章の意味、他人に説明できますか??

もしこの部分の問題が単純な下線部和訳でなく、「ロマーン・オシポヴィチ・ヤーコブソンの発言はどういうことを意味するのか、具体例を挙げて説明しなさい」だったとすると、どうでしょうか。

とたんに自分の書き上げた(a)の和訳の解答が、「ただの日本語の羅列」であると気づくのではないでしょうか。

「現実の中にある、ある部分を目立たせ、そしてほかの部分を目立たせないことを要求されている」とはどういう意味なのか?

そしてその前の「伝えなければならない点において本質的に異なる」は、おそらく「現実の中にある、ある部分を目立たせ」に対応するはずですが、筆者は結局何を言いたいのでしょうか?

英語講師がこういったそれらしい日本語訳を提示して、この部分の意味内容を曖昧にしたまま次へ進んでしまうと、もはや「人である意味が無い」です。


■英文解釈とは何か

あなたが高校生に大学受験用の英語を教える講師であれば、自分が授業を担当している生徒にどういう意味なのか説明できなければなりません

あなたが京都大学志望で過去問演習をしているのであれば、おなじ京都大学を志している友人に説明できたほうが解答の説得力が高まります。

もし説明ができないのであれば、あなたがやっているのは「解釈」ではなくただの「変換」作業です。

句や節をカッコで囲み、SVOCを振って分解し、それぞれのカタマリを日本語に訳して最後に体裁よく合体させる作業は、本当の意味での「英文解釈」とは呼べません。

しかしながら、今回扱う大問1(a)の問題で悩ましいのは、「変換」であっても十分合格点は取れるところにあります。

現に大手予備校各社が出した解答例も、今回の問題を速報的に扱ったYoutuberも、「解答の中身・意味するところ」にはほぼ触れていません。(そもそも触れる必要も、時間的余裕もないのでしょうが、、、)

ただ、生徒に関して言えば、出来上がった日本語を読み直して「よく意味がわからないな」と思った場合にせめて練習の時くらいはしっかりと理解できるまで問題や文章の内容と向き合ってほしいですし、英語指導者であれば生徒から質問されたときにどういうことなのか答えられるようにしておかなければなりません

ここから先は、そういった「とりあえず完成したし点数はもらえそうな解答が出来上がって満足」といった、「解釈」という名の皮を被った「凡庸なうわべだけの言語間の変換作業」ではなく、「この英文はどういう意味なのか?」ということまで考えていく文字通りの「解釈」を行っていきます。

以下の文章では、「なぜ意味が取りづらいのか?」から「結局どういう意味の文章なのか?」を説明し、最終的に大学受験英語を指導する講師に必要なものを提示していきます。

「うわべだけの答えを教える講師」から「文章の読み方を大局的な視点から指導することができる講師」に変容するために必要なものです。

大学受験生にとっても、「真の英文解釈とは」がわかる内容になるでしょう。上を目指す学生にとっては、ぜひ知っておくべき内容です。


■今回のテーマは、そもそも日本語ネイティブには不利

さて、では本題に入りましょう。そもそも以下の日本語が、いまいち意味が分からないのはなぜなのでしょうか?

「諸々ある言語は、伝えなければならない点において本質的に異なるのであって、それが伝えてもよいことという点が異なっているわけではない。」と、言語学者であり多言語話者であるヤーコブソンは言った。言い換えると、どんな言語においても何かを語ることは可能ではあるが、各言語の文法によって、話者はたとえ無意識であるとしても、現実の中にある「ある部分」を目立たせ、そしてほかの部分を目立たせないことを要求されているのである。

それは「我々が日本人であり、日本語ネイティブである」からです。

我々日本人は大半がモノリンガル(単一言語話者)なので、言語間の差異は肌感覚で知ることができません。学校で数年習った程度の英語では、日本語と英語の差異は「ぜんぜん違う」くらいの解像度しか持ちえないでしょう。そもそも今回の題材のような「言語間の比較」は非常に苦手なのです。

そして日本語は、英語と違いハイコンテクストな言語であるためです。

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