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事業統合で見落とされる「システム統合」という落とし穴

こんにちは、「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
「笑顔工学」についてはこちらの記事をご覧ください。

後継者不足、事業承継、規模拡大、グループ再編などを背景に
企業買収や事業統合といったことが起こることは
ますます一般的になってきました。

そういう場合、契約内容を詰めていくわけですが、
財務、税務、法務などを、まずは考えるものです。
しかし、実は「システムの統合」は大きな課題です。

システム統合にかかるコストが、
契約条件や統合後の収益計画に影響することも、
決して珍しくありません。
軽視して後から大変なことになることも多々あります。

システム統合というと
「古いシステムから新しいシステムへデータを移す作業」と
単純に考えがちですが、そう単純な話でもありません。

統合するのは、画面やデータだけではないからです。

会社ごとに異なる仕事の進め方、
言葉の意味、数字の捉え方、判断の基準まで整理しなければなりません。

同じ言葉でも、意味が違う

たとえば、二つの会社が
ともに「売上」という言葉を使っていたとしても、
その意味が同じとは限りません。

受注した時点を売上とするのか。
納品した時点なのか。
請求した時点なのか。

「顧客」「案件」「原価」「完了」といった言葉も、
会社によって定義が異なります。

この違いを整理しないままシステムだけを1つにすると、
同じ数字を見ているのに、
経営者と現場で理解が食い違うことになります。

システム統合の最初の仕事は、データを移すことではありません。

会社の中で使う言葉と、その意味をそろえることです。

古いシステムには、会社の歴史が残っている

長く使われてきたシステムやExcelには、
その会社なりの事情や工夫が詰まっています。

取引先ごとに異なる請求方法。
ベテラン社員だけが知る確認手順。
過去の失敗を防ぐために追加された入力項目。
お客様の要望に応えるための例外処理。

外から見ると非効率に見えても、
理由があって残っている場合があります。

そのため、
「古いから廃止する」
「買い手側の仕組みに全部合わせる」
と一方的に決めるのは危険です。

残すべき知恵と、見直すべき負担を分けて考える必要があります。

システムの問題は、経営の問題でもある

システム統合の難しさを示す例として、
みずほ銀行の大規模なシステム障害がよく知られています。

銀行と中小企業では、規模も複雑さもまったく異なりますが、
そこから学べることがあります。

システムの問題は、技術だけでは解決できないということです。

誰が全体の責任を持つのか。
何を優先して統合するのか。
現場の不安や危険の兆候を誰が拾うのか。
問題が起きたときに、どこまで戻せるのか。

こうした判断は、システム会社だけに任せられるものではありません。

経営者が理解し、現場と技術者が同じ方向を向いて進めなければ、
統合はうまくいきません。

会社を動かしながら、仕組みを変える

システム統合のもう一つの難しさは、
日々の仕事を止められないことです。

注文は入り続けます。
請求書も出さなければなりません。
給与の支払いも待ってくれません。

会社を動かしながら、その土台を入れ替える必要があります。

だからこそ、すべてを一気に変えようとしないことが大切です。

まず、使われているシステム、Excel、紙の帳票、
保存されているデータを確認していきます。

次に、止まると影響が大きい仕事を把握します。
そのうえで、変える順番を決め、小さく試しながら進めていきます。

必要に応じて古い仕組みと新しい仕組みを並行して動かし、
問題が起きた場合に戻せる方法も用意しておきます。

早く一つにすることより、安全に一つにしていくことが重要です。

必要なのは、経営・現場・技術の通訳

経営者は、会社全体の数字を早く見たいと考えます。
現場は、毎日の仕事を止めたくありません。
システム会社は、技術的に実現できる方法を考えます。

それぞれの考えは正しくても、
使っている言葉や見ている範囲が違います。

そこで必要になるのが、経営、現場、技術の間をつなぐ役割です。

経営者の要望を、現場で実行できる形に変える。
現場の困りごとを、システムの課題として整理する。
技術的な説明を、経営者が判断できる言葉に置き換える。

ICTの支援とは、単にシステムを選び、設定することではありません。

会社が混乱せずに変わっていけるよう、
順番を決め、合意形成をしていくプロセスそのものに
関与していくことでもあります。

統合するのは、システムではなく会社

システム統合の目的は、すべてを同じ画面にすることではありません。

経営者が正しい情報をもとに判断できること。
現場が迷わず仕事を進められること。
お客様への対応を止めないこと。
会社に蓄積された知恵を、次の世代へ引き継ぐこと。

そのために、情報と仕事の流れを合わせていくのです。

会社は契約によって引き継げます。
しかし、会社が本当の意味で一つになるには時間がかかります。

急いで形だけをそろえるのではなく、
働く人の不安を減らしながら、少しずつ仕組みを整えていきます。

システム統合とは、機械を一つにする作業ではありません。

人が安心して働き続けられる会社を、
次の世代へつないでいく仕事なのだと思います。

まとめ

このように、システム統合は、企業統合プロセスの
最も初期から、きちんと検討をしていくべきことなのです。

私たちの団体(一般社団法人IT人財育成フォーラム)では、システム統合の現場に寄り添うことも多いのですが、事業統合の契約がまとまってしまった後に、システム統合に関する想定コストを大幅に超過する見込みが出てきた、というケースが、とても多いです。

どのようにコストを減らしながら、最適な統合をしていくのか
日々現場と向き合っていますが、
ポイントは、現状分析と、言葉の定義や解釈の統一化に
初めに取り組む、ということだと感じています。

そして、次に、効果が高そうな一部分から統合を図る、
という流れが望ましいでしょう。

チームビルディングも兼ねつつ、第三者の伴走支援を受けながら
社内でしっかりグリップして行っていくことも
とても大切です。

これからの時代、ますます事業統合が多くなるでしょう。
あらかじめ、統合しやすい仕組みを作っておく、というのも
企業価値向上策の1つに確実になっていくでしょう。

ですから、統合をすぐに考えていない方も、
まずは自社の業務の洗い出しを進めてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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