夏越の祓~スサノヲノミコトの御神徳を今に伝える茅の輪くぐり~
月日の流れは早いもので、今年も半年の節目を迎えようとしています。
梅雨の訪れとともに、すっきりしない空模様が続き、心なしか沈みがちな日々。
蒸し暑さに手を焼く日々があるかと思えば、ふと訪れるひんやりとした梅雨寒(つゆざむ)。
健やかさを損ないやすいこの季節。
6月の終わりのころ、多くの神社で大きな茅の輪がしつらえられているのを見かけます。
この茅の輪を「8の字」を描くように3回くぐり抜けるのが「茅の輪くぐり」です。
正月から半年の間に、知らず知らずのうちに私たちのからだや心、さらには衣服や家屋などに溜まった罪(つみ)・穢れ(けがれ)。
そして降りかかる災厄を祓い清めます。
そうして、これからの半年の無病息災を祈る行事が「夏越の祓(なごしのはらえ)」です。
また、神社からいただく紙で作られた「人形(ひとがた)」でからだを撫でて、自らの罪・穢れを移し、お祓いをする行事も行われます。
この風習は、厄除けの神様の教えに由来しています。
旅の途中にいらっしゃった神様が、ある日の夕暮れ、宿を借りようとある兄弟の元を訪ねられました。
兄の巨旦将来(こたんしょうらい)は裕福にもかかわらず宿を貸すことを断りました。
一方、弟の蘇民将来(そみんしょうらい)は貧しいながらも神様を温かくお迎えします。
粟の殻で敷物を設け、粟飯にて、心尽くしのおもてなしをしました。
幾年ののち、神様が再び蘇民将来のもとを訪れ、「茅で作った輪を、腰のあたりにつけておきなさい」と告げられました。
その仰せの通りにしたところ、恐ろしい疫病が世に広まったときも、蘇民将来の家族だけは難を逃れることができたのです。
この神様こそスサノヲノミコトであり、「これから疫病が流行るときは、『蘇民将来の子孫である証』に茅の輪を身に着けていれば助ける」と約束されたのでした。
今でも多くの神社の茅の輪や御札に『蘇民将来之子孫也』と書かれているのは、この神様との約束が今も生きているからなのですね。
この物語からスサノヲノミコトが厄除けの神様となり、神さまと仏さまが結びつく(神仏習合)なかで、同じく厄除けの神とされる「牛頭天王(ごずてんのう)」と同じ神さまだと考えられるようになりました。
スサノヲノミコトは都で疫病が流行ったときに祇園社(現在の京都の八坂神社)に祀られました。
八坂神社といえば、千何百年もの歴史がある「祇園祭」が有名ですね。まさに、この厄除けの願いから始まったお祭りなのです。

6月30日を前に、八坂神社へ茅の輪くぐりに行ってきました。
台風の後も「台風一過」とはならず、あいにくの空模様が続いてましたが、お参りしたその日は晴れ渡り、汗ばむほどの暑さとなりました。
本格的な夏が、もうそこまでやってきているかのような一日でした。

茅の輪くぐりでは、お一人ずつ静かに「8の字」を回るのを待ちながら、皆さま順番に並ばれていました。
長い列ができていたのですが、そのおかげで、誰も写らない茅の輪だけの美しい写真をカメラに収めることができました。
そうして茅の輪くぐりを終えて身を清めたところで、本殿へと向かいます。

別棟であった拝殿と本殿を一つの大屋根で覆ったもので、
「祇園造」と称される日本で唯一の貴重な建築様式です。
御祭神:中御座 素戔嗚尊(すさのをのみこと)
東御座 櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)
西御座 八柱御子神(やはしらのみこがみ)
祇園祭では、山鉾巡行によって清められた京の市中を、三基の神輿(みこし)が渡御します。
本殿で日頃の感謝をお伝えしてお参りを済ませた後、次に向かったのは「悪王子(あくおうじ)神社」です。

悪王子神社
(あくおうじじんじゃ)
御祭神:素戔嗚尊の荒魂(すさのをのみことのあらみたま)
悪王子の「悪」とは「強力」の意味であり、荒魂は現実に姿を顕わす、霊験(れいげん)あらたかな神様をあらわしています。
御利益:厄除け 災難除け 諸願成就
日々、お守りしていただいていることに心からの感謝を伝え、最後に足を運んだのは「疫(えき)神社」です。

疫神社
(えきじんじゃ)
御祭神:蘇民将来命(そみんしょうらいのみこと)
御利益:疫病退散
祇園祭の最終日である7月31日に疫神社で行われる「夏越祓」は、一ヵ月に及ぶ祭礼の間に、市中から集まった災厄を祓い清め、安らかに鎮める大切な神事です。
「動く美術館」とも称されるほど、豪華絢爛な山鉾巡行が広く知られていますが、祇園祭の本質は、まさにこの「疫病退散・厄除け」の祈りにあります。
今回の夏越の祓でも、厄除けの締めくくりとして疫神社にお参りをし、清々しい気持ちに包まれながら八坂神社を後にしました。

祇園祭を迎える前の夏越の祓では、京都を中心に、関西では厄祓いや疫病除けに和菓子「水無月(みなづき)」をいただく習わしがあります。
葛や外郎(ういろう)の上に小豆をあしらい、三角形に切り分けたお菓子です。
三角の姿は氷室の氷を、小豆は悪魔払いを表しています。
「水無月」は6月の和風月名でもありますね。

四条南座の西隣で店を構える「祇園饅頭」は、創業文政年間、200年以上の歴史を誇る老舗和菓子店です。
今回、白と黒糖を買い求めました。
程よい甘さで、とても美味くいただきました。
体調を崩しやすく気分もふさぎ込みやすくなるこの時期だからこそ、気分転換に少し足を延ばして「茅の輪くぐり」に出かけることは、心身を健やかに整えてくれます。
また、水無月の小豆には、抗酸化作用や美容効果、便秘解消など、今に通じる健康への知恵がたくさん詰まっています。
遥か昔から連綿と受け継がれてきた、私たちの暮らしに息づいている風習や食文化。
そこには、先人の知恵と祈りが詰まっており、深く心に染み入ります。
この美しい伝統を、私たちも大切に次世代へと紡いでいきたいものですね。
夏越の祓は、新たな気持ちで一年の後半を迎えるための節目。
心身を健やかに、住まいを清々しく整え、そして身だしなみをも正して、素晴らしい残り半年の日々を迎えましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
よくわからずに飛び込んだnoteの世界。
まだまだ慣れないことが多くてままなりませんが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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