【後期作品】フランツ・リストのピアノ曲紹介
この記事では、20世紀にリスト再評価のきっかけとなった後期作品を紹介します。
暗い雲 - 灰色の雲 S.199
リストの後期作品の代表作で演奏される機会も多い。1881年作。ドイツ語の原題を直訳すると「暗い雲」あるいは「陰鬱な雲」となり、フランス語の原題を直訳すると「灰色の雲」となるが、日本語タイトルが定まっていない。レスリー・ハワードによると「ドビュッシーとストラヴィンスキーが敬愛していた作品」とのこと。スタンフォードの音楽学者レオナード・ラトナーは「暗い雲の解決しない不安を煽るような不協和音や近寄りがたさは、後年のマーラーやシェーンベルクとの類似性を認めることができる」と言っている。野本由紀夫氏は「最後から二つ目の和音はスクリャービンの神秘和音と同じ」という指摘もしている。ちなみにトム・クルーズ&ニコール・キッドマン主演のスタンリー・キューブリックの遺作映画「アイズ・ワイド・シャット」でこの曲が使用される。
この演奏はスヴャトスラフ・リヒテル。リヒテル、ブレンデル、ケントナーなどは活動初期からこの曲を取り上げていた。
悲しみのゴンドラ I S.200/1
リスト後期作品の代表作に含まれ、演奏される機会も多い。作曲年は不明だが、リストの死期に近い時期に書かれたと言われている。1927年初版。もともとワーグナーの死を予感した時に着想された。別名「第3エレジー」。曲種としては舟歌ともエレジーとも言える。調性感は希薄。
演奏はマウリツィオ・ポリーニ。
悲しみのゴンドラ II S.200/2
1885年作。この作品を基に「悲しみのゴンドラ I S.200/1」が作られたと推測されている。よってⅠとⅡの作曲された順序はおそらく逆。こちらも演奏される機会が多い。ヴァイオリンとピアノ稿、またはチェロとピアノ稿あり。
アルフレート・ブレンデルはこの曲を2回録音している。
R.W. - ヴェネツィア S.201
R.W.というのはリヒャルト・ワーグナーのこと。1883年にワーグナーの死の知らせを聞き作曲された。
演奏はアルフレート・ブレンデル。
リヒャルト・ワーグナーの墓に S.202
ワーグナーはその舞台神聖祝祭劇「パルジファル」にてリストの合唱曲「ストラスブール大聖堂の鐘」の前奏曲「いと高く!」の主題を拝借しているが、その「いと高く!」の主題で開始する作品。逆に終結部では、リストはワーグナーによる「鐘の動機」を拝借している。1883年作。
演奏はミハイル・ルディ。
凶星! - 不吉 - 厄災 S.208
こちらもリストの後期作品の代表作の一つ。1880年以降に書かれた。生前は周囲に理解されなかった作品。
演奏はマウリツィオ・ポリーニ。
関連作品
悲しみのゴンドラ 〔ヴェネツィア第1草稿〕 S.199a/i
1882年にヴェネツィアのワーグナーをリストが訪ねた際に作曲されたもの。悲しみのゴンドラの初稿。このヴェネツィア草稿は2002年にルッジネンティ社により初版された。後に改訂され「悲しみのゴンドラ 〔第2草稿〕」となる作品。
悲しみのゴンドラ 〔第2草稿〕 S.199a/ii
上記「悲しみのゴンドラ 〔ヴェネツィア第1草稿〕」の改訂稿。1883年に書かれたと思われる。後に改訂され「悲しみのゴンドラⅡ S.200/2」となる。
修正譜 "悲しみのゴンドラ" S.701k
「悲しみのゴンドラ〔ヴェネツィア第1草稿〕」の終盤の改訂案。1882年作。とあるリストの手紙に添付されていたもの。この自筆譜は現在ボローニャのリスト協会で保管されている。
いと高く! - 「ストラスブール大聖堂の鐘」への前奏曲 S.500
カンタータ「ストラスブール大聖堂の鐘 S.6」の前奏曲にあたる部分のピアノ独奏稿。1874年作。その他声楽稿、管弦楽稿など多数あり。詩はロングフェローの「黄金の伝説」より。ロングフェローへ献呈。ハワードの探索の結果、アメリカ議会図書館にてピアノ独奏で演奏できうるこのピアノスコアのコピーを発見。この「いと高く!」の主題をワーグナーはパルジファルで「拝借」(本人の言葉)しているが、リストもそのことは認識していた。そしてリストは後に「リヒャルト・ワーグナーの墓に S.202」でこの「いと高く!」の主題を使用している。
● 楽譜紹介
新リスト全集の楽譜では今回ご紹介した楽曲は以下のものに収録されています
・暗い雲 - 灰色の雲 S.199
・悲しみのゴンドラ I S.200/1
・悲しみのゴンドラ II S.200/2
・R.W. - ヴェネツィア S.201
・リヒャルト・ワーグナーの墓に S.202
・凶星! - 不吉 - 厄災 S.208
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・悲しみのゴンドラ 〔ヴェネツィア第1草稿〕 S.199a/i
それではみなさま良い一日を
