やさしい簿記 第7回:役員報酬の決め方 ー 3期分の試行錯誤で学んだこと
はじめに
前回の第6回では「法人成り」について書きました。うちの場合、売上1000万・所得800万を超えたから法人成りしたわけではなく、国保と所得税の負担があまりに重くて、社保に切り替えたほうが有利だと判断したのが主な動機でした。
法人を作って社保に切り替える、までは良かったのです。問題はその次、役員報酬をいくらにするかでした。
個人事業主の頃は、売上から経費を引いた残りが全部「自分の所得」でした。シンプルです。でも法人になると、会社のお金と自分のお金が別になり、会社から自分へお金を動かすには「役員報酬」という給料を設定する必要がある。しかもこれが、一度決めたら1年間固定という厄介なルールつきです。
私はここで、1期目・2期目とそれぞれ失敗して、3期目にようやく「うちにとってはこれかな」という形にたどり着きました。今回は、その3期分の試行錯誤を正直に書いてみようと思います。同じように法人成りを考えている個人事業主の方の参考になれば幸いです。
目次は次のとおりです。
1. 役員報酬の大原則「定期同額給与」
2. 失敗談:1期目 - 低く設定しすぎて手取り月10万以下の火の車に
3. 失敗談:2期目 - 倍額に上げたら今度は法人が赤字に
4. 3期目:役員報酬+事前確定届出給与の組み合わせ
5. 家族を役員にするという選択
1. 役員報酬の大原則「定期同額給与」
役員報酬を理解するうえで、最初に押さえるべきルールがこれです。
役員報酬は、事業年度の途中で自由に変えられない。
正確には、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決め、そこから毎月同じ金額を払い続ける必要があります。これが「定期同額給与」と呼ばれるルールです。
なぜこんなルールがあるのか
法人と個人事業主の大きな違いの一つは、「法人のオーナー=社長」の場合、会社のお金を自分の裁量で動かせてしまうという点にあり、仮に役員報酬を自由に変えられるとしたらどうなるか。
今期は利益が出そうだから、3月に役員報酬を一気に上げて法人の利益を削ろう
来期は赤字っぽいから、役員報酬を下げて法人に利益を残そう
こんなことをされると、法人税の課税逃れが簡単にできてしまいます。そこで税法は「役員報酬は原則、期中に変更したら損金(経費)として認めないよ」というルールを設けているわけです。
変更できるタイミング
期中に変更できないとはいえ、完全にガチガチではありません。次のタイミングでは変更が認められます。
事業年度開始から3ヶ月以内(通常の改定)
役員の地位や職務内容が変わったとき(臨時改定事由)
会社の業績が著しく悪化したとき(業績悪化改定事由)
普通の会社員の方にはピンとこないかもしれませんが、要するに「役員報酬の金額は、期が始まってすぐに1年分を見通して決めきる」必要があるということです。
これが、まさに私がハマった落とし穴でもありました。
2. 失敗談:1期目 - 低く設定しすぎて手取り月10万以下の火の車に
始まりは「社保にすれば楽になる」という期待
個人事業主として1年が経過したとき、国保の通知と所得税の納付書を見て愕然としました。国保は自治体にもよりますが、所得が上がると容赦なく上がっていきます。しかも国民年金と合わせても、将来もらえる年金は厚生年金に比べると心もとない。
「これは法人成りして社保に切り替えたほうが、負担的にも将来設計的にも有利ではないか」
そう考えて、税理士さんに相談しながら法人成りの準備を進めました。
役員報酬を決めるとき
いよいよ役員報酬を決める段階になって、当時の顧問税理士からこんなアドバイスを受けました。
「その年齢で、あまり高すぎる役員報酬はどうかと思いますよ」
正確なニュアンスはもう覚えていませんが、「まだ若いんだから、いきなり高い役員報酬を取らなくてもいいのでは」という趣旨だったと思います。加えて、私自身が「社保を下げたい」と口にしていたことも影響したかもしれません。
結果、かなり低めの役員報酬でスタートしました。
誤算:家賃は個人契約だった
ここで大きな誤算がありました。
当時住んでいた賃貸住居は、家族の個人名義で契約していたのです。つまり家賃は、役員報酬の手取りから家族に渡して払う必要がある。
役員報酬から社会保険料と所得税・住民税が引かれ、そこから家賃分を出すと、手取りは月10万円以下。これで生活しろと言われても、正直きつい金額です。
さらに追い打ちをかけたのが、前年の個人事業主時代の所得税・住民税です。これは法人成りしても消えません。前年の所得に応じて、納付書が容赦なく届きます。
役員報酬の手取りから家賃を出し、そこから前年分の税金を払い…もう完全に火の車でした。
社宅制度を知る
「これは本当にまずい」と思って、いろいろ調べました。そこで見つけたのが社宅制度です。
仕組みを簡単に言うと、会社が住居を借り上げて役員に貸し、家賃の一定割合を役員が会社に払う、というもの。会社が払った家賃のうち、会社負担分は経費になる。結果的に、役員報酬を上げずに住居コストの大部分を会社に持ってもらえる。
「なんでこれを最初に教えてくれなかったんだ」という気持ちは正直ありましたが、とにかく家族名義だった賃貸契約を法人契約に切り替えて、社宅制度を導入することにしました。
社宅の割合でケンカした話
ところがここで、当時の税理士とひと悶着ありました。
社宅制度では、役員が会社に払う「賃貸料相当額」の計算ルールが決まっています。役員社宅の場合、床面積99平米以下(木造以外の場合)の小規模住宅であれば、固定資産税評価額をベースにした計算式に当てはめると、家賃の10〜20%程度を役員が負担すれば良い、というのが一般的な解釈です。
うちの住居も、これに該当するはずでした。私なりに条文と解説をひととおり調べて、「うちは10〜20%でいけるはずです」と税理士に相談したのですが、返ってきた答えは、
「50%は役員が払ってください」
の一点張り。国税庁のタックスアンサーにも、小規模住宅の計算式は明記されています。それなのに、なぜ50%なのか。理由を尋ねても、「そのほうが安全だから」「税務調査で指摘されないように」といった、根拠を示さない返答ばかり。私は何度か資料を示して相談しましたが、最後までこの50%は譲ってもらえませんでした。
今振り返ると、この「50%」という数字がどこから来たのか、今でも釈然としない気持ちが残っています。安全側に倒すという姿勢は理解できるにしても、条文上はもっと低い割合で足りるはずの制度を、根拠なく厳しく運用するのは、納税者側にとっては単なる損失です。
(※社宅制度の詳細と、この50%問題のその後については別の回でじっくり書きます。なぜ50%と言われ続けたのか、税理士交代後に本来の割合はどうなったのか、もまとめてお話しする予定です)
結局、50%の家賃負担をしながら、社宅制度を導入した状態で1期目を終えました。本来10〜20%で済むはずだったのに50%払い続けたので、手取りは少し楽になったものの、もっと負担を軽くできたはずという悔しさは残りました。
そして法人には利益が残った
もう一つの問題は、役員報酬を低くしたせいで、法人に利益が残りすぎたことです。
役員報酬は会社にとって経費なので、役員報酬を下げると、その分だけ法人の利益が増えます。利益が増えれば法人税も増える。
つまり私は、
個人の手取りは月10万以下で火の車
一方で法人には利益が残って法人税が跳ね上がる
という、個人も法人もしんどいという最悪の状態を1期目に作り出してしまったわけです。
1期目の教訓
振り返ると、役員報酬を決めるときに私が見落としていたのは次の点でした。
住居費をどちらのサイフから出すのかを役員報酬設計の前に決める
前年分の個人税金の支払いを資金繰りに組み込む
社保だけ見て最適化しない。法人に残る利益と法人税もセットで見る
税理士のアドバイスは鵜呑みにせず、自分の生活コストから逆算して納得するまで議論する
特に最後の点。「税理士が言うから」で決めてしまうのは危険です。その税理士は、あなたの生活費も、家賃も、前年の税金の支払いスケジュールも知りません。数字を握っているのは自分自身だということを、1期目で痛感しました。
1期目まとめ
役員報酬:低め(税理士助言+社保を下げたい気持ち)
住居:家族名義の賃貸→途中から法人契約に切替(社宅化)
社宅負担割合:50%(税理士の指示、本来は10〜20%のはず)
結果:個人は手取り月10万以下で火の車、法人は利益残で法人税も増
3. 失敗談:2期目 - 倍額に上げたら今度は法人が赤字に
税理士を変更
1期目の決算が終わるタイミングで、顧問税理士を変更しました。理由は社宅の50%問題だけではありませんが、「この人と一緒に会社を育てていくのは難しい」と判断した、というのが正直なところです。
新しい税理士さんに1期目の決算を見てもらい、2期目の役員報酬を相談しました。
結論、1期目の倍額に設定しました。「さすがに1期目は低すぎたので、倍くらいにしましょう」という流れです。
赤字になった複合要因
2期目を走らせてみてどうなったか。
法人が赤字になりました。
ただ、これは役員報酬を上げたことだけが原因ではありませんでした。2期目はほかにも、法人の支出を増やすイベントが重なっていたのです。
固定資産税が発生する資産を購入した
月額数千円のバーチャルオフィスから、実態のあるオフィスに引っ越した
社宅の引っ越しにも費用がかかった
2期目の途中で社長交代(このあたりは第5章で触れます)
こうした支出が重なったうえで、役員報酬アップに伴う社会保険料の会社負担増が乗っかってきました。売上の伸びも想定より緩やかで、結果的に赤字着地です。
とはいえ、赤字要因の中で一番インパクトが大きかったのは、やはり役員報酬に連動する社会保険料の増加だったと感じています。役員報酬を倍額にすると、会社負担分の社保も同じ比率で増える。ここの重さを、頭では理解していたつもりでも、実数として経験するのはまた別の重さがありました。
赤字が悪いばかりではない、という視点
法人が赤字になること自体は、必ずしも悪いことばかりではありません。法人税の観点では、当期の法人税(均等割を除く)は発生せず、赤字(欠損金)は最大10年繰り越せます。翌期以降に黒字になったとき、その黒字と相殺できるわけです。
ただ、経営者としては気持ちのいいものではありません。そして何より、**「役員報酬は、低すぎても高すぎてもダメ」**という当たり前の事実を、身をもって学ぶことになりました。
低すぎた→高すぎた、の振り子
1期目と2期目の振り子を並べるとこうです。

社保と法人税のトレードオフ
ここで、1期目・2期目の経験を踏まえて、教科書的な整理をしておきます。
役員報酬を「上げる」と何が起きるか
役員報酬が損金(経費)になるので、法人の利益が減る → 法人税が減る
社会保険料の会社負担分も損金になるので、さらに法人の利益が減る
一方で、個人側は給与所得が増えて所得税・住民税が増え、社会保険料の個人負担分も増える
役員報酬を「下げる」と何が起きるか
役員報酬が損金にならない分、法人の利益が増える → 法人税が増える
個人側は給与所得が減るので所得税・住民税が減り、社会保険料の個人負担分も減る
ポイントは、この会社側と個人側が裏表の関係になっていることです。片方だけを見て最適化しようとすると、必ずもう片方で跳ね返ってきます。
役員報酬を決めるときは、次の3つを同時にシミュレーションする必要があります。
社会保険料(会社負担+個人負担)
個人の所得税・住民税
法人税
そしてもう一つ、絶対に忘れてはいけないのが、
自分と家族の生活費
です。いくら税務的に最適な金額を計算しても、それで生活が回らなければ意味がありません。1期目の私はここを完全に軽視していました。
注意:住宅ローンなどを考えている人は要注意
ここで一つ、私の失敗とは別に、これから役員報酬を設計する方に強くお伝えしたい注意点があります。
近い将来、住宅ローンなど銀行借入を予定している方は、社保を下げたいからという理由だけで役員報酬を下げないほうがいいです。
住宅ローンの多くは、「月々の返済額が月収の1/3以内に収まる範囲」で借入可能額が決まります。役員報酬を低く設定していると、この月収基準で見たときに、本来借りたい額を借りられない可能性が出てきます。
私自身は、これから住宅ローンを組む予定も、車のような大きな買い物をする予定もなかったので、3期目は思い切って役員報酬を下げることができました。でも、事情は人それぞれです。
近い将来、住宅ローンを組む可能性があるか
クレジットカードの限度額や事業融資の枠で困りそうか
家族が扶養の範囲を気にする必要があるか
このあたりを役員報酬を決める前に棚卸ししておくことを、強くおすすめします。
2期目まとめ
役員報酬:1期目の倍額(税理士助言で揺り戻し)
その他の支出:固定資産購入、バーチャル→実オフィス、社宅引越、社長交代の諸費用
結果:複合要因で法人が赤字(一番重かったのは役員報酬アップ→社保増)
学び:低すぎても高すぎてもダメ。会社側と個人側は裏表の関係
4. 3期目:役員報酬+事前確定届出給与の組み合わせ
2期目の反省を経て
2期目の決算を見ながら、3期目の役員報酬をどうするか、新しい税理士さんとじっくり相談しました。
条件はこうです。
社保は上げすぎたくない(毎月の役員報酬はそこそこに抑えたい)
でも、手取りが少なすぎて火の車になるのも困る
法人にも利益は残したいが、残りすぎて法人税で持っていかれるのも避けたい
年によって業績がブレるので、業績を見て調整できる仕組みが欲しい
これを満たすのが、役員報酬(定期同額給与)+事前確定届出給与(決算賞与)の組み合わせでした。
事前確定届出給与とは
定期同額給与と並ぶ、もう一つの役員報酬の形です。ざっくり言うと、役員にもボーナスを出せる仕組み。
ただし、普通の従業員のボーナスと違って、次のルールがあります。
あらかじめ税務署に「この日に、この金額を払います」と届け出る
届け出た金額・支給日と1円・1日でもズレたら全額アウト(損金不算入)
届出期限は、株主総会の決議日から1ヶ月以内、または事業年度開始から4ヶ月以内(いずれか早い日)です。
なぜこの形にしたか
毎月の役員報酬を抑えめにすると、毎月の社会保険料を抑えられます。社保は月額報酬をもとに計算される部分が大きいので、ここの効果は無視できません。
一方で、年間トータルで見ると手取りが少なすぎるので、決算期前後に事前確定届出給与で賞与を出す形にしました。
例えばですが、
毎月の役員報酬:控えめに設定
事前確定届出給与:年1回、決算月に支給
という形です。
メリットと、シビアな注意点
この組み合わせのメリットは、
毎月の社保を抑えられる
賞与部分の社保には上限があるため、年間で見ると社保負担を抑えられるケースがある
年1回の賞与で、年間の手取り総額を確保できる
一方、注意点がいくつかあります。
業績悪化で「払えません」となったら、全額損金不算入になる可能性
届け出た金額より1円でも多く/少なく払ったらアウト
支給日が1日でもズレたらアウト
特に最後の2点は、銀行振込のタイミングひとつで詰む世界です。うちも3期目はヒヤヒヤしながら運用しています。
3期目の現状と、目下の課題
3期目の着地はまだ見えていませんが、今のところは、
毎月の役員報酬は2期目より下げた(社保を抑えるため)
事前確定届出給与を届出済み(決算賞与として出す予定)
社宅制度は継続(割合も適正化)
という形で走っています。
ただ、この組み合わせが「うちにとっての最適解」かどうかは、3期目を終えてみないとわかりません。事前確定届出給与自体が私にとっては初めての運用なので、「想定どおりに回るか」は、決算を迎えて初めて答え合わせができることです。
2期目が赤字だったので、3期目が黒字で着地しても、欠損金との相殺で法人税の負担はそれほど重くならない見込みです。ただ、別の悩みとして、3期目から消費税の課税事業者になったため、消費税の支払いが発生します。この消費税の資金繰りをどうするかが、目下の課題です。
(※消費税については、いずれ別の回でまとめて書きます)
1期目・2期目のような極端な失敗は、今のところ避けられている感覚ですが、油断はできません。決算が終わったら、また振り返って書こうと思います。
3期目(進行中)まとめ
役員報酬:2期目より下げ、毎月の社保を抑制
事前確定届出給与:届出済(決算賞与として支給予定)
社宅制度:継続(割合は適正化)
法人税:欠損金繰越で相殺見込み
目下の課題:消費税の課税事業者化に伴う資金繰り
5. 家族を役員にするという選択
最後に、役員報酬のもう一つの論点として、家族を役員にするという手に触れておきます。これは私自身が、まさに当事者として経験した話です。
所得分散の発想
所得税は累進課税です。同じ年間600万円を一人で受け取るのと、二人で300万円ずつ受け取るのとでは、後者のほうが所得税・住民税の合計が安くなるのが普通です。
役員が複数いれば、役員報酬を分散させることで、家族トータルの税負担を下げられる可能性があります。
1期目の途中でサラリーマンを辞めた
うちの会社は、もともと家族が個人事業主として起業して法人成りした流れでした。法人成りの時点で私はまだサラリーマンをしていて、家族の会社の役員にはなっていませんでした。
ところが1期目を走らせてみると、先ほど書いたとおり法人に利益が残りすぎて法人税が重くなるという問題が見えてきました。役員報酬を増やして法人の利益を削りたいのですが、家族一人の役員報酬を大きく上げると、今度は個人の所得税の累進で持っていかれる。
そこで思い至ったのが、役員を増やして役員報酬を分散させるという発想でした。
ただ、これをやるには私が役員として報酬を受け取る必要がある。サラリーマンをしながら役員報酬を受け取ることも制度上は不可能ではありませんが、副業規定や本業への影響、そもそも両立の時間的な厳しさを考えると、現実的ではありませんでした。
最終的に、1期目の途中でサラリーマンを辞めて、家族の会社の役員に専念するという決断をしました。法人税対策と、家族の事業を本気で大きくしていきたいという気持ちの両方からくる選択でした。
2期目の途中で社長交代
その後、2期目の途中で、家族から私に社長を交代しました。理由としては、取引先や金融機関に対する対外的な窓口を私に一本化したかったことと、家族は本業に専念したいという意向があったこと、この2つが大きかったです。役員構成と経営の実態を合わせていく過程での、自然な交代でした。
会社の登記変更、銀行口座や契約類の代表者変更、各種届出の書き換えなど、社長交代は思っていたよりも事務作業が多いイベントでした。先ほど2期目が赤字になった複合要因の中に「社長交代」を挙げましたが、その周辺でオフィスの引っ越しや社宅の引っ越しなど、支出が重なったのもこのタイミングです。
雇用保険に入らない論点
役員になると、基本的に雇用保険には加入しません。
メリット:雇用保険料の負担がない
デメリット:失業給付を受け取れない
私の場合、サラリーマンを辞めて自分の会社の役員になったので、「失業給付を受け取れない」という点は気になりました。ただ、自分の会社を経営していく以上「失業する」という概念が成立しにくいので、実質的なデメリットは小さいと判断しています。
親族役員の注意点
「家族を役員にすれば節税できる!」と単純に飛びつくのは危険です。税務署はここをよく見ています。
確認される主なポイントは次の2つ。
実態があるか⇒その家族は、本当に役員としての職務を果たしているか
報酬の金額は適正か⇒職務の実態に対して、報酬が高すぎないか
名前だけ役員にして、実際は何もしていないのに高額の報酬を払っている、というのは否認されるリスクが高い。必ず、
役員としての職務内容を明確にする
株主総会や取締役会で正式に選任し、議事録を残す
業務の実態を記録する(打ち合わせメモ、業務日報など)
このあたりを地道に積み上げておく必要があります。
まとめ
今回の内容を一枚で振り返っておきます。
役員報酬は定期同額給与が原則。期が始まったら3ヶ月以内に決めて、1年間固定
役員報酬を決めるときは、社保・所得税・法人税・生活費の4つを同時に見る
【1期目】低く設定しすぎて手取り月10万以下の火の車 → 法人にも利益が残って法人税が跳ねた
【2期目】倍額に上げた+固定資産購入+オフィス移転+社宅引越などの複合要因で法人が赤字に
【3期目】毎月の役員報酬は抑えめに、事前確定届出給与で決算賞与を出す組み合わせで走行中(最適解かどうかは着地して初めて分かる)
住宅ローン等の借入予定がある人は、社保対策だけで役員報酬を下げると借入枠に響くので要注意
家族を役員にする手もあるが、実態と適正報酬が必須。私自身は法人税対策も兼ねて、1期目途中でサラリーマンを辞めて役員就任、2期目途中で社長交代という経緯をたどった
3期分の試行錯誤を振り返って一番大きな学びは、「役員報酬に唯一の正解はない」ということでした。同じ売上・同じ家族構成でも、生活スタイル・事業フェーズ・家賃・前年の税金負担・将来の資金計画など、個別事情で最適解が変わります。
それから、税理士のアドバイスを鵜呑みにしないこと。これは私の反省でもあります。税理士は税務のプロですが、あなたの家計のプロではありません。数字を握っているのは自分自身です。納得できるまで質問して、納得できなければセカンドオピニオンを取る。これは大事だなと、1期目・2期目を経て痛感しました。
1期目で火の車、2期目で法人赤字、という二段階の授業料を払ったわけですが、この失敗があったからこそ、数字の見方が一段深くなったとも思っています。同じ失敗をしなくて済む方が一人でも増えるなら、恥を忍んで書いた甲斐があるというものです。
次回(第8回)は、今回チラッと出てきた「社宅制度」をもう少し深掘りして、家賃負担の割合や、経費にできる範囲について書く予定です。当時の税理士と最後までケンカした50%問題の顛末も、そこで書きます。
では、また次回。
このシリーズは、フリーランス・個人事業主・簿記初心者の方に向けて、経理と税務のリアルをやさしく解説することを目指しています。記載内容は私個人の経験と理解に基づくもので、税務判断は必ず顧問税理士にご相談ください。
