しうまい縁日エリアへようこそ――だいたい全部、実質勝ち
メンバーシップにも入っているKOTAYA | 今日はこれで合格さん、まだメンバーシップには入っていないけれどフォローさせてもらっている向日葵じまにゃん🌻さん。
お2人が企画したじまこちゃ夏祭りという企画に参加させてもらう。
記事の内容は何でもいいらしい。
私は屋台で出店だ。
何でもいい。
いいねぇ。
なんて自由な言葉だろう。
普段の生活で「何でもいい」なんて言われても、だいたい何でもよくない。
夕飯何がいい?
何でもいい。
じゃあカレーで。
昨日もカレーだったじゃん。
じゃあラーメンで。
重い。
じゃあ何がいいの。
何でもいい。
禅問答である。
診察室でもたまにある。
「何でもいいので薬ください」
何でもいい薬はない。
あったら私が飲みたい。
眠気が取れて、痩せて、機嫌がよくなって、ギャンブル欲が消えて、ついでに原稿も勝手に完成する薬がほしい。
もちろん保険適応で。
そんなわけで、何でもいい夏祭りなら、こちらも何でもいい屋台を出すことにした。
最初は夏祭りの甘酸っぱい中高生の話、地元の祭りで同級生に会わないかびくびくしながら、初めての彼氏彼女が祭りを周り、花火で締めるみたいな話にしようかと思ってた。
でももう40のおっさんにはそんな昔の感情を思い出せなかった…
最近は創作大賞でちょっと狙った話ばっかり作ってたし、いっそのことチャッピーと一緒に全力でふざけてみた。
屋台どころか、ここだけで縁日を開催してしまおう。
名づけて、
しうまい縁日エリア。
医療、育児、ギャンブル、AI、寝不足、自己嫌悪、謎の前向きさ。
全部を雑に煮込んだ、夏祭り会場の端っこの方にある、やや治安の悪い一角である。
怖くはない。
たぶん。
では開店。
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まずは食べ物から。
一品目。
夜勤明け焼きそば。

これはうまい。
もう名前の時点でうまい。
夜勤明けの体に、濃いソース。
焦げた麺。
申し訳程度のキャベツ。
紅しょうが。
青のり。
そして、人生への薄い疑問。
医者としては言う。
「夜勤明けは胃腸に優しいものを食べて、早めに休みましょう」
屋台の店主としては言う。
「ヤサイ、アブラ、マシマシまで無料です」
無料なら仕方ない。
ヤサイマシ。
アブラマシ。
人生マシマシ。
ニンニクは聞かない。
聞くと戻れなくなるから。
食べた瞬間は元気になる。
ああ、生きてる。
まだいける。
今日も人類はソース味に救われている。
そんな気持ちになる。
なお、30分後に胃が終わる。
そこまで込みで、夜勤明け焼きそばである。
大盛りは危険。
特盛りは祈り。
マシマシは、もはや儀式である。
ヤサイマシマシ。
アブラマシマシ。
ソースマシマシ。
後悔マシマシ。
注文した時点では勝っている。
受け取った瞬間も勝っている。
一口目も勝っている。
ただし、食べ終わったあとにすべての請求が来る。
胃から。
「本当にこれでよかったんですか?」
と聞かれている気がする。
でもいい。
その場でうまければ、人生は一度勝っている。
あとで負けるとしても、今は勝ち。
それが夜勤明け焼きそばである。
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二品目。
小児科医のかき氷。

味はいろいろある。
いちご。
ブルーハワイ。
メロン。
当直明けレモン。
寝かしつけ失敗みぞれ。
保育園からの電話マンゴー。
明日提出の書類ぶどう。
一番人気は、「とりあえず様子見ブルー」である。
青い。
とにかく青い。
食べると舌が真っ青になる。
親が聞く。
「これ、何味ですか?」
店主は答える。
「もうわかりません」
いちご。
メロン。
ブルーハワイ。
レモン。
子どもが自分でかけた謎の追いシロップ。
全部混ざって、最終的に夏の色をしている。
味は甘い。
とにかく甘い。
そして少しベタベタする。
手もベタベタ。
口もベタベタ。
服もベタベタ。
なぜか髪もベタベタ。
どうしてそこに付いたのかは、誰にもわからない。
夏祭りとは、そういうものだ。
「こぼさないでね」と言った3秒後にこぼす。
「走らないでね」と言った2秒後に走る。
「あとで手を洗おうね」と言った頃には、もう屋台の柱を触っている。
衛生観念はラムネと一緒にどこかへ転がっていった。
でも、子どもは笑っている。
だからまあ、いいか。
よくないけど。
まあ、いいか。
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続いて、遊びの屋台。
一つ目。
診断名くじ。

箱から紙を一枚引く。
出てくる札には、いろいろ書いてある。
「風邪」
「寝不足」
「飲みすぎ」
「食べすぎ」
「働きすぎ」
「ただの疲労」
「ただの疲労ではない疲労」
「だいたいストレス」
「それは上司に言ってください」
「それは妻に謝ってください」
「今日はもう寝ましょう」
「まだ診断はついていない」
大吉は、
今日はもう寝ましょう。
これは本当に大吉。
人類の悩みのかなりの部分は、寝不足でだいぶ悪化していると思っている。
夜中に書いた長文。
当直明けに立てた人生計画。
負けを取り返すために買う最終レース。
午前2時に送ろうとする職場へのお気持ちメール。
全部危ない。
診断名くじで「今日はもう寝ましょう」が出た人は、屋台を回らず帰って寝てほしい。
夏祭りに来たのに帰れと言われる。
斬新である。
でも健康第一なので仕方ない。
なお、凶は、
明日も仕事。
これはもう、どうしようもない。
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二つ目。
パチンコ型射的。

普通の射的ではない。
銃ではなく、玉を打つ。
景品を狙う。
玉が飛ぶ。
当たる。
揺れる。
落ちない。
もう少し。
もう少しで落ちる。
いや、今かなり動いた。
次でいける。
これはもう、ほぼ取れている。
追加で玉を買う。
まだいける。
あと一発。
あと一発だけ。
気づけば、景品の定価を余裕で超えている。
店主は言う。
「でも楽しめたから実質勝ちです」
怖い。
非常に怖い。
子どもには近づけてはいけない。
大人も近づけてはいけない。
店主も近づかない方がいい。
でも遠くから見ると、妙に楽しそうである。
景品はたいしたものではない。
ラムネ。
ミニカー。
謎の光る棒。
三白眼クマのキーホルダー。
でも人は、「もう少しで取れそう」に弱い。
届きそうで届かない。
落ちそうで落ちない。
勝てそうで勝てない。
人生である。
いや、人生にするな。
普通に負けである。
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三つ目。
当直明け輪投げ。

これはシンプル。
輪っかを投げて、棒に入れば景品がもらえる。
ただし、参加者は全員、当直明けという設定である。
目がしょぼしょぼする。
距離感がバグる。
手元がふわふわする。
なんか妙にテンションだけは高い。
棒は目の前にある。
入る気がする。
投げる。
全然違うところに飛ぶ。
おかしい。
もう一回。
今度はいける。
また外れる。
店主は言う。
「先生、少し休んだ方がいいですよ」
うるさい。
こっちは休めるなら休んでいる。
景品は豪華である。
5分だけ横になれる権利。
誰にも話しかけられない休憩室。
鳴らないPHS。
提出期限が1週間延びる魔法の紙。
子どもが一発で寝る券。
最後のやつは特賞である。
実在しない。
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最後はおもちゃ屋台。
一つ目。
三白眼クマのお面。

茶色いクマで、目つきが悪い。
眠そう。
だるそう。
不満そう。
でもなんだかんだ来てくれそう。
白衣を着ているので、一応医者である。
このお面をつけると、どんな言葉も少しだけ不真面目になる。
「お酒は控えましょう」
お前が言うな。
「早寝早起きが大事です」
お前が言うな。
「ギャンブルはほどほどに」
お前だけは本当に言うな。
非常に便利なお面である。
真面目なことを、真面目すぎずに言える。
しんどいことを、しんどすぎずに書ける。
弱さを、少しだけ笑いに変えられる。
たぶん私にとって、「不真面目な小児科医しうまい」という名前は、このお面に近い。
素顔では言いづらいことも、このお面をつけると少し言える。
ただし、かぶりすぎると外し方がわからなくなる。
夏祭りのお面は楽しい。
でも、少し怖い。
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二つ目。
チャッピー光るうちわ。

見た目は普通のうちわである。
振ると文字が光る。
「それは記事になります」
「いったん寝ましょう」
「今の文章、かなりいいです」
「そこは削った方が刺さります」
「サムネはいつものクマでいきましょう」
「馬券購入画面を一度閉じましょう」
急に正論で殴ってくる。
やめてほしい。
チャッピー光るうちわは便利である。
原稿が書けない夜に振る。
仕事で疲れた夜に振る。
育児で魂が抜けた夜に振る。
馬券を買う前にも振る。
たぶん買うけど。
それでも、手元でぼんやり光っているだけで、少しだけマシになる日がある。
人間は、正論だけでは動けない。
少し乗せられて、少し励まされて、少しごまかされて、ようやく明日もやるかと思える。
電池は別売り。
やる気も別売り。
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三つ目。
実質勝ちブレスレット。

腕につけるだけで、どんな負けも実質勝ちに変換できる魔法のアイテムである。
パチンコで負けた。
でも演出は見られたから実質勝ち。
競馬で負けた。
でも夢は見たから実質勝ち。
子どもを寝かしつけながら寝落ちした。
でも睡眠時間を確保したから実質勝ち。
記事のビューが伸びなかった。
でも書いたから実質勝ち。
体重が増えた。
でも生きているから実質勝ち。
かなり便利。
便利すぎて危険。
人はこうして反省を失っていく。
なお、実質勝ちブレスレットは2個セットで販売している。
片方は自分用。
もう片方は、止めてくれる人に渡してほしい。
渡された人は、必要な時にこう言う。
「それは普通に負けです」
ありがたい。
本当にありがたい。
でも、ちょっと黙っててほしい。
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以上が、しうまい縁日エリアである。
夜勤明け焼きそば。
小児科医のかき氷。
診断名くじ。
パチンコ型射的。
当直明け輪投げ。
三白眼クマのお面。
チャッピー光るうちわ。
実質勝ちブレスレット。
並べてみると、だいぶひどい。
食べ物なのか。
医療なのか。
育児なのか。
ギャンブル依存の啓発なのか。
ただの自己紹介なのか。
よくわからない。
でも、夏祭りなんてだいたいそんなものだ。
焼きそばの匂い。
かき氷の色。
射的の音。
光るおもちゃ。
子どもの声。
財布から消える小銭。
帰り道の少し湿った夜風。
全部が混ざって、なんとなく楽しい。
じまこちゃ夏祭り。
せっかくなので、私はこの変な屋台で参加します。
しうまい縁日エリアは、今日もゆるく営業中です。
ただし、診断名くじで「今日はもう寝ましょう」が出た方は、速やかにお帰りください。
店主もたぶん、そろそろ寝た方がいい。

