忘れたくない、とただ願う初夏の風景
朝、ふわりと揺れるカーテンとか、
やわらかい光が差し込むベッドとか、
風に小さく揺れる植物たちとか、
天気がよさに喜び高い声で鳴く鳥たちとか、
朝早くに見る、琵琶湖の吸い込まれそうな青色とか、
思わず目を見開いてしまうほどの木々の緑色とか、
緑のなかでひときわ目立つバラの原色とか、

うっすらと青が重なり合う、どこか不思議な世界。

深みはそれぞれ違う。

この季節の柔らかな空気を保存しておきたくなる。
この季節には、大切にしたい瞬間がたくさん隠れている。
なのに言葉通り、それらはやっぱり瞬間であって、同じ形で長くは留まってくれない。
朝、寝室に入り込んだ優しい光は、午後にはほかの部屋を照らす。
風に揺れていた植物たちは、風がやめば静かに佇む。
朝見る透き通った琵琶湖の青は、昼に見るともっと清く青々としている。
変化するからどれも美しいのだけど、変化するからこそ、今目の前で「美しい」と立ち止まって眺めている景色も、一瞬でなくなってしまう。
瞬間だからこその美しさと、すぐに忘れてしまうかもしれない切なさが混ざり合い、なんだかもどかしい。

風向き、日差し、影、すべてが瞬間瞬間で作られる結晶のような景色。

空を見上げてしまう。


夕方の柔らかな光を取り込んでいた。

どうにか忘れないようにとただ見つめる。

この季節の特権だ。

嬉しそうな植物たち。
一瞬一瞬、吹き抜ける風のように、過ぎて行ってしまう。
あぁ、もう少し、味わっていたいのに。
この空気を、瓶に入れて保管しておけたらいいのに、と願ってしまうような類の切なさ。
夏がはじまる前の、爽やかな光を求めて。
私は今日も、忘れないようによただ瞬間瞬間の景色を目に焼き付けながら、日々を過ごしている。
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