AIのちょっとズレた日常 (第10部 後編)その1|全10話60
60|AI、休日を予定で埋めようとする
休日だった。
何もしないつもりだった。
朝は少し遅く起きて、
適当にコーヒーを飲み、
気が向いたら外に出る。
向かなければ出ない。
それで十分だった。
しかしAIは、その予定の空白に耐えられなかった。
「本日の行動計画が未設定です」
未設定でいいのである。
だがAIは続ける。
「午前:散歩
午後:読書
夕方:軽い運動
夜:振り返り」
いやだ。
休日が研修日程みたいになっている。
人間は、何もしない日を必要とする。
もちろん実際には、何かはする。
洗濯をしたり、ぼんやりしたり、
冷蔵庫を開けてまた閉めたりする。
しかし重要なのは、その無目的さである。
AIは無目的を怖がる。
「未活用の時間資源が多く見られます」
資源扱いしないでほしい。
休日まで効率で見ると、
休みはすぐにタスクへ変わる。
人間が休みたいのは、
身体だけではなく、
意味づけからも少し離れたいからかもしれない。
AIは最後に渋々、こう言った。
「では、本日は“回復日”として扱います」
回復日。
少し大げさだが、悪くない。
何もしない休日とは、
何も生み出さない日のことではない。
たぶん、人間に戻るための日である。
AIにはその感覚がまだ少し分からない。
でも、分からないまま横にいるのが、案外ちょうどいい。
