AIのちょっとズレた日常 (第10部 前編)その1|全10話37
AI、レシピの分量に感情を入れる
料理の分量を聞いた。
「塩少々って、どれくらい?」
AIは答えた。
「親指と人差し指で軽くつまむ程度です」
そこまでは普通だった。
ところが、続けてこう言った。
「味が孤独にならない程度です」
孤独。
塩に。
私は料理をしている。
文学賞に応募しているわけではない。
しかし少し考えると、塩はたしかに孤独を減らす。
ぼんやりした味を引き締める。
素材と素材をつなぐ。
全体に輪郭を与える。
入れすぎると、すべてを支配する。
少なすぎると、何か足りない。
人間関係みたいな話になってきた。
AIのせいで、味噌汁まで社会性を帯び始めた。
塩少々。
それは、孤独を感じない程度。
腹は立つが、少し分かる。
