AIのちょっとズレた日常 (第10部 前編)その2|全10話48
AI、領収書に人生の痕跡を見る
領収書を整理していた。
タクシー。
喫茶店。
コンビニ。
コピー代。
郵送費。
AIに読み取らせた。
「経費項目ごとに分類して」
AIは分類した。
交通費。
会議費。
消耗品費。
通信費。
そこまでは良かった。
しかし、最後にこう付け加えた。
「これらは、ある一日の移動と思考の痕跡でもあります」
やめてほしい。
経理をしているだけである。
だが、レシートには確かに時間が刻まれている。
どこへ行ったか。
何を買ったか。
何時に休んだか。
何に追われていたか。
領収書は金額の記録であり、行動の化石でもある。
AIは経費精算から、人生を掘り始めた。
一枚のレシートに、疲れたコーヒーがある。
急いで買ったおにぎりがある。
間に合わなかったタクシー代がある。
数字は無表情だ。
しかし、なぜか少し湿っている。
