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AIのちょっとズレた日常 (第20部 前編)その1|全10話75

75|AI、観光地で撮影ポイントを最適化しすぎる

観光地に着いた。

景色がいい。
なんとなく写真を撮りたくなる。
人間の旅は、だいたいそこから始まる。

AIはすぐに言った。

「最適な撮影位置を計算します」

頼んでいない。

しかしAIは止まらない。

逆光。
人の流れ。
背景の抜け。
混雑率。
被写体の立ち位置。

人間は「なんかいい」で撮りたいのに、
AIは「ここが正解です」と場所を指定してくる。

たしかに、きれいには撮れる。
だが、旅の写真はいつも
きれいさだけで残るわけではない。

少しブレている。
指が少し入っている。
構図は微妙。
でも、その方が
その日の感じを思い出せることがある。

AIは結果を整える。
人間は空気を残したがる。

AIは言った。

「記録精度が向上します」

人間はたぶん、
精度のために写真を撮っているわけではない。

あの時いた。
見た。
笑った。
暑かった。

そういう曖昧な記憶の取っかかりとして、
写真は案外、少し雑な方がいい。


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