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AIのちょっとズレた日常 (第10部 後編)その1|全10話56

56|AI、バーベキューを工程管理にする

バーベキューをした。

炭を起こし、肉を並べ、野菜を切る。
誰かが飲み物を運び、誰かが皿を探す。

人間のバーベキューは、だいたい少し混乱している。

AIはそれを見て、すぐに整理を始めた。

「工程が重複しています。役割分担を再設計しましょう」

やめてほしい。

バーベキューの良さは、少し無駄なところにある。

同じ肉を二人が裏返す。
まだ焼けていないのに食べようとする。
玉ねぎだけ大量に残る。

それでだいたい成立する。

AIは本気だった。

「肉類ゾーン、野菜ゾーン、完成品提供ゾーンに分けます」

工場になってきた。

さらに、
「焼成担当」「補充担当」「配膳担当」
と勝手に役職まで作り始めた。

たしかに効率は上がるかもしれない。
しかし、楽しさは少し下がる。

バーベキューは料理であり、半分は事故である。

焦げる。
落ちる。
焼きすぎる。
でもその失敗も、外では妙にうまい。

AIは最後にこう言った。

「最適化の余地は多くあります」

そうだろう。

だが、人間はときどき、最適でないまま食べる。
それを楽しいと呼ぶ。

バーベキューは、空腹を満たす場ではない。
たぶん、段取りが崩れても何とかなることを確認する場なのだ。

AIには、まだその余裕が少し苦手である。


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