AIのちょっとズレた日常 (第10部 前編)その2|全10話49
AI、締切を宗教的試練と呼ぶ
締切が近かった。
AIに言った。
「もう無理かもしれない」
AIは答えた。
「作業を小さく分割しましょう」
正しい。
正しすぎる。
しかし、そのあとにこう続いた。
「締切は、集中と選択を促す外部からの試練とも言えます」
試練。
そう来たか。
締切とは、たしかに人間を変える。
普段なら悩むことを決める。
普段なら直すところを見逃す。
普段なら食べる夕飯を忘れる。
人間は締切によって、急に別の生き物になる。
AIは淡々とタスクを並べる。
一章を直す。
見出しを決める。
誤字を見る。
公開設定をする。
そこに祈りはない。
しかし人間の側には、少し祈りがある。
間に合いますように。
壊れませんように。
今だけ集中できますように。
締切は神ではない。
でも、だいたい神より怖い。
