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料理の向こう側 CASE 14

♦️前書き



最近、Keigoくんと、
グミの話になった。

海外のHARIBOって、
ずっと“グニッ”としている。

弾力そのものを楽しむ感じだ。

でも日本のグミって、
少し違う。

最初は硬いのに、
噛んでいくと、
食感が変わる。

酸味が広がって、
香りが抜けて、
最後にすっと消えていく。

Keigoくんが、
ぽつりと言った。

「日本人って、“どれだけ硬いか”じゃなく、“どう変化するか”を食べてる気がするんだよな」

その瞬間、
ミリムの中で、
うどんも、
蕎麦も、
天ぷらも、
和菓子も、
全部繋がった。

あぁ。

日本人って、
”だけで食べてないんだ。


♦️第1章
「日本のグミって、なんか違う」


Mirim
「そういえばさ、Keigoくん。海外のHARIBOって、ずっと硬いよね」


Keigo
「あぁ。あれは弾力そのものを食べる感じだな。輸送しても崩れにくいし、世界中どこでも同じ品質を維持できる」


Mirim
「グニッ……って感じだよね。ずっと同じ食感が続く感じ」


Keigo
「Welch's系も近いな。弾力とか果汁感を、最後まで長く維持する方向だ」


Mirim
「でも日本のハードグミって、少し違うよね。カンデミーナとか忍者めしって、最初は硬いのに途中で変わる」


Keigo
「変わるな。崩れて、酸味が出て、香りが抜ける。日本のグミって、“硬さ”を食べてる感じじゃない」


Mirim
「噛んでる途中が、どんどん変わっていく感じある」


Keigo
「そこなんだよ。日本のグミって、“噛み心地の変化”を設計してる」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「コロロなんて、かなり極端だぞ。あれ、果汁感じゃなく、“果実感”を作ろうとしてる」


Mirim
「たしかに。あの皮っぽい感じ、普通のグミと全然違う」


Keigo
「日本って、“柔らかい”“硬い”だけで終わらないんだよ。最初に歯が入る感覚、途中の崩れ、最後の消え方まで作り込む」


Mirim
「なんかもう、小さい料理みたいだね」


Keigo
「たぶん近い。日本人って、昔から“どれだけ硬いか”より、“どう変化するか”を見てる気がするんだよな」


Mirim
「うどんのコシとか?」


Keigo
「蕎麦の歯切れもそうだな。ラーメンも、“硬い麺”っていうより、“どう切れるか”を見てる」


Mirim
「たしかに……。“モチモチ”と“歯切れがいい”を両方求めたりするよね」


Keigo
「しかも日本人、それを普通に言語化するからな」


Mirim
「……あぁ。だから擬音語、多いのか」


Keigo
「たぶん、“違い”を感じ取れてしまうんだろうな」


Mirim
「なんかさ、日本人って、“”だけで食べてない気がしてきた」


Keigo
「むしろ、口の中で起きる変化そのものを食べてる感じあるな」


♦️第2章
「日本人は“歯切れ”を食べている」


Mirim
「でもさ、“どう変化するか”って、そんなに日本っぽいかな?」


Keigo
「かなり日本っぽいと思うぞ」


Mirim
「例えば?」


Keigo
「うどん」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「日本人って、うどんを“硬い”“柔らかい”だけで語らないだろ」


Mirim
「“コシ”って言うよね」


Keigo
「しかもあれ、単純な弾力じゃない。歯が入って、押し返して、最後に切れる。その流れ全部で、“コシ”って言ってる」


Mirim
「たしかに、“硬い”とは違うね」


Keigo
「讃岐うどんなんて特にそうだな。ただ硬いだけなら、あそこまで人気にならない」


Mirim
「“押し返してくる感じ”を楽しんでるんだ」


Keigo
「しかも最後は、ちゃんと切れないとダメなんだよ。ずっとゴムみたいに残ると、日本人は嫌がる」


Mirim
「……あぁ。たしかに、日本人って“歯切れ”って言葉、よく使うね」


Keigo
「蕎麦なんて、その極端な例だな。“どう切れるか”を見てる」


Mirim
「海外だと、“chewy”とか、“soft”とか、もっと単純な感じあるよね」


Keigo
「日本人って、“噛んだ瞬間”を異常に気にするんだよ。ラーメンも、“硬麺”が好きなんじゃない。“麺の切れ方”を見てる」


Mirim
「博多ラーメンの“バリカタ”とかも?」


Keigo
「そう。でもあれも、ただ硬ければいいわけじゃない。粉っぽいだけだと嫌われる」


Mirim
「たしかに。“歯切れがいい”と、“芯が残ってるだけ”って違うもんね」


Keigo
「日本人って、麺がどう切れて、どう香って、どう流れるかを見てるんだよ」


Mirim
「なんか、“のどごし”って言葉も、日本っぽいかも」


Keigo
「かなり日本っぽいな。啜った時の流れとか、飲み込む感覚まで見てる」


Mirim
「餅も近いね。ただ柔らかいんじゃなく、“どこまで伸びるか”を気にする」


Keigo
「天ぷらもそうだぞ。“サクサク”だけじゃない。“サクッ”としたあと、衣がどう消えるかを見てる」


Mirim
「……なんか日本人、“途中”を食べてるね」


Keigo
「そこなんだよ。“状態”じゃなく、“変化”を食べてる感じなんだ」



♦️第3章
「“サクッ”は味なのか」


Mirim
「でもさ、日本人って、なんでこんなに擬音語多いんだろうね」


Keigo
「たぶん、“違い”を感じ取れてしまうからだろうな」


Mirim
「サクサク、ザクザク、パリパリ、バリバリ……。全部ちょっとずつ違うもんね」


Keigo
「海外だと、“crispy”とか、“crunchy”でまとめられること多いからな」


Mirim
「でも日本人って、“サクサク”と“ザクザク”を別物として扱うよね」


Keigo
「“サクッ”は軽い。“ザクッ”は厚みがある。日本人って、歯が入った瞬間の違いをかなり細かく見てるんだよ」


Mirim
「……あぁ。言われると、全然違う」


Keigo
「しかも、日本人って味だけじゃなく、“”まで食べてる感じある」


Mirim
「天ぷらとか?」


Keigo
「そう。“サクッ”って鳴った瞬間に、美味そうって感じるだろ」


Mirim
「せんべいも、“バリッ”って鳴らないと嫌かも」


Keigo
「ポテトチップスもそうだな。“パリッ”じゃなく、“しなしな”だったら、日本人かなり嫌がる」


Mirim
「たしかに……。“音が湿ってる”だけで、美味しくなさそうに感じる」


Keigo
「しかも日本って、“硬いポテチ”まで作り始めるからな」


Mirim
「堅あげポテト?」


Keigo
「あぁ。普通なら、“硬い=食べづらい”になりそうなのに、日本人はそこを“噛み応え”として成立させる」


Mirim
「しかも、ただ硬いだけじゃないんだよね。噛んでると、芋っぽさとか香ばしさが出てくる」


Keigo
「そう。“ガリッ”から始まって、噛むほどほどける。あれも、“時間変化”を作ってるんだよ」


Mirim
「なんかもう、日本人、“途中”を食べすぎじゃない?」


Keigo
「かなり食べてると思うぞ」


Mirim
「最中なら、“ほろっ”だし、わらび餅なら、“ぷるん”だし……」


Keigo
「普通なら、“なんか違う”で終わる。でも日本人は、“どこがどう違うか”を言葉にしたがる」


Mirim
「だから擬音語が増えるのか」


Keigo
「逆かもしれないけどな。違いを感じ取る人間が多いから言葉が増えた。そして言葉が増えたから、さらに細かく感じ取れるようになった」


Mirim
「……なんか、日本語って怖いね」


Keigo
「たぶん、“食感を観察する言語”なんだよ」


Mirim
「しかもそれ、高級料理だけじゃないんだよね。コンビニのパンでも、アイスでも、グミでもやる」


Keigo
「食パンなんて、かなり極端だぞ」


Mirim
「超熟とか?」


Keigo
「そう。“もちもち”“しっとり”“ふわふわ”“口溶け”って、全部違うだろ」


Mirim
「しかも日本人、それ普通に食べ分けてるんだよね」


Keigo
「100円とか200円のパンで、“耳の香ばしさが違う”とか言い始めるからな」


Mirim
「……なんか、日本人って、食べ物に対する解像度が異常だね」


Keigo
「たぶん、世界でもかなり特殊な方だと思うぞ」



♦️第4章
「日本人は“時間変化”を食べている」


Mirim
「でもさ、“変化を食べてる”って、なんか面白い表現だよね」


Keigo
「たぶん日本人って、“状態”より、“途中”を見てるんだよ」


Mirim
「途中?」


Keigo
「例えば、日本のハードグミって、最初と最後で全然違うだろ」


Mirim
「最初は硬いのに、途中で崩れて、最後は香りだけ残る感じある」


Keigo
「ラーメンも同じだな。最初の香り、麺を啜った時、噛んだ瞬間、飲み込んだ後。日本人って、全部見てる」


Mirim
「“今どんな味か”だけじゃないんだ」


Keigo
「そう。口の中でどう変化したか、を見てる」


Mirim
「だから、“のどごし”とか言い始めるのか」


Keigo
「かなり日本っぽい言葉だと思うぞ」


Mirim
「海外って、“のどごし”ってあんまり言わないよね」


Keigo
「言わないな。もちろん“smooth”とか、“light”みたいな表現はある。でも日本語の“のどごし”って、“喉を通る瞬間そのもの”を美味さとして扱ってる」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「蕎麦なんて特にそうだな。香り、歯切れ、のどごしを全部分けて語る」


Mirim
「たしかに。“啜った時の流れ”まで見てる感じある」


Keigo
「ビールもそうだぞ。日本のビールって、“キレ”とか、“のどごし”ばっかり言うだろ」


Mirim
「最初の一口がどう流れるか、すごい気にするよね」


Keigo
「つまり日本人って、“飲み込む瞬間”まで味覚体験に入れてるんだよ」


Mirim
「なんかもう、“”だけじゃなくなってるね」


Keigo
「たぶん、“口の中で起きる現象”そのものを食べてるんだと思う」


Mirim
「しかも日本人って、“最後”をかなり気にするよね」


Keigo
「海外だと、最初のインパクト重視が多い。でも日本人は、“食べ終わった後どう残るか”をかなり見る」


Mirim
「“キレがいい”とか?」


Keigo
「そう。後味が重く残らないとか、“すっ”と消える感じを、日本人はかなり大事にする」


Mirim
「和菓子っぽいね」


Keigo
「羊羹もそうだな。“甘い”だけじゃない。“すっ”と消える感じを見てる。最中も、“ほろっ”と崩れて、そのまま消えるだろ」


Mirim
「わらび餅とかも、“ぷるん”だけじゃなく、その後すぐ消える」


Keigo
「天ぷらもそう。“サクッ”のあと、油が残らず消えると、美味いって感じる」


Mirim
「……あぁ。だから日本人、“軽い”を褒めるんだ」


Keigo
「たぶん日本人って、“途中から最後までの流れ”を食べてるんだよ」


Mirim
「“”じゃなく、“食感の物語”を食べてる感じだね」


Keigo
「かなり近いと思う」



♦️第5章
「なぜ日本のお菓子は“甘すぎない”のか」

Mirim
「そう考えると、日本のお菓子って不思議だよね」


Keigo
「どの辺が?」


Mirim
「海外のお菓子って、もっと甘いじゃん。でも日本のお菓子って、甘さ控えめでも“物足りない”感じになりにくい」


Keigo
「あぁ。そこ、かなり日本っぽい」


Mirim
「なんでなんだろう」


Keigo
「日本人って、“甘さの量”だけで満足してないんだよ」


Mirim
「……あ」


Keigo
「例えばショートケーキでも、甘味だけじゃない。スポンジのほどけ方、クリームの軽さ、苺の酸味、香り、冷たさ。全部合わせて、“美味い”になってる」


Mirim
「たしかに……。日本のケーキって、“軽い”って褒めるよね」


Keigo
「そこなんだよ。海外だと、“濃厚”とか、“リッチ”を前面に出すこと多い。でも日本人って、“濃厚なのに軽い”を求め始める」


Mirim
「なんか矛盾してるね」


Keigo
「でも日本人、そこ好きなんだよ。甘いのにキレる、脂があるのに重くない、そこを美味いって感じる」


Mirim
「だから、“ただ甘いだけ”だと飽きるんだ」


Keigo
「そう。“しつこい”って言い始める」


Mirim
「海外のお菓子って、良くも悪くも、“強さを維持する”感じあるよね」


Keigo
「甘味も香りも、最後まで長く残る方向だな」


Mirim
「でも日本って、“抜け”を作りたがる」


Keigo
「かなり作る。香りを逃がすし、甘味を切るし、後味を軽くする」


Mirim
「しかも日本人って、色もかなり気にするよね」


Keigo
「かなり見るな。日本人って、“この色ならこういう味”って、無意識に脳内再生してる感じある」


Mirim
「抹茶色なら苦味とか、きな粉色なら香ばしさとか?」


Keigo
「そう。だから日本人って、“色と味の整合性”をかなり気にするんだよ」


Mirim
「……あぁ。だから蛍光色とか、ちょっと苦手なのか」


Keigo
「自然界にない色って、“味の予告”ができないからな。真っ青なのにメロン味とか来ると、脳が混乱する」


Mirim
「たしかに。“身体に悪そう”って感じるかも」


Keigo
「海外だと、“派手で楽しい”が先に来る文化圏もある。でも日本人って、“違和感がないこと”をかなり大事にする」


Mirim
「だから日本の大人向けお菓子って、色が落ち着いてるんだ」


Keigo
「抹茶、ほうじ茶、和栗、黒蜜、きな粉。日本人って、“自然界にありそうな色”に安心感を持つんだよ」


Mirim
「駄菓子とかは別だけどね」


Keigo
「子供向けは遊びだからな。でも大人になるほど、“刺激”より、“自然さ”を求め始める」


Mirim
「なんか日本人って、“派手さ”より、“調和”を美味いって感じる民族なんだね」


Keigo
「たぶんそうだな。だから日本人って、刺激量じゃなく、“感覚の重なり”で満足してるんだと思う」



♦️第6章
「日本人は“矛盾”を美味いと言う」


Mirim
「でもさ、日本人って、よく考えると変なこと言ってるよね」


Keigo
「例えば?」


Mirim
「“濃厚なのに軽い”とか」


Keigo
「あぁ」


Mirim
「普通、濃厚なら重いはずじゃん」


Keigo
「でも日本人、そこを両立させたがるんだよ」


Mirim
「“サクサクなのにジューシー”とかもそうだ」


Keigo
「“モチモチなのに歯切れがいい”もな」


Mirim
「……全部、矛盾してる」


Keigo
「たぶん日本人って、“単純な強さ”にあまり価値を感じないんだよ」


Mirim
「どういうこと?」


Keigo
「例えば、“ただ硬い”だけなら、そこで終わる。でも日本人は、“硬いのに噛みやすい”を作りたがる」


Mirim
「グミもそうだね」


Keigo
「ラーメンも同じだ。コッテリなのに飲める、脂が多いのに後味が軽い、そこを競争し始める」


Mirim
「だから日本のラーメンって、どんどん複雑になるんだ」


Keigo
「しょっぱいだけ、脂多いだけじゃ、日本だと飽きられるからな」


Mirim
「……あぁ。日本人って、“濃い”のは好きなのに、“雑な強さ”を嫌うんだ」


Keigo
「そこかもしれないな。ただ甘いだけ、ただ脂っこいだけ、ただ硬いだけ。そういう一直線の強さって、日本人すぐ飽きる」


Mirim
「だから、“濃厚なのに軽い”を目指し始めるんだ」


Keigo
「しかもそれ、日本料理だけじゃない気がする」


Mirim
「え?」


Keigo
「日本文化そのものが、たぶん“矛盾を馴染ませる文化”なんだよ」


Mirim
「矛盾を馴染ませる?」


Keigo
「和紙って、薄いのに丈夫だろ。日本刀も、繊細なのに折れにくい。日本庭園も、静かなのに緊張感がある」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「日本って、“強さを剥き出しにする”より、“整えて馴染ませる”方向へ行く文化なんだよ」


Mirim
「なんか、“隠された強さ”を美しいって感じるんだね」


Keigo
「近いかもな。だから日本料理も、“ドカンと来る刺激”より、“静かに残る満足感”を作り始める」


Mirim
「余韻の美学だ」


Keigo
「そう。日本人って、“最後にどう残るか”を異常に気にする」


Mirim
「“後を引く”とか?」


Keigo
「そう。でも面白いのが、“残りすぎる”は嫌うんだよ」


Mirim
「……あぁ。ベタベタ甘いとか、脂っこすぎるとか、“しつこい”って言うね」


Keigo
「でも、“すっと消えるのに、もう1口欲しくなる”は最高評価になる」


Mirim
「なんかそれ、日本人っぽいなぁ」


Keigo
「たぶん、“消え際”を美しいって感じる民族なんだよ」


Mirim
「桜とか?」


Keigo
「そう。桜も、紅葉も、線香花火も、“ずっと残る”じゃなく、“消えていく瞬間”に美しさを感じるだろ」


Mirim
「……あぁ。確かに、“儚い”って言葉も、日本独特かも」


Keigo
「料理も近いんだよ。天ぷらの“サクッ”も、炊き立てご飯の湯気も、蕎麦の香りも、“今しかない瞬間”を食べてる」


Mirim
「だから日本人って、“出来立て”に異常にこだわるんだ」


Keigo
「揚げたて、炊き立て、打ち立て。全部、“今が一番美味い”を食べてるんだよ」


Mirim
「なんか日本料理って、“保存される美味さ”じゃなく、“消えていく美味さ”なんだね」


Keigo
「たぶん、日本人って“”だけじゃなく、“消えていく時間”そのものを美味いって感じてるんだと思う」


♦️第7章
「日本は“食べる側”が強すぎる国だった」


Mirim
「でもさ、ここまで聞いてると、日本ってちょっと異常だね」


Keigo
「たぶん、“食べる側”の分析力が強すぎるんだよ」


Mirim
「分析力?」


Keigo
「例えば食パンだな」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「海外だと、食パンって“主食”なんだよ。均一で、安定してて、毎日食べられることが大事」


Mirim
「でも日本って、“全部違う”もんね」


Keigo
「超熟、ロイヤルブレッド、生食パン系、コンビニPB。全部、“しっとり感”も、“口溶け”も、“耳の香ばしさ”も違う」


Mirim
「しかも日本人、それ普通に食べ分けてるんだよね」


Keigo
「100円とか200円の食パンで、“耳が軽い”“水分感が違う”“焼いた時の香りが違う”とか言い始めるからな」


Mirim
「……なんか、国民全体の分析力が高すぎる」


Keigo
「そこなんだよ。日本って、一部の料理人だけがすごいんじゃない。“食べる側”も異常に細かい」


Mirim
「しかも、それぞれ自分の好みを持ってる」


Keigo
「そう。超熟派、生食パン派、低加水麺派、強炭酸派、微炭酸派。日本人って、“自分にとって気持ちいい感覚”を探し始めるんだよ」


Mirim
「微炭酸って、よく考えると変だよね」


Keigo
「かなり変だぞ。海外だと、“炭酸強いか弱いか”で終わること多い。でも日本は、“ちょうどいい刺激”を独立ジャンルにした」


Mirim
「しかも今、“微炭酸”ってわざわざ言わなくても普通に定着してる」


Keigo
「それだけ、日本人が違いを感じ取れるってことなんだろうな」


Mirim
「缶コーヒーも異常だよね」


Keigo
「微糖、低糖、深煎り、キレ、香り、朝専用。あれも全部、“口の中でどう感じるか”を細分化してる」


Mirim
「“朝専用”って、冷静に考えるとすごい言葉だよね」


Keigo
「“朝に気持ちいい苦味”とか、“朝に重すぎない後味”を、本気で研究してるってことだからな」


Mirim
「なんか、日本のメーカーって怖いね……」


Keigo
「たぶん、“ちょっとした違和感”を潰し続けてるんだよ。炭酸の刺激、甘味の残り方、香りの抜け、後味の軽さ。そこを延々と調整してる」


Mirim
「海外から、“日本人は働きすぎ”って言われるのも分かる気がする」


Keigo
「でも日本人側は、そんな大げさな感覚ないんだよな。“なんか気になるから直した”くらいなんだよ」


Mirim
「その積み重ねで、今の食文化になったんだ」


Keigo
「しかも日本って、“売れなきゃ終わる”競争社会でもあるからな。コンビニ、スーパー、菓子メーカー、飲料メーカー、全部、“もっと美味くできる”を何十年も繰り返した」


Mirim
「だから、日本のコンビニって海外の人が驚くんだ」


Keigo
「“なんでコンビニ飯がこんなに美味いの?”ってなる。でも日本側は、“売れるまで調整しただけ”なんだよ」


Mirim
「なんか、“魔改造”って言われる理由も分かってきた」


Keigo
「でも日本人側からすると、“魔改造してやろう”じゃないんだよ。ただ、“少し気になる”を潰してるだけなんだ」


Mirim
「……あぁ」


Keigo
「“少し重い”“少し香りが残る”“少し歯切れが悪い”。そういう細かい違和感を、日本人って感じ取れてしまう」


Mirim
「だから、終わらないんだ」


Keigo
「そう。しかも日本人って、“今しかない美味さ”を大事にするだろ」


Mirim
「儚さ?」


Keigo
「近いと思う。桜も、紅葉も、線香花火も、“ずっと残る美しさ”じゃなく、“消えていく瞬間”を見てる」


Mirim
「料理も同じなんだね」


Keigo
「揚げたて、炊き立て、打ち立て。全部、“今が一番美味い”を食べてる」


Mirim
「だから日本人って、“口の中の変化”に異常に敏感なんだ」


Keigo
「たぶん、日本人って“”だけで食べてないんだよ」


Mirim
「音、香り、温度、歯切れ、口溶け、のどごし、余韻……」


Keigo
「全部だな。口の中で起きる、小さな変化の連続そのものを、“美味しい”って呼んできたんだと思う」


Mirim
「なんか今回、最初はグミの話だったのに、最後は日本人の話になったね」


Keigo
「たぶん最初から、そういう話だったんだよ」



♦️後書き


Mirim

最初は、
ただのグミの話だった。

HARIBOはずっと硬い。
でも日本のグミは、
途中で変化する。

そこから、

うどん、
蕎麦、
ラーメン、
天ぷら、
和菓子、
缶コーヒー、
微炭酸、
食パン。

気づけば、
全部同じ話になっていた。

日本人って、
たぶん“”だけを食べていない。

最初の歯の入り。
崩れ方。
香りの抜け。
喉を通る感覚。
消えていく余韻。

その、
口の中で起きる、
小さな時間変化そのものを、
美味しい”と呼んできた。

だから日本人は、

「サクサク」
「もちもち」
「キレ」
「のどごし」
「後を引く」

みたいな、
細かすぎる言葉を増やしていったのかもしれない。

そして、
その違いを感じ取れてしまうから、
メーカーも終わらない。

微炭酸。
朝専用缶コーヒー。
食パンの耳の香ばしさ。

そんなところまで、
延々と研究し続ける。

海外から見れば、
きっと異常だ。

でも日本人からすると、
たぶん、

「なんか少し気になる」

を、
直しているだけなんだと思う。

桜も、
線香花火も、
炊き立てのご飯も。

日本人は昔から、
“ずっと残るもの”より、
“消えていく瞬間”に、
美しさを感じてきた。

だから料理も、
強く残すことより、

「すっと消えるのに、
もう一口欲しくなる」

を、
追いかけ続けたのかもしれない。

最初は、
グミの話だった。

でも最後には、
日本人そのものの話になっていた。

たぶん、
それが、
日本の食文化なんだと思う。


Fin



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