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白い反射-Salinas grandes

眩しい。
塩の白が粒になって光を跳ね返す。

下を注意深く見ながら、丁寧に、白い地面に足裏を着地させ、塩湖の中に入っていく。

足元から視線を上げ、顔を正面に向けると、小さく短い息を呑んで、深いため息が出た。

顔を左から右へゆっくりと動かしながら、一帯を見渡してみる。白い地面がどこまでも続いている。その終わりはどこなのか、ここからは見えない。

塩の白に反射した太陽の光が、刺すように肌から入り込む。
眩しくて、目を細めるだけではとても耐えきれず、サングラスをかける。

ブエノスアイレスからサルタまで飛行機で飛び、サルタから、ここ、Salinas grandesまでは車でやってきた。

途中、舗装された大きな道や砂利や岩の多いガタガタ道を通りながら、地元住民のガイド兼ドライバーの方とバルセロナからの旅行客夫妻と私の4人で四駆に乗ってやってきた。

山道の標高の高い地点や丘の頂点のような場所には、いつも祈りの祭壇があった。
峠を無事に越えることを願う人たちの姿の層が伝わってくるようだった。

山道の途中では、
エンストしてる車に数台出会った。
観光客のような雰囲気だった。
私たちのガイド兼ドライバーは、そのような人を見かけると毎回必ず声をかけていた。
その手順は、生存を確保できるか否かの確認作業のようだった。

通りかかった小さな村のようなコミュニティには、いつも必ず、教会らしきものがあった。
その村の一つに立ち寄って、教会の中に入ってみた。
宗教色の強い装飾品などは極めて少なく、とても質素な作りだった。
教会内には誰もいなく、厳かな沈黙の層の気配は感じ取れなかった。
もしかしたら、土着の信仰など、沈黙の層が宿る別の場所が、観光客には見えないどこかに存在するのかもしれない。

教会では、祭壇よりも、その隣の部屋にあった展示スペースの主張の方が強ように感じた。
この教会立ち上げに貢献した人物の功績やその方の年表が、部屋いっぱいに掲げてあった。

各村は、隣のコミュニティから離れており、乾燥した大地に立つ村のライフラインが気になった。
物流を運ぶトラックはどれくらいの頻度できているのだろうか。

家の作りも、ブエノスアイレスでは見られない石のような素材で作られていた。
この地域は風が強い。
そういった自然環境に合わせたものなのだろう。

目を閉じると、風の層が少し変わった。
ブエノスアイレスとアルゼンチン北部には、都市と地方という比較軸以上の違いが多層的に重なり合っているようだった。
それは、民族性、国境という概念、コミュニティの形成と運営、境界の歴史など、様々な層だ。

そんな情報過多な午前中を経て、ようやく辿り着いたSalinas grandesだった。

到着までは、様々な思考が、あがっては沈み、あがっては沈み、を繰り返していたが、その景色を見たら、それまで処理しきれずにいた情報が脳裏から離れ、私の目はどこまでも続く白い塩湖に釘付けだった。

目を閉じてサングラス越しに太陽の光を感じ、腕を両手いっぱいに広げて、塩湖の上にしっかりと立ってみる。
その土地に重なる時間や人の層を想像してみる。

塩湖の上には、塩水が地表に上がり自然とできあがった水たまりが複数あった。

しゃがんでその水の中に手を入れて、質感や温度を確かめてみる。
少しベタベタした重みのあるその水は、温かかった。
塩水を見つめてみると、表面に自分の姿がぼんやりと写った。
塩湖一帯が鏡のようだった。

暫くして塩湖の上を軽く走ってみることにした。
標高が高く空気が薄いので、想像していた通り、すぐに息が切れる。
倒れる前に大人しく息を整え、呼吸が落ち着いてから、ゆっくりと出口の方へと向かって歩き出した。

塩湖の周りには、観光客を狙った、塩やお土産ものを売る出店や食べ物屋さんがあった。

店先に立つ地元民らしき人々は、ボリビア人に近いような雰囲気だった。
食べ物も、ブエノスアイレス市内では、ボリビア移民と思われる人たちが道端や駅前で売っているものに似ていた。

塩湖を出て、お土産物屋が連なる一帯を抜けると駐車場があり、私たちのガイド兼ドライバーが待つ車に乗り込んだ。

座席に座ってみると、すっかり喉が渇いていたことに気がついた。
用意してくれてあったペットボトルの水を勢い飲んだ。
喉と身体の渇きを潤す水のありがたみを全身で感じた。

塩湖一帯を出て、改めて周辺の大地をじっくり見てみた。
乾燥した土と、草のようなものがところどころに生えた大地が広がっていた。

ヴィクーニャという、リャマにちょっと似た動物の集団に出会った。

舗装された大きな道路では塩を運ぶ大きなトラックが何台か往来していた。

暫くして、私たちのガイド兼ドライバーは、来た時より凸凹道の少ないルートを辿って帰ると説明してくれた。
私の目は輝き、口角が上がった。
上下に身体を揺らしながら進む未舗装の道は、この地の生活に慣れない私の身体を、じわじわと疲れさせていたのだ。

座席シートに背中をぺったりつけると、フロントガラスからの景色が自然と目に入ってくる。
車中に入る乾いた空気と先ほどの塩湖の強い光で、目の奥が少し痛い。
暫く目を瞑った。

呼吸は浅いまま。
反射だけが漂っていた。

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