energy flow / 坂本龍一
それは、夢と目覚めのあいだのような時間だった。
坂本龍一の「energy flow」が流れはじめたとき、
わたしの身体の奥が、音とそっと共鳴しはじめた。
意識の輪郭がほどけていく。
音が、まるで自分の中に入りこんで、
苦しみやざわめきをすくいあげ、
どこか遠くへ静かに流してくれるようだった。
涙が出るわけじゃないのに、
癒されていくのがわかる。
それは、言葉のいらない慰め。
そして、わたしの中にまだ流れ続けている、
小さな「生」のエネルギーの存在を、やさしく思い出させてくれる。
曇り空が広がる午後、
すべてが少しぼんやりとした中で、
「energy flow」のサビが流れはじめると、
高音のメロディが静かにわたしの中に染みこんでいった。
それは、まるで霧のようにふんわりと、
自分の身体の中をすり抜けていく。
高音が響くたび、胸の奥で小さな波が立つような感覚。
それが、少しずつ、少しずつ広がっていき、
わたしの苦しみや不安を、ゆっくりと柔らかくほどいていった。
音のひとつひとつが、
わたしの中に入って、しっかりと根をおろす。
それはただの音ではなく、
どこか遠い、あたたかな記憶が戻ってきたような、
そんな感覚だった。
音が静かにフェードアウトしていくように、
わたしの中の余韻も少しずつ収束していく。
それでも、心の中には、あの高音が残っている。
霧のようにふんわりと広がったあたたかな感覚は、
まだわたしの胸の奥にやさしく寄り添っている。
まるで、静かな夢の中にいるような、
眠りにつく前の穏やかなひとときのような感覚。
音楽が終わった後も、
あの日の曇り空と高音のメロディは、
ずっとわたしの中で流れ続けている。
それが、静かな癒しであり、
自分を包み込む優しさのように感じられる。
音楽が終わった後も、
わたしの中には、まだ流れ続ける「energy flow」がある。
