市原さんと粘菌
※アーティストトーク後の一枚(1/31)
今回の活動は、アートの展覧会だけどコンセプトが少しややこしくて「アートと人をつなぐ」役割を担うことが難しく、そのような場で自分は持ち駒を適切に選択して来場者と話せていたかなと。粘菌が気になって来場された方にアート展示とその背景にある「プレコンセプションケア」にまで思いを馳せていただけたかしら、、、など個人的にふりかえっています。
2026年2月7日(土)、8日(日)に【SCARTS×CoSTEP】Art&Science Project 《肉の上を粘菌は通った》にてイベント「おしゃべりアート」をおこないました。

メンバー6名で来場者のうち50名くらいの方とお話しました。来場のきっかけは、雪まつりに合わせて、昨年の荒木さんの牡蠣の展示が面白くて、私たちのイベント狙い(!)で、生物関係の仕事なので、粘菌に惹かれて、前日作品を見た家族に勧められて、など様々でした。 対話にお付き合いくださったみなさまありがとうございました。
イベント「おしゃべりアート」のようす
【Exhibition】エリア

会場内では、時間をかけて映像をじっくり観ている方や写真撮影される方が多く、幅広い感想をいただきました。
・粘菌から
「粘菌の広がりと宇宙の広がりが似ている」
「飛行機から見える景色のよう」
「粘菌に意思があるように見える、人が死んだ後の意思はどうなるのかな」
「粘菌にあまり関心はなかったけど映像に引き込まれた」
・合唱について
「来場者が多いと音が大きくなっている?」
「居心地は良くないが、場にはいられる」
「(粘菌の映像と音を聞きながら)今日は眠れないかもしれない」
・技術面
「粘菌の映像モニターにセンサーがあり、近づくと音が鳴るのかな?」
「AIがアートを無くしてしまうと言われるが、AIがあることでこのような表現ができている」
★アートコミュニケーターより
「粘菌やプロジェクト全体に興味がある来場者に、アート作品としてどのように感じるかなど話題を広げたところ、多くの方が感想を共有してくれた」

【Research】エリア
2階は展覧会のコンセプトが紹介されているエリアです。

・科学者の探究
越後谷さんのラッパムシの話がとても面白かったと感想いただいたほか、粘菌の話題は尽きることがなく、23区と粘菌、迷路と粘菌、最適化や最適解と粘菌、中垣先生の話、単細胞と核についてなど、、、多くの方の粘菌愛を感じました。越後谷さんの遊び心ある粘菌と肉のパラパラ写真も好評でした。
★アートコミュニケーターより
「CoSTEPが北大のサイエンス研究機関であることや、アーティストを招聘して表現していることをお伝えしたいが、お客様の関心が離れてしまうかなと思い、トークのとっかかりとして切り出しづらかった」

・ワークショップツール「プレコン!」
ご夫婦で楽しそうに手にされている様子や、カードの内容が興味深くカードをめくる手が止まらなかった、というご意見もありつつも、
「42歳以上(ライフステージというなら100歳まで)あった方がよいのでは?」「意図的なものを感じて違和感があった」などの感想も、、、個人的にキュッとなったのが、年配の女性の方の「女性のプレコンセプションケアを言える時代になったんだね」というご感想でした。市原さんの「解放されたさ」に共感し、市原作品から受けるヒリヒリ感の背景を理解したとのコメントもいただきました。
・アーティストの探究
今回の大きなポイントのひとつでした。市原さんが粘菌と出会って、なぜ合唱とAIに結び付いたのか、そのプロセスに触れます。
プロセスを理解するには配布冊子を読んでいただくことが早道であり、同じ冊子に収録された劇作家である市原さんのテキストも合わせてオススメしました。
「市原さんのテキストはエモーショナルで入ってきやすかった。」という声もありましたが、「粘菌がアートにおとしこまれるところが、分からなくって、、、」との声に、その場で一緒にテキストを読みますが、うまくお伝えできず自分の力不足を痛感しました。
★アートコミュニケーターより
「お話する中で、知りたい聞きたいなどと疑問が多く寄せられた。加えて質問の幅が広かった」けれど、「聞かれたことに答えられないことや、考えさせられることも多かった」と「わからなさをそのまま受け止めることであったり、さらに疑問点をご自分で検索する人もいた」とのことで、来場者とコミュニケーターそれぞれの探究的活動がみられました。
アーティストトークで聞いて頭に残っていることを思い出しました。「失敗してはいけないという空気感がある。」「答えを想定していたり、早く見つけたがる傾向にある。」「分からないまま見ることは大切。そのまま観察することが面白い。そうすると問いが浮かびあがってくる。」など。
今回のイベントにも直接的間接的に色々と当てはまります。

イベントを終えてアートコミュニケーターでふりかえる
【イベントについて】
「四つの展示会場のまとまりについて、作家が劇作家であることを説明すると納得されたたが、その話に辿り着けないと伝わりづらかった。 」
「2階スタジオで上映されている過去作を見て、市原さんの作品を知ってもらうことで、今回の作品を見た時の感じ方に変化や深さを感じてもらえるかな。」
「「粘菌すごい」という感想になりがちで、粘菌の厚み(生命力の象徴)を入力データとして、AIツールを駆使して、合唱しているような作品にするという取り組みとそれをプレコンセプションケアというテーマを内包している点がお伝えできたか、、、。 」
「粘菌が以前に障害があったエリアを避けて動くなどないはずの記憶を再現?する不思議さと人間が本能に反してバースストライキしたり晩婚化したりする不思議さなど、作家さんが受け取ったんだろうなぁと感じたものは、テキストを読み込んで勉強すれば感じられたが、接点の短い来館者に知っていただくのは困難だった。」

【展覧会について】
「複雑な作品を未整理で複雑なまま展示できるのはこのイベントの良いところでもあると毎回思う。」
「作家の思考の進捗、進化みたいな過程を見られる貴重な機会。市原さんは荒木さんの作品を踏まえているようにも見えた。」
「正解はないという、おしゃべりアートの基本姿勢ともぴったり。わかりにくい作品だからこそ、おしゃべりする価値が高まると思った。個人的にこのわかりにくさや、チャレンジングな感じを気に入っています。」
「展覧会のコンセプトが複雑でテーマも多く、主催がアートとサイエンスの関係機関で、さらに関わるステークホルダーも多い。構造化可能な事実部分は提示できると、アーティストの考えやアート表現の部分などにフォーカスしやすいと思う。」
「科学分野の知識や、研究者の探究心に対する姿勢などの探究活動そのものについて、面白さを伝えられるコミュニケーター的存在の方がいれば、さらに対話が面白くなりそう。」

会場には、映像でなく実物の粘菌「モジホコリ」がいました。正面に立つと、市原さんの劇作が市原さんの声帯を学習したAIによる音声で聞こえます。

「粘菌の動きを見守ることで、母性が刺激される気がした。スタッフさんはみなさん親心が生まれていた。なにかを保護し育みたい気持ちを醸成することに自然と成功していて、プレコンセプションケアの概念をすべて表していたと思った。」
※札幌アートコミニュケーターズは「コープボランティア活動サポート」のご支援を受けて活動しています。
