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理不尽くん

【東京スースースナップ】
東京のスースーするシーンを写真に収め、紹介するシリーズです。サクッと読んでね。


【撮影日】2024/9/28


池袋駅西口を出てすぐ、呼び込み君の音楽が聞こえた。

呼び込み君は普通、スーパーマーケットのような屋内にいるものだ。こんな街のど真ん中で、彼が一体何を呼び込めるというのか。

9月の高い曇り空にとけていく音楽を頼りに、彼の姿を探した。


哀愁にみちた姿であった。

地元のスーパーで爆音の音楽を流し、鮮魚コーナーに多くの人間を集めていた彼はもういない。

まず、両腕がなくなっている。

確かに、あのような薄っぺらい両腕パーツが必要かと言われれば「必要ない」気もする。

だがこのペラペラの両腕こそが、呼び込み君を「呼び込み君」たらしめる要素ではなかったか。腕がなくなれば、ただのスピーカーではないか。

いつもであれば憎たらしいとも思えるようなハツラツな笑顔も、両腕がない今は陰りを感じる。

そもそも呼び込み君を地べたに置くなんて、かわいそうである。

もともと彼は、お店の陳列棚のような人目につきやすい場所に置くために生みだされたのだ。両腕を広げて大音量で客をよびこむ様は、店先で「らっしゃい!らっしゃい!」と手を叩く店主を彷彿とさせる。古き良き、日本の商店の姿である。

そんなルーツを持った呼び込みくんを、居酒屋につながるエレベーターの前に置くとは何事だ。どう考えても酔っぱらいに蹴られてしまうではないか。

しかも、こんなに蹴りやすい位置に。「うるせぇ!」とその胴体を蹴り上げれば、とても気持ちのいい音を出して後ろの壁に当たってくれそうだ。

彼は地べたに置かれると途端に弱くなるのだ。後ろで巻かれてるコードの量をみても、本来は台の上とかに置かれるべき存在なのだ。

この世界には、いつもどこかに理不尽がある。

池袋の理不尽を背負ってくれた彼に、乾杯。



【本日の点数】
60呼び込み


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