算数が楽しくて仕方なかった日々
小学4年生から、進学塾に通いはじめた。
両親には、行ってほしい中学校があったようだ。
入塾テストは何度か受けたものの、
結果はいつもいちばん下のクラス。
家の空気が少し重くなるのを感じていた。
学校では、ほとんど100点か、せいぜい1問の間違いだったので、
両親にとっては予想外の判定だったのだと思う。
けれど私は、学校と塾では試験の種類が違うのだから、
できていなくて当たり前だろう、とどこか冷静だった。
自分と両親のあいだに、
小さな温度差があったのを覚えている。
あまり気分のよいスタートではなかったけれど、
通いはじめると意外にも楽しかった。
とくに算数が楽しくて仕方なかった。
国語は面白くなく、理科は普通。
でも、算数のおかげで、
半年もしないうちにいちばん上のクラスに上がることができた。
塾は中学受験のための場所ではあったが、
当時の私は、受験そのものより、
算数でどれだけ順位を上げられるか、
国語でいかに最下位を逃れられるか──
そんなゲームのような感覚で宿題をこなしていた。
今思えば、あれは勉強と呼べるほどのものではなかったのかもしれない。
ただ、自分では勉強しているつもりになれたこと、
それなりに成果が出ているように感じられたことが、
当時の私には十分だった。
塾の時間は楽しかった。
淡々と、でも少し誇らしく過ごしていた日々だった。
