AIエージェントが変える仕事の段取り──生成AI 15%時代に中小企業が今すぐ始めるべきこと
「AIって結局、大企業が使うものでしょ?」
先日、ある経営者の方とお話しした際に、そんな言葉をいただきました。気持ちはわかります。ところが実際にデータを見ると、少し違う景色が見えてきます。
kubell(クベル)社が2025年12月に発表した調査によれば、中小企業における生成AIの導入率は15.5%。決して高い数字ではありませんが、2年前には数パーセントに過ぎなかったことを考えると、静かに、でも着実に広がっています。東京商工リサーチの調査でも、企業全体の25%が生成AIを業務活用しているという結果が出ています(出典:東京商工リサーチ「生成AI活用実態調査」)。
では、残り75〜85%の企業は何をしているのか。そして、先に使い始めた15%の企業と、使っていない企業の間には、今後どんな差が生まれるのか。今日はそのことを、少し掘り下げて考えてみたいと思います。
なぜ「使ってみよう」の一歩が踏み出せないのか
情報通信総合研究所の調査によると、生成AIを全く利用していない企業の中で最も多かった理由が「利用用途・シーンがない(わからない)」でした。ChatGPTなどを日常的に利用している人は19.8%に過ぎず、78.2%は一切使っていないという現実があります。
これを聞いてどう思いますか?「うちも同じだ」と思う方、少なくないのではないでしょうか。
ただ、私はこの「使い方がわからない」という理由に、少し違う解釈をしています。問題は「AIの使い方を知らない」ことではなく、「自分の業務の何が課題なのかが整理されていない」ことではないかと思っているんです。
どういうことか説明します。AIは指示を与えると仕事をしてくれますが、指示を出すためには「今、自分はどんな仕事をしていて、どこに時間がかかっていて、何を改善したいのか」が整理されている必要があります。ところが多くの中小企業では、この「業務の整理」自体が後回しになっています。
毎日の仕事は回っている。でも何がどれくらい時間がかかっているか、誰が何をやっているか、実はよくわからない——そういう状態では、AIに何を頼めばいいかもわかりません。
「AIエージェント」が変える、仕事の段取り
2026年に入って、「AIエージェント(自律型AI)」という言葉を聞く機会が増えました。日経クロステックの調査では、日本企業全体の29.7%がAIエージェントを業務に活用していると回答しています。
AIエージェントとは、ChatGPTのような「質問に答えるAI」と少し違います。自分で状況を判断し、必要な情報を集め、複数のシステムをまたいで、次のアクションまで実行できる自律型のAIです。
例えばこういう使い方ができます:
経費精算の自動化:領収書の写真を撮ると、AI-OCR(AIを使って紙の書類を自動でデータ化する技術)が金額・日付・項目を読み取り、規程と照らし合わせて仕訳案を作成→担当者が確認ボタンを押すだけ
問い合わせ対応の一次自動化:よくある質問をAIが学習し、メールや問い合わせフォームへの初期返信を自動生成→担当者が内容確認して送信
日報・議事録の自動生成:会議のZoom録画をAIが文字起こし→要点をまとめた議事録と次回アクションリストを自動作成
これを聞いて「うちには関係ない」と思う方もいるかもしれません。でも少し立ち止まって考えてほしいのは、あなたの会社で毎月、同じような手作業を繰り返している業務はないでしょうか。
月末の集計、取引先へのメール対応、見積書の作成、勤怠のとりまとめ——こういった「定型作業」こそ、AIエージェントが最も得意とする仕事です。
SOMPOジャパンがAIエージェント基盤「Heylix(ヘイリックス)」を活用して、現場担当者自身が業務フローを設計・自動化する取り組みを始めています(出典:SOMPOジャパン公式発表)。大企業だからできるのでは、と思われるかもしれませんが、このプラットフォームはノーコード(プログラミングの知識なし)で使えるよう設計されています。
「まず業務を整理する」が最初のステップ
私がShakeHandsとして中小企業の経営者の方々と向き合う中で、最近よく感じることがあります。「AIを導入したい」という相談より前に、「今の業務が誰に何が集まっているか、よくわかっていない」という状況がほとんどだということです。
業務の属人化——ある人だけが知っている仕事、ある人にしかできない手順——これが解消されていないと、AIを入れても効果が出ません。AIに仕事を任せるためには、まず「その仕事の手順が言語化されていること」が前提条件になるからです。
kubell社の調査では、中小企業の生産性向上を妨げる障害として「業務の属人化・標準手順の未整備」が24.7%を占めています。さらに「人手不足・採用難」41.0%が首位ですが、実は人手不足の解決策の一つが「業務を整理してAIに任せる」ことでもあります。
順番として私が提案したいのは、こういうことです。
まず「自分や社員が日々何をしているか」を書き出す(業務の見える化)
その中で「毎回同じ作業」「誰がやっても同じ結果になる作業」をリストアップする
そこからAIを試す
この最初の「業務の見える化」が、AI活用を成功させるための本当の出発点だと思っています。
まとめ
生成AIの中小企業導入率は15.5%。裏を返せば、85%の企業はまだ本格活用をしていません。これはピンチでもあり、大きなチャンスでもあります。
AIエージェントの時代に、先行して活用を始めた企業は、定型業務から解放された時間を営業・戦略・顧客対応に充てることができます。一方、後手に回ると、採用難・人手不足の中でその差はどんどん広がっていきます。
「AIを使いこなすために、まず業務を整理する」——この一歩が、思っているよりずっと経営の手応えを変えてくれると、私は考えています。
もし「うちの業務の整理って、どこから手をつければいいんだろう」と感じている方がいれば、ぜひ一度話しかけてみてください。ShakeHandsでは、業務の見える化から、AI研修・ツール活用支援まで、中小企業の経営者の方に寄り添ったサポートをしています。
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【参考データ出典】
kubell「中小企業のデジタル化実態調査」(2025年12月): https://www.kubell.com/news/2025/12/research.html
東京商工リサーチ「生成AI活用実態調査」: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201667_1527.html
情報通信総合研究所「企業における生成AI導入の現状と展望」: https://www.icr.co.jp/publicity/5325.html
日経クロステック「日本企業における生成AIツールの導入率」: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/03314/090800004/
合同会社ShakeHands
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