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社長が現場に立ったままだと、会社は二代目で止まる──自分で動く社長47.5%の罠と、手放しの順番

建設業の経営者さんと話していると、「忙しくて、書類仕事は夜にやってる」と笑いながら言う方が本当に多いんですよね。

朝から現場で職人さんに指示を出し、昼に見積もりを書いて、夕方に協力会社へ電話、夜に請求書と労務台帳。気づいたら22時。

これ、住宅営業をしていたときの私もまさに同じでした。「自分が動かないと回らない」と思い込んで、誰よりも先に出社して、誰よりも遅く帰る。

ところが先日、調べていて思わず手が止まったデータがあるんです。中小企業の社長200名への調査では、自分自身も実務(プレイング業務)をやっている社長が約47.5%。そのうち4割の社長は仕事時間の30%以上をプレイング業務に使っている、という結果でした(出典:日経ビジネス「社長の仕事の手放し方」200人調査)。

「自分でやった方が早い」が会社を止める

「自分でやった方が早い」。中小企業の二代目社長や、職人上がりで会社を起こした社長から、私はこの言葉を何度も聞いてきました。

実際そうなんです。創業期や事業承継直後は、社長が動けば確実に売上が立つ。新人に教える時間で、社長自身が現場に出た方が早い。だから現場に出る。これは合理的な判断なんですよね。

でも、その「合理的な判断」を5年、10年と続けるとどうなるか。中小企業庁の2025年版中小企業白書では、成長の加速段階で重要なのは「経営者にないスキルを持つ補完型人材の確保」と「一人経営体制の克服」だと、はっきり書いてあります(出典:2025年版中小企業白書 第1部)。

つまり、ある時期からは「社長が現場に立つこと」が、会社の成長を止める足かせになる、ということなんですよね。

特に建設業はこの構造が深刻だと、私はちょっと思っています。建設業の技能者全体に対する一人親方の比率は15.6%、推計でおよそ51万人(出典:国土交通省 建設業の一人親方問題に関する検討会 資料)。社長自身が一人親方として現場に出ているケースが、ほかの業界と比べて圧倒的に多い。

そして建設業の経営は、現場仕事のほかに「見積もり・原価管理・労務台帳・安全書類・協力会社管理・請求書発行」と、書類業務が山のようにあるんですよね。

誰にも渡せていないまま、社長が60代を迎える

ここで怖いデータをもう一つ。

帝国データバンクの2025年調査では、全国の後継者不在率は50.1%。つまり、半分の会社で「後を継ぐ人が決まっていない」状態なんですよね(出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査2025年)。

不在率は7年連続で改善してはいるものの、まだ2社に1社。さらに、相談相手がいないまま事業承継を一人で抱えている経営者が多い、という指摘もあります。

ここで私が問いたいのは、「後継者が決まっていない」のと同じくらい深刻なのは、「自分の仕事を渡せる状態になっていない」ことではないか、ということなんです。

例えば、ある工務店の二代目社長を想像してみてください。お父さんから引き継いだ会社で、自分も現場監督として動きながら、見積もりは長年勤める事務さん任せ。経理は税理士さん、労務は社労士さん、現場は職人さんと棟梁。

一見、回っているように見えるんですよね。

ところが、事務さんが体調を崩したり、ベテラン職人さんが引退したりすると、その瞬間に「あれ、誰がやってたんだっけ?」が連鎖する。社長自身も、自分が現場と経理と協力会社管理を全部やっているうちに、外から見える「会社の仕事の全体像」がぼやけてしまっているんです。

これが、私が商談現場で何度も見てきた「会社が突然止まる日」の正体なんですよね。

手放す順番には鉄則がある

ここまで読まれた建設業の経営者の方は、たぶん「じゃあどうすればいいんだ」と思われていると思います。

私がいま提案したいのは、「手放す順番」を間違えないこと。

最近、元大手メーカーで定年退職後に経営者向けAI研修を立ち上げた方とお話しする機会がありました。その方が「AI研修は、大谷選手のホームランを何回見ても自分は打てないのと同じで、受講生のパソコンで実際に動かしてもらわないと身につかない」と仰っていて、本当にその通りだと膝を打ったんです。

つまり、「便利な道具を入れる前に、自分の作業を一回ぜんぶ書き出す」必要がある、ということなんですよね。

私が今、建設業の社長さんにオススメしている「手放しの順番」は以下の4ステップです。

①業務の書き出し:自分が1週間でやっている作業を全部書き出す。30分単位で構わない

②属人化チェック:それぞれの作業に「自分しか知らない手順」が何個ある?を数える

③外注/自動化の振り分け:書類系(請求書・労務台帳・安全書類)は外注、判断系(見積もり・現場対応)は自分に残す

④パートナーの選定:会計事務所、社労士、AIツール、事務代行など、ピースを埋める

①の「業務の書き出し」を飛ばして、いきなり③や④に行く経営者が本当に多いんですよね。AIツールを入れたのに使われない、業務管理アプリを入れたのに紙に戻る、というのは、まさに①を飛ばした結果なんです。

そして、これは新人さんに「明日からこのアプリで報告して」と渡しても回らないのと同じ理由なんですよね。「何を、誰に、いつ渡すか」が言語化されていないと、ツールは無力です。

まとめ:現場の感覚は残したまま、書類だけ渡す

社長が現場に立ち続けることは、決して悪いことではないと私は思っています。私自身、住友林業で住宅営業として現場のお客様と向き合い続けた12年半が、いまの仕事の土台になっています。

ただ、現場の感覚を持ったまま、書類業務を半分でも誰かに渡すことができたら、会社は確実に変わると思っているんですよね。

ShakeHandsでは、建設業を中心とした中小企業の社長さんに対して、「ワリフル」という名前で60分の無料ヒアリングを実施しています。社長の頭の中にある作業を一緒に書き出して、業務分解シートの初稿を1枚お渡しする、というシンプルなものです。

2026年現在、まだパイロット運用中で、伴走モニター先を募集している段階です。完成された商品ではないからこそ、現場のリアルを聞かせていただきながら、一緒に磨いていけたらと思っています。

「自分がやらないと回らない」と思い続けている社長さんに、まずは作業を書き出すきっかけになれたら嬉しいです。


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